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【一章】『運命の番』編
15 Ω男子専門児童養護施設②(回想)
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『施設』という名称と思い込みから、四角くて冷たい感じのする建物を想像していた俺。
けれど、敷地内に一歩踏み出した瞬間、その思い込みと想像は、良い意味で裏切られたのであるー。
土曜日。施設の見学当日。
なんと、職を紹介してくれた職員さんが施設まで送ってくれるらしい。俺もいい歳した大人だから場所さえ判れば一人で行けるが、場所が場所だけに、案内だけでも付いてきてもらえると、やっぱり心強い。
シェルターから車で十五分あまり。
「もうすぐ着きますよ」、と方向を示されて視線をやって見つめた先に見えるのはブロック塀…ではなく、温かみのある木の塀。そして、その向こうに見える三角屋根。高さからして二階建てだろう。施設だからか、ぐるりと塀で囲まれた上に、建物自体もそれなりの大きさのようだが、外観だけ見ても、温かみのある木製の塀と三角屋根だからか、冷たさは一切無い。
俺がそんな感想を抱いている内に、車は門の脇の来客専用駐車場に止められていた。
促されて車を降り、職員さんの後を付いていく。
敷地の四方をぐるりと囲む木製の塀に出入り口は一箇所のみだと、事前情報として教えてもらった。
大人も子供も『Ω』しかいない施設。外部からの出入りを徹底的に管理する為だという。特に『α』は誰であろうと立入禁止。時として発情期のΩがいるも知れない場所にαの存在は危険だし、幼いΩ性の子供にとっては大人のαは恐怖の対象でしかない。
敷地内に入るには認証IDカードが必要で、施設に住んでいる職員と子供達は常に身に着けているというし、部外者が敷地内に入るには各自治体の役場で手続きをした上で都度、発行してもらう事になる。俺の分は、同行してくれた職員さんが手続きしてくれた。
ちなみに、いかなる理由を並べたとしてもα性の人には発行されない。α禁制なのだから当然だが。
********************
約束の朝八時に施設を訪ねた俺達を出迎えてくれた施設長だというΩ男性は、朝早くに呼び出した旨を俺達に詫びてから、敷地内の片隅にポツンと建つ東屋に誘導した。この時間は子供達の朝食の時間であり、子供達を紹介する前に先に話がしたかったらしい。
俺を送ってくれた役所の職員さんは、俺を施設長に引き合わせた時点で、仕事だから…と一旦帰った。迎えにも来るよの言葉を残して(ホント、いい人だな)
通された東屋ではまず、施設の簡単な説明をされた。
現在、共に暮らしているのは職員三名と、下は六歳から上は十六歳までの子供八名。全員Ω。子供の年齢と数に対しての職員の数は決して人手不足ではないが、Ω性の特性上、足りているとも言えないという。原因は『発情期』。職員さんは四十代一人と三十代二人で、定期的に発情期が来る。そして、最低でも三日…長くて七日はまともに働けない状態になるからだ。その間は二人で子供達の世話をしなければならない。その他にも諸々の理由から、人手はあったほうが有り難いという話だった。
一通りの説明を聞いた後は、子供達の朝食が終わった頃に子供達との顔合わせ。
それから………。
職場『見学』に来た筈が、職場『体験』になったー。
一言で表せば、そこはまさしく『家庭』だった。
居住スペースである建物の外観や内部が普通の家と変わらなかったからではない。いや、勿論それもあるが、職員さんと子供達の関係がまさに『家族』だった。
まず驚いたのは、子供達の『生活全般』は職員に一任されているという事。国や自治体は金銭の援助や法的な手続き、必要に応じて医者やカウンセラーなどの派遣はするが、毎日の生活に関してはお任せ…という事らしい。
生活の要である食事。予算は決められているが、職員がメニューを考えて食材を購入し、そして作る。掃除も洗濯も基本は職員が分担でするが、それを子供達が当たり前の様に手伝うのだ。『親の手伝いをする子』の様に。職員が頼む事もあれば、子供が率先して手伝う事もあり、また、年上の子が年下の子の世話をしたり一緒に遊んだりする。勿論、喧嘩もする。本当の兄弟の様に。
そして気が付けば、俺もそんな『家族の輪』に加わっていた。
最初は予定通り見学してたんだけどさ。
初めは俺の事を警戒して見ていた子供達。当然だよな。幾ら同じΩだって言っても初対面なんだから。けど、警戒しながらも上の子達が話し掛けてくれて、俺はそれに応えてて、それを見ていた下の子達も寄ってきて…。気付いたら俺は、子供達と一緒に職員さん達の仕事を手伝っていた。洗濯に、掃除…。
まあ、ばあちゃんが亡くなってからは一人暮らしだったから、料理に掃除に洗濯と、一通りの家事は出来るけれど。
手伝いが終わったら子供達にせがまれて一緒にあそんで、何故か俺の分まで用意されていた昼食を皆で食べた後はお勉強タイム。リビングに宿題を持ってきて一緒にやるんだって。で、俺はシェルターでしていたみたいに教えてあげたりしたんだけれど…。
