75 / 113
第五章 フィアンセ交代?!
ダナのいじめ
しおりを挟む(ダナさんがあんな人だなんて、オリヴァー様は知っているのかしら……。もし知ったら相当ショックを受けるでしょう……。あれ程可愛がっておいでだもの)
長い睫毛を濡らし、美しい顔を歪めてシャーロットは思う。
(ああ、どうしたらいいのでしょう……。このままでは本当にオリヴァー様を獲られてしまいますわ)
決して渡さないと言ったが、シャーロットには対抗する術がなかった。両親はすでに亡くなっているし、兄には迷惑をかけたくない。これからどうしたらいいのか検討もつかない。そもそもシャーロットは諍{いさか}いが苦手である。
「フィアンセ交代なんて絶対に嫌よ……。だけど、どうしたらいいの……?」
彼女のつぶやきは外の叩くような雨粒にかき消された。 荒々しい風のせいで窓がガタガタと鳴る。ピカッと稲妻が走り、ドォォン! と天が破れそうな音が屋敷中に響き渡った。
嵐はまだ過ぎ去りそうにない。
☆~☆~☆~☆~☆
ダナのいじめは陰湿だった。シャーロットを婚約者の座から退かせる為に、彼女はなんでもやった。
例えば茶会の席でわざとシャーロットのティーカップを倒して熱い紅茶をかけたり、彼女のドレスをハサミでズタズタに引き裂いたり、靴やバッグなどを隠したりした。
このような事件が続き、傷ついたシャーロットは部屋に閉じこもる日が増えた。ところがその隙を狙って、ダナが社交界に勝手に出掛けるようになってしまった。オリヴァーの生涯のパートナーのような態度でいるらしい。
――お兄様、シャーロットちゃんは最近具合が悪いのですってぇ。だから今日のパーティはダナが参りますわ。
――え? 大丈夫なのか?
――ええ、心配いりません~。
――しかし医者に診せた方が……。シャーロットに直接聞いてくる。
――お待ちになって、お兄様。少し鈍感ですわよぉ。うふふ……シャーロットちゃんは月のもののせいで体調が優れないのですわ。寝ていれば治りますぅ。
――! そうか、それは失礼した。さすがだ、ダナ。年上の女性の気遣いはありがたい。
――シャーロットちゃんにも同じようなことを言われましたわぁ。ダナのことを本当の姉のように思っているのですって~。ダナも彼女を妹同然として可愛がっているのですのよ。これからも色々教えて差し上げるつもりですぅ。
――頼んだぞ、ダナ。
とオリヴァーとダナが話していた、とレディーズメイドから聞いたとき、シャーロットはショックのあまり卒倒しそうになった。
シャーロットが彼女のことを姉のように思っている、などと口にしたことは一度も無い。オリヴァーは完全にダナに騙されているのである。
「お帰りなさいまし、若奥様」
「ただいま……」
王立騎士団の試合会場から帰ったシャーロットは、ずぶ濡れになったまま、寝室に戻った。もうすでに夜である。
2
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
森でオッサンに拾って貰いました。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。
ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
大神官様に溺愛されて、幸せいっぱいです!~××がきっかけですが~
如月あこ
恋愛
アリアドネが朝起きると、床に男性のアレが落ちていた。
しかしすぐに、アレではなく、アレによく似た魔獣が部屋に迷い込んだのだろうと結論づける。
瀕死の魔獣を救おうとするが、それは魔獣ではく妖精のいたずらで分離された男性のアレだった。
「これほどまでに、純粋に私の局部を愛してくださる女性が現れるとは。……私の地位や見目ではなく、純粋に局部を……」
「あの、言葉だけ聞くと私とんでもない変態みたいなんですが……」
ちょっと癖のある大神官(28)×平民女(20)の、溺愛物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる