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第五章 フィアンセ交代?!

ダナのいじめ

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(ダナさんがあんな人だなんて、オリヴァー様は知っているのかしら……。もし知ったら相当ショックを受けるでしょう……。あれ程可愛がっておいでだもの)

 長い睫毛を濡らし、美しい顔を歪めてシャーロットは思う。

(ああ、どうしたらいいのでしょう……。このままでは本当にオリヴァー様を獲られてしまいますわ)

 決して渡さないと言ったが、シャーロットには対抗する術がなかった。両親はすでに亡くなっているし、兄には迷惑をかけたくない。これからどうしたらいいのか検討もつかない。そもそもシャーロットは諍{いさか}いが苦手である。

「フィアンセ交代なんて絶対に嫌よ……。だけど、どうしたらいいの……?」

 彼女のつぶやきは外の叩くような雨粒にかき消された。 荒々しい風のせいで窓がガタガタと鳴る。ピカッと稲妻が走り、ドォォン! と天が破れそうな音が屋敷中に響き渡った。
 嵐はまだ過ぎ去りそうにない。



☆~☆~☆~☆~☆




 ダナのいじめは陰湿だった。シャーロットを婚約者の座から退かせる為に、彼女はなんでもやった。
 例えば茶会の席でわざとシャーロットのティーカップを倒して熱い紅茶をかけたり、彼女のドレスをハサミでズタズタに引き裂いたり、靴やバッグなどを隠したりした。
 このような事件が続き、傷ついたシャーロットは部屋に閉じこもる日が増えた。ところがその隙を狙って、ダナが社交界に勝手に出掛けるようになってしまった。オリヴァーの生涯のパートナーのような態度でいるらしい。

 ――お兄様、シャーロットちゃんは最近具合が悪いのですってぇ。だから今日のパーティはダナが参りますわ。
 ――え? 大丈夫なのか?
 ――ええ、心配いりません~。
 ――しかし医者に診せた方が……。シャーロットに直接聞いてくる。
 ――お待ちになって、お兄様。少し鈍感ですわよぉ。うふふ……シャーロットちゃんは月のもののせいで体調が優れないのですわ。寝ていれば治りますぅ。
 ――! そうか、それは失礼した。さすがだ、ダナ。年上の女性の気遣いはありがたい。
 ――シャーロットちゃんにも同じようなことを言われましたわぁ。ダナのことを本当の姉のように思っているのですって~。ダナも彼女を妹同然として可愛がっているのですのよ。これからも色々教えて差し上げるつもりですぅ。
 ――頼んだぞ、ダナ。

 とオリヴァーとダナが話していた、とレディーズメイドから聞いたとき、シャーロットはショックのあまり卒倒しそうになった。
 シャーロットが彼女のことを姉のように思っている、などと口にしたことは一度も無い。オリヴァーは完全にダナに騙されているのである。

「お帰りなさいまし、若奥様」
「ただいま……」

 王立騎士団の試合会場から帰ったシャーロットは、ずぶ濡れになったまま、寝室に戻った。もうすでに夜である。
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