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第三章 オリヴァー誘惑作戦
オリヴァー誘惑作戦
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「そろそろ起きなくては。いくらなんでもお祖父様達に叱られてしまう。それに今日は街に行ってみたいと言っていただろう?」
オリヴァーは起き上がり、彼女の頭をポンポンと叩く。
「それは、そうですが……」
「では急いで準備をしなくては」
と彼はさっさとベッドを降りてしまった。残されたシャーロットは心のモヤモヤがまた大きくなるのを感じていた。
(やっぱり、オリヴァー様は〈あの時〉の言葉を守っていらっしゃるのね)
〈あの時〉とは二人が初めて結ばれた夜である。二回戦を望んだオリヴァーに対し、シャーロットはお断りする形になってしまった。それ以来、本当に次が無いのである。
――今言ったことは忘れてくれ。
とオリヴァーは語った。その言葉通りにしているのである。もう初めてセックスをしてから一ヶ月以上経つが、同じベッドで寝ているだけで、手を出してこない。ただの添い寝である。例えキスをしても、先程の通り少し淫靡な雰囲気になると、彼はピタリと止まってしまうのだ。それが何故なのか、最初は分からなかったが、しかしさすがに鈍感なシャーロットでも理解した。
(私から……お、お誘いしないといけないのかしら)
――お誘いというとあれだけれど、そうね……オリヴァー様は私の傷が治るのを律儀に待っておられるわけで……そうつまり、待て状態の犬ですわ……。私からオーケーを出さないといけませんよね……。オリヴァー様が私の許可無く強引に襲ってくるはずないだろうし。
(ああっ……でも私に、ゆゆゆ、誘惑だなんて出来るのかしら……! 「もう治りましたからどうぞ」なんて直接的すぎてムードも何もあったものではありませんわ。どうすればいいのでしょう、何か良い方法はないかしら)
――早く〈オリヴァー様誘惑計画〉を考えなくては……!
という具合にシャーロットはここ最近、一人悶々としているのであった。
☆~☆~☆~☆~☆
オリヴァーとシャーロットが遅れて食堂に行くと、彼の祖父母であるブランドン老夫婦はとっくに朝ご飯を済ませていた。
「ふふふ、相変わらず寝坊助{ねぼすけ}だな、オリーは。猟犬騎士が台無しだぞ」
紅茶を飲みながら老ブランドンが微笑む。白髪頭で、顔には深い皺の刻まれた、堂々たる紳士の風格である。
オリヴァーは起き上がり、彼女の頭をポンポンと叩く。
「それは、そうですが……」
「では急いで準備をしなくては」
と彼はさっさとベッドを降りてしまった。残されたシャーロットは心のモヤモヤがまた大きくなるのを感じていた。
(やっぱり、オリヴァー様は〈あの時〉の言葉を守っていらっしゃるのね)
〈あの時〉とは二人が初めて結ばれた夜である。二回戦を望んだオリヴァーに対し、シャーロットはお断りする形になってしまった。それ以来、本当に次が無いのである。
――今言ったことは忘れてくれ。
とオリヴァーは語った。その言葉通りにしているのである。もう初めてセックスをしてから一ヶ月以上経つが、同じベッドで寝ているだけで、手を出してこない。ただの添い寝である。例えキスをしても、先程の通り少し淫靡な雰囲気になると、彼はピタリと止まってしまうのだ。それが何故なのか、最初は分からなかったが、しかしさすがに鈍感なシャーロットでも理解した。
(私から……お、お誘いしないといけないのかしら)
――お誘いというとあれだけれど、そうね……オリヴァー様は私の傷が治るのを律儀に待っておられるわけで……そうつまり、待て状態の犬ですわ……。私からオーケーを出さないといけませんよね……。オリヴァー様が私の許可無く強引に襲ってくるはずないだろうし。
(ああっ……でも私に、ゆゆゆ、誘惑だなんて出来るのかしら……! 「もう治りましたからどうぞ」なんて直接的すぎてムードも何もあったものではありませんわ。どうすればいいのでしょう、何か良い方法はないかしら)
――早く〈オリヴァー様誘惑計画〉を考えなくては……!
という具合にシャーロットはここ最近、一人悶々としているのであった。
☆~☆~☆~☆~☆
オリヴァーとシャーロットが遅れて食堂に行くと、彼の祖父母であるブランドン老夫婦はとっくに朝ご飯を済ませていた。
「ふふふ、相変わらず寝坊助{ねぼすけ}だな、オリーは。猟犬騎士が台無しだぞ」
紅茶を飲みながら老ブランドンが微笑む。白髪頭で、顔には深い皺の刻まれた、堂々たる紳士の風格である。
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