『何かがおかしい』事に気付いたのは、昼食同様、何故か俺の分まで用意されていた夕食を食べてお風呂をすすめられ、部屋まで用意されて泊まる事になってからだったー。
けれど、敷地内に一歩踏み出した瞬間、その思い込みと想像は、良い意味で裏切られたのであるー。
土曜日。施設の見学当日。
なんと、職を紹介してくれた職員さんが施設まで送ってくれるらしい。俺もいい歳した大人だから場所さえ判れば一人で行けるが、場所が場所だけに、案内だけでも付いてきてもらえると、やっぱり心強い。
シェルターから車で十五分あまり。
「もうすぐ着きますよ」、と方向を示されて視線をやって見つめた先に見えるのはブロック塀…ではなく、温かみのある木の塀。そして、その向こうに見える三角屋根。高さからして二階建てだろう。施設だからか、ぐるりと塀で囲まれた上に、建物自体もそれなりの大きさのようだが、外観だけ見ても、温かみのある木製の塀と三角屋根だからか、冷たさは一切無い。
俺がそんな感想を抱いている内に、車は門の脇の来客専用駐車場に止められていた。
促されて車を降り、職員さんの後を付いていく。
敷地の四方をぐるりと囲む木製の塀に出入り口は一箇所のみだと、事前情報として教えてもらった。
大人も子供も『Ω』しかいない施設。外部からの出入りを徹底的に管理する為だという。特に『α』は誰であろうと立入禁止。時として発情期のΩがいるも知れない場所にαの存在は危険だし、幼いΩ性の子供にとっては大人のαは恐怖の対象でしかない。
敷地内に入るには認証IDカードが必要で、施設に住んでいる職員と子供達は常に身に着けているというし、部外者が敷地内に入るには各自治体の役場で手続きをした上で都度、発行してもらう事になる。俺の分は、同行してくれた職員さんが手続きしてくれた。
ちなみに、いかなる理由を並べたとしてもα性の人には発行されない。α禁制なのだから当然だが。
********************
約束の朝八時に施設を訪ねた俺達を出迎えてくれた施設長だというΩ男性は、朝早くに呼び出した旨を俺達に詫びてから、敷地内の片隅にポツンと建つ東屋に誘導した。この時間は子供達の朝食の時間であり、子供達を紹介する前に先に話がしたかったらしい。
俺を送ってくれた役所の職員さんは、俺を施設長に引き合わせた時点で、仕事だから…と一旦帰った。迎えにも来るよの言葉を残して(ホント、いい人だな)
通された東屋ではまず、施設の簡単な説明をされた。
現在、共に暮らしているのは職員三名と、下は六歳から上は十六歳までの子供八名。全員Ω。子供の年齢と数に対しての職員の数は決して人手不足ではないが、Ω性の特性上、足りているとも言えないという。原因は『発情期』。職員さんは四十代一人と三十代二人で、定期的に発情期が来る。そして、最低でも三日…長くて七日はまともに働けない状態になるからだ。その間は二人で子供達の世話をしなければならない。その他にも諸々の理由から、人手はあったほうが有り難いという話だった。
一通りの説明を聞いた後は、子供達の朝食が終わった頃に子供達との顔合わせ。
それから………。
職場『見学』に来た筈が、職場『体験』になったー。
一言で表せば、そこはまさしく『家庭』だった。
居住スペースである建物の外観や内部が普通の家と変わらなかったからではない。いや、勿論それもあるが、職員さんと子供達の関係がまさに『家族』だった。
まず驚いたのは、子供達の『生活全般』は職員に一任されているという事。国や自治体は金銭の援助や法的な手続き、必要に応じて医者やカウンセラーなどの派遣はするが、毎日の生活に関してはお任せ…という事らしい。
生活の要である食事。予算は決められているが、職員がメニューを考えて食材を購入し、そして作る。掃除も洗濯も基本は職員が分担でするが、それを子供達が当たり前の様に手伝うのだ。『親の手伝いをする子』の様に。職員が頼む事もあれば、子供が率先して手伝う事もあり、また、年上の子が年下の子の世話をしたり一緒に遊んだりする。勿論、喧嘩もする。本当の兄弟の様に。
そして気が付けば、俺もそんな『家族の輪』に加わっていた。
最初は予定通り見学してたんだけどさ。
初めは俺の事を警戒して見ていた子供達。当然だよな。幾ら同じΩだって言っても初対面なんだから。けど、警戒しながらも上の子達が話し掛けてくれて、俺はそれに応えてて、それを見ていた下の子達も寄ってきて…。気付いたら俺は、子供達と一緒に職員さん達の仕事を手伝っていた。洗濯に、掃除…。
まあ、ばあちゃんが亡くなってからは一人暮らしだったから、料理に掃除に洗濯と、一通りの家事は出来るけれど。
手伝いが終わったら子供達にせがまれて一緒にあそんで、何故か俺の分まで用意されていた昼食を皆で食べた後はお勉強タイム。リビングに宿題を持ってきて一緒にやるんだって。で、俺はシェルターでしていたみたいに教えてあげたりしたんだけれど…。
『何かがおかしい』事に気付いたのは、昼食同様、何故か俺の分まで用意されていた夕食を食べてお風呂をすすめられ、部屋まで用意されて泊まる事になってからだったー。
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