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第一章 出逢いと再会
舞い降りた天使
しおりを挟むシャーロットはつぶやいていた。風に乗ったその小さな声がオリヴァーの元に届く。
シャーロットはすぐにハッと我に返った。
(えっ、今なにか言っちゃった?)
オリヴァーが振り返った。
「……」
エメラルドの瞳がまっすぐシャーロットを捉える。何か言いたげな美しい碧{みどり}の宝石に、息が止まりそうになった。
「――……っ!」
ドキッと心臓が高鳴った。射貫かれそうなほど強いまなざし。全身が一気に熱くなり、血が沸騰しそうになる。
「オ、オ……リヴァー様……」
「……君は?」
長い沈黙の後、オリヴァーが言った。
(今の聞こえていたかしら?)
――もし聞こえていたとしても、構わないわ。あれが私の本心だもの。……でも、笑われなくて良かった。
シャーロットはホッとしながら答える。
「あの、私ジョージ・パット・ウォーレンの妹の、シャーロット・エリザベス・ウォーレンです。あの、十年前に兄の結婚式で指輪を見つけて頂いた……」
「ジョージの? ……ああ、あの時の女の子か」
オリヴァーが考えるように宙を見てから言った。
「おっ、覚えておいでですか?」
「もちろん。印象的な出来事だったからね」
あまりの喜びにシャーロットは顔が真っ赤になった。
(ウソ、覚えていてくれていたなんて……!)
――それに私、オリヴァー様と会話している!
その時シャーロットは直感した。
(告白するなら今しかないわ。この機会を逃せば、もう二度とお話するチャンスは巡ってこないっ……!)
――振られても良いわ。すぐ社交界の噂になるだろうけれど、馬鹿にされるのには慣れているもの。失う物は何もない。
人生で一番勇気を振り絞った瞬間だった。シャーロットは細い手をぎゅっと握り、思い切って明るみに飛び出した。
「……!」
オリヴァーが食い入るようにシャーロットを見詰めた。
月の光に照らされたシャーロットは息を呑むほど美しい。バターブロンドの巻き髪が夜風に揺れ、ふわりとなびいた。
「……驚いた。まるで舞い降りた天使だな」
オリヴァーは感嘆の声でつぶやいた。
「あ、あのっ」
「……」
オリヴァーがなんだ、というような目で見る。
「ず、ずっとお慕いしておりました。十年前に助けて頂いたあの日から。オッ、オリヴァーさま……私と結婚して下さいまし……っ!」
シャーロットは一気に言った。
(どうしよう、告白してしまったわ……!)
バクン、バクン。シャーロットの心臓は今にも爆発しそうなほど高鳴っている。ぎゅっと目をつむり、彼の返事を待った。
長いながい沈黙が過ぎた。
「さっきのは聞き間違いじゃなかったんだな」
オリヴァーが紫煙を吐いて、つぶやいた。
「……っ」
シャーロットはハッとして目を開ける。彼が真剣に自分を見詰めていた。
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