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第三章 オリヴァー誘惑作戦

怒らないでくれ、マイラブ

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「いえ、そんなことは……。あっ、ドレスや宝石、本当にありがとうございました」

 シャーロットは改めて礼を言った。

「気にしないでくれ。どんなドレスも宝石も、君を引き立てる為に存在しているのさ。君より綺麗な物はこの世に無いだろうね、俺の天使」
「~~~っ……」

 シャーロットは今日は赤面しっぱなしである。同様に心臓も休む暇も無く暴れている。そんな初{うぶ}な反応を見てオリヴァーは実に楽しそうに笑うのだった。

「あはは、相変わらずだな。耳まで林檎のような色だよ」
「そっ、それはオリヴァー様が褒めすぎるせいですわ」
「君がそうして恥ずかしがっている姿が堪らないんだ。本当に可愛い」
「んもう……意地悪ですわね」
「怒らないでくれ、マイラブ」

 オリヴァーは不意に立ち止まると、チュッと彼女の唇にキスをした。ふわりと立ち昇る煙草の薫り。昔は苦手だったこの匂いが、彼の香りだと思うと愛おしい。

(オリヴァー様……)

 彼の唇が触れた場所が熱い。シャーロットは自分よりずっと背の高い恋人を見上げた。そのエメラルドの瞳が優しく細められる。

「どうしたんだい。路上でキスをするなんて、堪え性の無いやつだと思った?」
「いえ……そんなこと……」
「君が好き過ぎて我慢が出来なくなったんだ。許しておくれ」

(謝らないで下さい、オリヴァー様……。私も貴方に恋しています)

 ――なのにどうして私を抱いて下さらないの……? こんなに……こんなにも慕っておりますのに。

 触れてもらえない悲しさに胸がチクンと痛む。オリヴァーを求める心はどんどん成長している。モヤモヤは段々大きくなり、内側からシャーロットを揺さぶる強い風になる。

(どうにかしなくては……。彼ともう一度ひとつになりたい)

 ――本気で実行しなくては……〈オリヴァー様誘惑計画〉を!

 シャーロットがずっと黙っているのを見て、心優しい恋人は何を勘違いしたのかこう言う。

「ずっと試着をして、疲れただろう? あそこのベンチで休んでいなさい。何か冷たい物を買ってこよう」

 彼が広場のベンチを見た。

「え、ええ……分かりましたわ。ありがとうございます」
「ついでに一服してきてもいいかな」
「もちろんですわ。ゆっくりなさって下さい」
「ありがとう、すぐ戻る」
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