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第六話 新しいお仲間だよ、グシャート君
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僕は今、炎天下の中にいた。ちなみに、隣に指導員としてそばにいるレナジェはウンディーネを召喚して優雅かつ涼しげだ。くそ、羨ましいな!
今何をしているのかと言うと、ずばりパーティメンバー集めだ。初級クエストとは言え、下手をすれば瀕死状態になるし、なりより僕は盾役だ。せめて攻撃役一人でいいからほしい。……回復は、レナジェがしてくれるだろうし。たぶん。
だが、テルスとスセを追放した悪評は思った以上に広まってしまったらしく、誰も僕に寄り着かない。それどころか遠巻きに白い目で見られる始末だ。世の中は厳しい。
「……あっづい……」
「呑気ねぇ? そんな悠長なぁことぉしてたらぁ、日が暮れちゃうわよぉ?」
ウンディーネの固有能力の恩恵を受け、悠々としているレナジェに言われたくない台詞を吐かれて、僕は思わず彼を睨みつける。だが、どこ吹く風と言った様子だ。
「ほぉらぁ。呼び込みでもぉなんでもぉ、頑張りなさいなぁ?」
「うっ……。わ、わかってるさ! 暑すぎて声が出しにくいんだよっ!」
大声を出せば喉が渇くし、なにより疲れがよりひどくなる。ただでさえ炎天下で体力が奪われているというのに……声なんて張り上げたらそれこそしんどいだけだ。
僕は言い訳をしながら、手にしている看板を持ち直す。書いてあるのは、「ゼロから始まる初級クエスト! 初心者大歓迎!」の文字だ。この文面は僕が書いたものなのだが、レナジェからは不評だった。そんなにダメなのかな?
「あのー誰かー。僕と組んでくれませんかー? 今なら報酬も弾めるだけ弾みますしー」
数時間繰り返している言葉を発すれば、レナジェが呆れた声を漏らすのが聞こえて来る。僕が何か言おうとした時だった。
「おい! 報酬を弾むって本気!? ウチ、お金がほしいのん!」
声がした方に視線を向ければ、そこには冒険者になれる年齢十五歳きっかりにしか見えない……というか絶対そうだろ! 新人用の認証プレートぶら下げてるし。そんなギルド登録したての、初心者装備を身に着けた槍術士の少女がいた。
「貴女はぁ? 職業は察したけれどぉ、お名前はなんてぇ言うのかしらぁ? あぁ、ワタシはレナジェよぉ。よろしくねぇ?」
レナジェが優しく声をかければ、少女は頬を赤く染めながら答える。
「あ……。う、ウチはサイルっていうのん……。昨日登録したばかりで……その! お金がないのん!」
どこかの方言なのだろうか? 独特な語尾で話す少女、サイルに対し僕は恐る恐る声をかける。なぜなら僕の悪評は予想以上に凄まじく、「愚者のグシャート」なんて言う蔑称まであったのだから、ショックも凄まじかった。だから、なるべく自分の心を守るためにも、ついつい……ね?
「あ、の。僕……がグシャートさ。よろしく……お願いします!!」
僕は五歳も年下の少女にプライドも何もかもかなぐり捨てて、地面に突き刺す勢いで頭を下げたのだった。
今何をしているのかと言うと、ずばりパーティメンバー集めだ。初級クエストとは言え、下手をすれば瀕死状態になるし、なりより僕は盾役だ。せめて攻撃役一人でいいからほしい。……回復は、レナジェがしてくれるだろうし。たぶん。
だが、テルスとスセを追放した悪評は思った以上に広まってしまったらしく、誰も僕に寄り着かない。それどころか遠巻きに白い目で見られる始末だ。世の中は厳しい。
「……あっづい……」
「呑気ねぇ? そんな悠長なぁことぉしてたらぁ、日が暮れちゃうわよぉ?」
ウンディーネの固有能力の恩恵を受け、悠々としているレナジェに言われたくない台詞を吐かれて、僕は思わず彼を睨みつける。だが、どこ吹く風と言った様子だ。
「ほぉらぁ。呼び込みでもぉなんでもぉ、頑張りなさいなぁ?」
「うっ……。わ、わかってるさ! 暑すぎて声が出しにくいんだよっ!」
大声を出せば喉が渇くし、なにより疲れがよりひどくなる。ただでさえ炎天下で体力が奪われているというのに……声なんて張り上げたらそれこそしんどいだけだ。
僕は言い訳をしながら、手にしている看板を持ち直す。書いてあるのは、「ゼロから始まる初級クエスト! 初心者大歓迎!」の文字だ。この文面は僕が書いたものなのだが、レナジェからは不評だった。そんなにダメなのかな?
「あのー誰かー。僕と組んでくれませんかー? 今なら報酬も弾めるだけ弾みますしー」
数時間繰り返している言葉を発すれば、レナジェが呆れた声を漏らすのが聞こえて来る。僕が何か言おうとした時だった。
「おい! 報酬を弾むって本気!? ウチ、お金がほしいのん!」
声がした方に視線を向ければ、そこには冒険者になれる年齢十五歳きっかりにしか見えない……というか絶対そうだろ! 新人用の認証プレートぶら下げてるし。そんなギルド登録したての、初心者装備を身に着けた槍術士の少女がいた。
「貴女はぁ? 職業は察したけれどぉ、お名前はなんてぇ言うのかしらぁ? あぁ、ワタシはレナジェよぉ。よろしくねぇ?」
レナジェが優しく声をかければ、少女は頬を赤く染めながら答える。
「あ……。う、ウチはサイルっていうのん……。昨日登録したばかりで……その! お金がないのん!」
どこかの方言なのだろうか? 独特な語尾で話す少女、サイルに対し僕は恐る恐る声をかける。なぜなら僕の悪評は予想以上に凄まじく、「愚者のグシャート」なんて言う蔑称まであったのだから、ショックも凄まじかった。だから、なるべく自分の心を守るためにも、ついつい……ね?
「あ、の。僕……がグシャートさ。よろしく……お願いします!!」
僕は五歳も年下の少女にプライドも何もかもかなぐり捨てて、地面に突き刺す勢いで頭を下げたのだった。
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