スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち

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第二章 ドキドキの同居生活

トライフル作り

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(何か出来ないかしら……)

 ――オリヴァー様のために、そしてエマ自身の為にも、笑顔を取り戻してあげたい。私に何か出来ることはないかしら……。

 その時、静かに扉をノックしてメイドが入ってきた。飲み終わったティーカップやクッキーを片付け始める。
 それを見ていたシャーロットはハッとひらめいた。

「オリヴァー様、私に良い考えがあります……!」
「え……っ?」

 シャーロットは立ち上がり、オリヴァーの耳に口元を寄せた。内緒話をするような態勢である。

「――というのはどうでしょうか」
「なるほど」
「上手くいくかわかりませんが……」
「いや、やってみる価値はある。すごいぞ、シャーロット。さすがは俺の天使だ」
「はいっ――!」

 二人は早速準備に取りかかった。


☆~☆~☆~☆~☆



「エマ。お帰りなさい」

 学校から帰ってきたエマをシャーロットが呼び止めた。

「?」
「ささ、こちらへ」

 そのまま厨房へと連れて行く。そこにはたくさんのお菓子作りの材料が揃っていた。純白のクリームや、卵色が鮮やかなスポンジや、軽い焼き色のクッキーや、様々なベリーなどである。側にオリヴァーもいた。

「――っ……!」

 エマは驚いたように目を輝かせた。

「お誕生日おめでとう! さあ、一緒にトライフルを作りましょう」

 トライフルとは〈何でも乗せちゃってオーケー〉という名前のケーキである。飾り付けが簡単で、しかも見栄えがよいので、子供でも作れる。一緒にトライフルを作り、エマに楽しんでもらう、というのがお菓子作りが得意なシャーロットが考えた作戦だった。

「さ、手を洗って」

 こくこくと頷くと、エマは流し場に行く。その隣にオリヴァーが立った。どうやら彼も参加するらしい。

「え? オリヴァー様も?」
「いいだろう? 何事も経験だ」
「もちろん、いいですわよ!」

 シャーロットはにっこり笑って、メイドに用意してもらった透明なガラスの器を出した。これに層になるように材料を敷き詰めていくのだ。

「どれから入れてもいいけれど、まずはクッキーにしましょうか」

 と大小さまざまな形のクッキーを差し出す。シャーロットがあらかじめ焼いておいたものだ。

「粒がバラバラなんだな」
「ええ。こうするとトライフルに入れた時の食感が良くなるんです。〈もみもみクッキー〉というんですよ」
「〈もみもみクッキー〉?」
「はい。粉を百、バター五十、砂糖五十を混ぜて、袋に入れてもみもみします。それを天板にザーッと乗せて、百七十度のオーブンで十五分焼くんです。私、このクッキーが大好きなんです! 普通のクッキーは伸ばしているうちにバターが溶けて美味しくなくなるんですよ」
「へえ。そうなのか。味見してもいいかい?」
「もちろんです。さあ、エマも」

 彼と少女は〈もみもみクッキー〉を一つ摘まみ、口に入れた。

「カリッとして甘い。美味しいな、エマ」

 コクコク、とエマが同意する。シャーロットも嬉しくなった。

「さあ、続けましょう」
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