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執着
五
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毎回戸川に呼び出される度に思う。
そしていつの間にか見入ってしまう。
美しい顔立ち、無駄なところがないような細い身体、だがしかし広くて大きな背中。
戸川のくせにむかつく。
きっと彼女でもいるんだろうな。
「じゃあここは出席番号1番の人読んで」
1時間目は古典で、授業を担当しているのはあいつだ。
当てられた人が教科書を読みはじめる。
最近俺が当てられることも少なくなった。それは良かったと思う。
しかし……
「あ、」
まただ。目が合った。
ここのところやたらと戸川と目が合うようになったのだ。
慌てて目を逸らすが、あたふた混乱してるのは俺だけで、戸川はいつもと同じ余裕そうな表情だ。
なんで俺だけこんな思いしてんだ?
明らかに戸川を見る目が変わってきている。
きっかけはあれか?
掴みかかって近づいた時か?それとも頻繁に呼び出されるようになったから自然と意識してしまっているのか?
どちらにせよ、戸川を意識しているのは確実だ。
とにかく考えすぎないようにしないと、もっと沼に入って抜け出せなくなるぞ。
いや、沼ってなんだ?!
「余湖」
授業が終わってあいつが俺のところまできた。
周りの目はもう慣れた。
「なんだよ、ちゃんと受けてただろーが」
「ちげーよ、今日の放課後忘れるなよって言いに来ただけだ」
今日の放課後?
「えっ?」
どこか勘違いしている俺に戸川は、
「古典の補講な?」
と笑って返す。
いや、それなら補講って言えよ!
ん?勝手に勘違いしてたのは俺で……
「なーに考えてんだよお前」
いじわるそうに笑われる。
「今のは言い方が悪い」
会話を聞いていたクラスメイトがジロジロと見てくる。
ちがうちがう、俺のせいじゃない。
勝手に勘違いしていたのが死ぬほど恥ずかしかった。
その中で京介は複雑な表情で景加を見ていた。
放課後。
帰りの会も終わり、教室には俺だけ。
めんどくさい体育を終えた俺は自席で力尽きていた。
机に伏せて、体力を回復させていた。
どうせ居残りだし、戸川は準備のために職員室に戻ってしまったのでどっちみち、教室で待っているしかない。
ちゃんと授業を受けるようになってから、やっとみんなの苦労っていうかちゃんとサボらず毎日学校に行っている人達の苦労が分かった。
京介だけに限らないけど、あいつとかは毎日学校に行っている上に勉強も頑張ってるもんな......すごいよな。
まぁ学校に行くことは当たり前だけど、当たり前ができるってすごいことだよな。
考えことをしていると、肩を叩かれた。
戸川だと思い、勢いよく顔を上げるとそこに立っていたのはクラスメイトだった。
「残ってるってことは景加も古典の補講?」
隼斗。たまに話す友達だ。
はるかや京介たちほど深く関わり合いはないが、休み時間など近くにいれば話す仲である。
「体育で疲れて死んでたぁ、古典の補講はあるけど」
「なるほど。でもここ最近ちゃんと来てて偉いな」
学校に来るだけで偉いと言われる。
褒められて嬉しいが、今まで当たり前ができていなかった事実を突きつけられる。
「そんなことねーよ。ってかお前も補講かよ、赤点だったんだ?」
「今まで来てなかった人が毎日来れるようになるのって大変だと思うけどなぁ。ん?そうだよ」
そこまで言われると頑張ってると思える。
照れ臭くなって下を向いた。
そしていつの間にか見入ってしまう。
美しい顔立ち、無駄なところがないような細い身体、だがしかし広くて大きな背中。
戸川のくせにむかつく。
きっと彼女でもいるんだろうな。
「じゃあここは出席番号1番の人読んで」
1時間目は古典で、授業を担当しているのはあいつだ。
当てられた人が教科書を読みはじめる。
最近俺が当てられることも少なくなった。それは良かったと思う。
しかし……
「あ、」
まただ。目が合った。
ここのところやたらと戸川と目が合うようになったのだ。
慌てて目を逸らすが、あたふた混乱してるのは俺だけで、戸川はいつもと同じ余裕そうな表情だ。
なんで俺だけこんな思いしてんだ?
明らかに戸川を見る目が変わってきている。
きっかけはあれか?
掴みかかって近づいた時か?それとも頻繁に呼び出されるようになったから自然と意識してしまっているのか?
どちらにせよ、戸川を意識しているのは確実だ。
とにかく考えすぎないようにしないと、もっと沼に入って抜け出せなくなるぞ。
いや、沼ってなんだ?!
「余湖」
授業が終わってあいつが俺のところまできた。
周りの目はもう慣れた。
「なんだよ、ちゃんと受けてただろーが」
「ちげーよ、今日の放課後忘れるなよって言いに来ただけだ」
今日の放課後?
「えっ?」
どこか勘違いしている俺に戸川は、
「古典の補講な?」
と笑って返す。
いや、それなら補講って言えよ!
ん?勝手に勘違いしてたのは俺で……
「なーに考えてんだよお前」
いじわるそうに笑われる。
「今のは言い方が悪い」
会話を聞いていたクラスメイトがジロジロと見てくる。
ちがうちがう、俺のせいじゃない。
勝手に勘違いしていたのが死ぬほど恥ずかしかった。
その中で京介は複雑な表情で景加を見ていた。
放課後。
帰りの会も終わり、教室には俺だけ。
めんどくさい体育を終えた俺は自席で力尽きていた。
机に伏せて、体力を回復させていた。
どうせ居残りだし、戸川は準備のために職員室に戻ってしまったのでどっちみち、教室で待っているしかない。
ちゃんと授業を受けるようになってから、やっとみんなの苦労っていうかちゃんとサボらず毎日学校に行っている人達の苦労が分かった。
京介だけに限らないけど、あいつとかは毎日学校に行っている上に勉強も頑張ってるもんな......すごいよな。
まぁ学校に行くことは当たり前だけど、当たり前ができるってすごいことだよな。
考えことをしていると、肩を叩かれた。
戸川だと思い、勢いよく顔を上げるとそこに立っていたのはクラスメイトだった。
「残ってるってことは景加も古典の補講?」
隼斗。たまに話す友達だ。
はるかや京介たちほど深く関わり合いはないが、休み時間など近くにいれば話す仲である。
「体育で疲れて死んでたぁ、古典の補講はあるけど」
「なるほど。でもここ最近ちゃんと来てて偉いな」
学校に来るだけで偉いと言われる。
褒められて嬉しいが、今まで当たり前ができていなかった事実を突きつけられる。
「そんなことねーよ。ってかお前も補講かよ、赤点だったんだ?」
「今まで来てなかった人が毎日来れるようになるのって大変だと思うけどなぁ。ん?そうだよ」
そこまで言われると頑張ってると思える。
照れ臭くなって下を向いた。
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