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第四章 オリヴァー(オリヴァー視点)

親友カートランド(オリヴァー視点)

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 昨日も帰りは遅かったのに、寝ている彼女を起こして抱いてしまった。いや、正確に言えば眠っているシャーロットをそっと抱きしめているうちに、その柔らかい肉体や、甘い匂いに段々ムラムラしてきて、ついに我慢できなくなり、襲ってしまったのだ。
 夢と現実の狭間であえぐシャーロットは筆舌に尽くしがたい程可愛らしかった。また目覚めたら犯されているという状況に、驚きながらも感じてしまう彼女に興奮し、オリヴァーの方が燃えてしまった。
 と言うわけで、結局いつものように朝まで愛し合ったのである。お陰で寝不足になり、先程の会議で一瞬意識が飛んだ。
 
(いけない、いけない。仕事に集中しなければ。今朝もシャーロットにやんわり怒られてしまったし……。悪いことをしたな。ああいうのはもう止めよう)

 ――しかし、怒っている彼女もツボだった……。綺麗な瞳がちょっと吊り上がって、桜色の唇が尖っていた。ああ、なんて可愛いんだろう。何をしても許せてしまう。

 そんなことを考えていると、執務室の扉がガチャリと開いた。
 入ってきたのは二番隊隊長、ベン・リンゼイ・カートランドである。オリヴァーより四つ年下の二十八歳で、褐色の肌に銀の髪を持つ、爽やかな男だ。腕っ節が強く、頭も切れ、性格も良い。一番隊隊長のオリヴァーと共に、今後の王立騎士団を背負って立つ人物である。

「おや、まだ残っていたんですか。ブランドンさん」

 カートランドが言った。女性に人気の赤い瞳が細くなる。

「帰ったんじゃなかったのかね。カートランド君」
「団長宛の書類を出しに来ただけですよ。ブランドンさんこそ、婚約者が待っているんだから、早く帰った方がいいんじゃないですか? あんまり放っておくと浮気されますよ」
「大丈夫。シャーロットはそんな人間じゃない。あんなに素敵な女性はまたといないよ。外見だけじゃない、中身も素晴らしいんだ」
「はいはい。惚気は聞き飽きましたよ」

 二人は仲よく憎まれ口を交わした。カートランドはオリヴァーの良き剣のライバルでもあり、気の置けない友人でもある。

「ところで、ブランドンさん。さっきの会議の話、どう思いますか?」

 カートランドが真剣な顔になった。魔王ギリェルモが仲間を率いて首都を目指し南下しているという報告だった。最近なりを潜めているのは、騎士団に動向を悟られないようにする作戦だという。

「本当のところはまだ分からないが、信憑性はかなり高いだろう。我が国の情報部は優秀だからな」
「……やはり貴方もそう思いますか。そうなると、王都は火の海になるかもしれませんね」
「……」

 オリヴァーはきつく唇を噛んだ。

(もし魔物に襲われたら、壊滅的な被害がでるだろう……。王都にはたくさんの人が住んでいる。大勢の民が犠牲になるかもしれない)

 敵は、上級・下級悪魔や、トロールや、豚頭の怪物や、ゴブリンや、鬼人などである。奴らは乱暴や破壊を好み、何百年もこの国の人々を脅かしてきた。そのたびに王立騎士団が鎮圧に当たってきたのである。
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