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第一章 出逢いと再会
この試合、負ける気がしないんだ
しおりを挟む「ありえませんわ! だってシャーロットは没落貴族の貧乏令嬢ですのよっ。オリヴァー様とは釣り合いません」
「没落しているかどうかは関係ありません。私は彼女との結婚に賭けてみる気になったのです」
「な、なぜ?」
令嬢達と同じことをシャーロットも思う。
(オリヴァー様、なぜですの?)
――どうして私からの求婚を受けて下さったの?
(もしかして貴方様も私のことが……?)
ドキドキして回答を待つ。
(「一目惚れしたからだ」なんて言われちゃったらどうしよう……!)
しかし、シャーロットの妄想は見事に外れた。
「私は勝負が好きなのです。結果が分かっていたら、どんな試合も面白くないでしょう? だから一か八か、乗ってみることにしたんです」
オリヴァーは平然と言った。
その答えを聞いて、シャーロットを含めその場にいた娘達はポカンと口を開ける。皆頭の上にクエスチョンマークが出ているような表情である。
(しょ、勝負? 結果……?)
――そもそも結婚って試合なの?
(う~ん、分からない。殿方ってよく分からないわ……)
意思は通じていなくても、他の令嬢達もシャーロットと同じようなことを考えているみたいだ。
「そんなヘンテコな理由で……。じゃあ私でもよろしいではありませんか。私と結婚して下さいまし」
リーダー格の令嬢が言った。
「君とじゃ結果は見えている」
オリヴァーは言った。そして続ける。
「君と結婚したとしても、価値観が合わなくて、すぐ離婚するだろう。君は見るからにワガママそうだし、何か嫌なことがあったら即投げ出しそうだ。それに弱い立場の者をいじめるような心の汚い人間は、こっちから願い下げだ。関わるだけ時間の無駄。私が損して終わりだ」
「~……っ!」
令嬢達は羞恥に顔を真っ赤にした。彼は彼女達がシャーロットを虐げていたことに気づいていたらしい。その仇を討ってくれたのだ。
「例え婚約だとしても、やるならば、真剣にしたい。どんな試合でも、負けそうになったら『やっぱり今の無し』なんてのは最低だ。一番腹が立つ。何事も本気でなければ意味がない。その点、シャーロットなら大丈夫だろう。君たちのように、父親の財力で何度も人生をやり直せると思っていないのだから」
「それは……っ」
「それに私にも好みがある。妻にするならより美しい方がいい」
オリヴァーは令嬢達をチラッと見てから言った。彼女たちは流行りのドレスを着て、最新の化粧をしているが、しかし素顔は中の下というところだ。とてもシャーロットの極上の美しさには適わない。
それから彼はスッと目を細め、品のいい鼻先をシャーロットの黄金色の髪に埋める。匂いをかぐような甘い仕草に彼女はドキッと心臓を跳ねさせた。
「オリッ、オリヴァー様、なにを……っ!」
シャーロットは慌てた。
「それに俺は、この試合、負ける気がしないんだ」
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