スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち

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第二章 ドキドキの同居生活

君は心がとても綺麗だ

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 彼女とエマは抱き合った。そこにオリヴァーが近づき、静かに二人ごとをそっと腕に包んだ。
 そうやって三人はずっと寄り添っていた。


☆~☆~☆~☆~☆



「今日は本当にありがとうございました。シャーロット様、若旦那様」

 エマは微笑んだ。初めて見た少女の笑顔にシャーロットとオリヴァーはこころからほっとする。

「また明日ね、エマ」

 とシャーロット。

「おやすみ、エマ」

 とオリヴァー。

「はい。お休みなさい」

 バタンとエマが自室の扉を閉めた。静かになった廊下で彼と彼女は見詰め合って笑った。

「良かったですわね」
「ああ、君のおかげだ、シャーロット。本当にありがとう」

 二人は離れへ向かって歩き出した。もう夜である。

「残りのトライフル、俺たちも頂こうか」
「はい」

 そのままの流れでオリヴァーはシャーロットの寝室にやって来た。メイドが先程作ったトライフルを持ってくる。それをソファで並んで食べる。

「それにしても、君に打ち明けて本当に良かった」

 器を置いて、ぽつりとオリヴァーが言った。

「え……?」
「エマのことは、誰にも詳しい話をしたことが無かった。俺の弱さを他人に明かすようなものだったからだ。怖かった……。けれど君に話して良かった。救われたよ。ありがとう、シャーロット」
「そんな……。私は何もしていませんわ」

 シャーロットは頬を赤らめながら言った。

「そんなことはない。見事なアイディアだった。エマも笑顔を取り戻したし、本当に感謝している」
「オリヴァー様……」
「……シャーロット、君は素晴らしい女性だ。ジョージの結婚式で出会った時は、まだ子供だったけれど、今や身も心も成長したんだね。外見だけじゃない、君は心がとても綺麗だ」

 オリヴァーが言った。エメラルドの瞳が真剣にシャーロットを見詰めている。

「オ、オリヴァー様……」

 ドキッとした。

「でもまだ、こういう所は子供かな。――ほら、クリームがついている」

 大人の雰囲気から一転、クスッとオリヴァーが笑う。シャーロットの桜色の唇の脇に、トライフルのクリームがといているのだ。

「え? ――きゃっ、イヤですわっ」

 慌てて口元を拭おうとするシャーロットに、彼がそっと手を伸ばしてきた。

「取ってあげよう。動かないで」

 頬に彼の親指が触れ、シャーロットの桜色の唇の端をそっと拭った。オリヴァーはそれをぺろりと舐め取る。ちらりと見えた赤い舌にドキッとした。
 しかしクリームを取ったにも関わらず、オリヴァーはシャーロットから離れずに、再度手を伸ばす。そして今度は両手で彼女の頬を包むと、ぐっと距離を縮めてくる。漆黒の髪が闇に溶け、碧の瞳だけが真剣に彼女を見詰めていた。

「……!」

 美貌の猟犬騎士の圧倒的な迫力に、シャーロットは顔から火が出そうになった。呼吸が一気に早まり、心臓がドクドクと血液を送り出していく。

「あ、あの……っ」

(ち、近い、お顔が近いです……っ)

 ――恥ずかしい……!

「静かに」

 オリヴァーは言った。
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