スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち

文字の大きさ
上 下
17 / 113
第一章 出逢いと再会

エメラルドの瞳

しおりを挟む

(は、はうう~!)

 ――さわっ触ってる。オリヴァー様が私に……!

 緊張と、今まで味わったことのない天上の喜びに、シャーロットはカチコチになってしまう。

「おい、固まってるぞ。それで俺の婚約者が務まるのか?」
「は、はいぃ~」
「くくく。面白い金ネズミを拾ったもんだな。今日はいい夜だ」

 オリヴァーは楽しそうだ。いつもの無表情はどこにいってしまったか、と思うくらいだ。

(もしかして、こっちが本当のオリヴァー様なのかしら……?)

 ぽうっと見とれていると、突然ドアが開かれ、先程までシャーロットをいじめていた令嬢達が飛び込んできた。

「いたわっ、シャーロット。あんた逃げるんじゃないわよ……って、えええ? オリヴァー様!?」

 リーダー格の令嬢が、シャーロットと一緒にいるオリヴァーに気づいて目を見開いた。

「まっ、まあオリヴァー様。こんなところのいらしたのね。皆探していましたよ。おほほほほ」

 リーダー格の令嬢は、ぎこちない笑顔を作りながら羽扇で口元を覆う。他の令嬢も同じようにした。

(またあの娘{こ}達だわ)

 シャーロットはビクッと身体を震わせた。そのままシャーロットが一歩下がったのに気がついて、さりげなくオリヴァーが前に立つ。まるで庇うような格好だ。

「何かご用ですか。ご令嬢方」

 オリヴァーが淡々と言った。

「いえ、別に。私たちはそちらのシャーロットさんとお喋りしたいだけですの。ね、シャーロットさん?」
「……っ」
「ほら、女だけで話しましょうよ? あちらには美味しいスイーツもありますのよ。ね、行きましょう?」

 言葉は丁寧だが、令嬢達の目には意地悪な光がある。

(嫌だわ。行きたくない……)

 シャーロットは無意識にオリヴァーの袖をつかんでいた。細い指が小刻みに震えている。

(助けて、オリヴァー様)

「……」

 シャーロットの無言の助けに気がついたオリヴァーが、不意に彼女を横向きに抱き上げた。
 背中と膝下に感じる、強い腕の力。ふわっと身体が宙に浮き、天然の巻き髪が自然に広がる。オリヴァーはまるで幼子のように彼女を軽々と持ちあげている。
 シャーロットは驚きにサファイアの瞳を見開いた。呼吸をするのも忘れてしまう。まるで時が止まったかのように、彼女はオリヴァーの整った横顔を見詰めた。長く伸びた睫毛{まつげ}の奥で輝くエメラルドの瞳は、令嬢達を冷たく睨み付けている。

「きゃっ……!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末

藤原ライラ
恋愛
 夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。  氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。  取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。  堅物王太子×引きこもり令嬢  「君はまだ、君を知らないだけだ」 ☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。 ※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...