スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です！【R18／完全版】

第四章 オリヴァー（オリヴァー視点）

第四章 オリヴァー視点

★オリヴァー視点
　会議を終えたオリヴァー・スチュワート・ブランドンは、執務室にある自分の席についた。とうに日が暮れ、外は真っ暗である。
　部屋はがらんとして、残っているのは彼しかいない。
　最近魔王ギリェルモの動きが落ち着いているので、王宮の警備の者以外は、皆帰宅してしまったのだ。
　執務室は、黒檀の机が向かい合わせに並び、古今東西の本が壁を埋め尽くす、落ち着いた雰囲気だった。ここは上級騎士が事務仕事をする場所である。
　彼は書類の溜まった自身の机を見て長い息を吐いた。騎士といっても戦うだけが仕事ではない。事務処理もまた山のようにあるのだった。

（やれやれ……今夜も早く帰れそうにない）

　オリヴァーは熱いコーヒーをすすりながら思う。貴族の彼だが、コーヒーを入れるのはそこらの給仕より巧みなのである。
　オリヴァーはカップを置くと、散らかった机の上を手早く片付ける。すると写真立てが現れた。可愛い婚約者と今年の夏、祖父母の屋敷に行った時に撮ったものである。白黒のシャーロットが、美しい薔薇の庭を背景に、にっこりと微笑んでいた。

（可愛いな、俺の天使は。会いたいな……）

　オリヴァーの顔がつい緩む。ポーカーフェイスの猟犬騎士で通っている自分が、「最近雰囲気が柔らかくなった」と、同僚達の間で噂されているのは気づいていた。

（だって、こんなに愛らしくて、心の美しい若い女性が側にいるんだぞ……？　にやけるなって方が無理だ）

　――しかも、ベッドの上ではあんなに泣いてよがるんだ。堪らないね……。

　毎晩の睦み合いのことを思い出すと、オリヴァーの下腹部が熱くなる。シャーロットは昼間は淑女だが、夜は娼婦という、彼の好みど真ん中なのである。