上 下
99 / 113
第八章 涙のプロポーズ

幸福の口づけ *

しおりを挟む

(激しすぎて、声が……!)

「……っぁ、……っ! ……っ!」

 喉が枯れてしまったみたいだ。ぱんぱんと肌同士がぶつかっている。ぞくぞくと快感が絶え間なく続き、おかしくなりそうだった。

(もうだめ、またイってしまうわ……!

「あっあっふ、あっ……ひ、ぁ、ああっ……イ、イきそう……です……っ、はぅ、あ、ひぃっ、ふあぁっ」
「シャーロット……、俺もイきそうだよ……」
「イって、イって下さい……あっ、ああっ」
「くそっ……。もっと君を可愛がりたいのに……限界だ」

 オリヴァーの腰の突き上げが一段と強烈になった。蜜壺を容赦なくえぐってくる。

「オリヴァー様……! ああーっ! あっ、あっあああぁぁぁ――っ……!」

 シャーロットが背をしならせて絶叫した。

「……愛してる、シャーロット……!」

 オリヴァーが奥歯を噛んだ。彼女が絶頂を迎えたのと同時に、熱い精を肉壺に放つ。子宮に炎の奔流を受け止め、シャーロットはビクンビクンと痙攣した。

「……はぁっ、はぁ……オリヴァー……さ、ま……」
「シャーロット……」

 二人は互いの唇を吸い合った。舌を絡ませ、お互いの呼吸すら飲み込んでしまう。
 長い口づけを終えて、二人は見詰め合った。未来を誓い合った夫婦は、愛する相手の美しい瞳の色を覗き込む。

「俺の愛するシャーロット……」
「オリヴァー様……」

 シャーロットとオリヴァーは黙って笑い合った。彼の瞳が糸になる。エメラルドの双眸がきらっと輝いた。

(愛されるって、こんなにくすぐったいものなんだわ……)

 シャーロットは胸がいっぱいだった。オリヴァーの肩に額をつけると、染みついた煙草の香りがする。彼女が最も好きな匂いだった。
 愛しい男の肌には、大小様々な古傷がある。その中で一番深いのが魔王と戦った時に出来たものだ。自分を守ってくれた彼に、感謝しかない。

(私が生きていられるのはオリヴァー様のお陰よ)

 また最愛の猟犬騎士が生き残り、こうして再び抱き合うことが出来た。その幸運に天にお礼を言いたい気分だった。

(神様、ありがとう。オリヴァー様を助けて下さって。彼がいないと、私は生きている意味が無いのよ)

 たくさんの奇跡が重なり、こうして自分は幸福を手にした。シャーロットの心は湯のような暖かい感情で満ちている。

(お父様、お母様……。シャーロットは幸せです)

 ――世界で一番の幸せ者ですわ。

 シャーロットは静かに目を閉じた。つぅー……っと涙が一筋流れる。

(愛する人と共に生きていける。これ以上の喜びはありはしないのよ……)

 二人はしばらく抱き合っていた。彼がそっとシャーロットの頭を撫でていた。
 しかし、優しい静寂を破ったのは、オリヴァーの情けない声だった。

「痛てっ……イテテテテテテ」
「オリヴァー様?!」
「どうやら無理をしすぎたようだ……」

 オリヴァーは苦笑しながらクッションに沈んだ。

「ごめんなさい。私もハメを外してしまいましたわ」

「シャーロットのせいじゃない。俺が誘ったんだ。ということで、今回のことは医者に秘密にしないかい?」

 オリヴァーがにやっと唇の端を引き上げた。

「……ふふふっ。分かりましたわ。今回だけですわよ」

 シャーロットがにっこりと笑った。

「さすが、心が広いな、俺の天使は。愛してる」
「ん……私もですわ。オリヴァー様」

 二人は幸福の口づけを交わす。
 角度を替え、愛を囁きながら、何度も、何度も。

(好きです、愛しています。オリヴァー様……)

 繋がりを解き、ローブを羽織っただけの姿になっても、二人の接吻は終わらなかった。
 結局、甘いキスは往診に来た医師と看護婦に見つかるまで続いた。オリヴァーはこっぴどく怒られた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました

春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。

森でオッサンに拾って貰いました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。 ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

可愛げのない令嬢は甘やかされ翻弄される

よしゆき
恋愛
両親に可愛がられず、甘え方を知らず、愛嬌のない令嬢に育ったアルマ。彼女には可愛らしく愛嬌のある自分とは正反対の腹違いの妹がいた。  父に決められた婚約者と出会い、彼に惹かれていくものの、可愛げのない自分は彼に相応しくないとアルマは思う。婚約者も、アルマよりも妹のリーゼロッテと結婚したいと望むのではないかと考え、身を引こうとするけれど、そうはならなかった話。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。 そんな彼に見事に捕まる主人公。 そんなお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

処理中です...