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第一章 出逢いと再会
オリヴァー・スチュワート・ブランドン
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「確かにそう言ったような気がします。でも、それだけで?」
「他にもある。今日は天気がいい。少し暑いくらいだ。だから控え室はどこも窓が開いている」
男が振り返り、建物を見上げる。確かにシャーロットがいた部屋の窓も全開だ。
「君がお母上と話している間に、あの窓からカラスが侵入し、指輪を持ち去った。奴らは光り物が好きだからな」
「まあっ、そうでしたの……」
「ちょっとした悪戯心だろう。許してあげなさい」
「もちろんです。それにしてもすごい、すごいですわっ! 貴方様はなんて頭がいいのでしょう」
シャーロットは蒼い瞳をきらきらさせて男を見上げた。
「それほどでもない。だがいい余興になった。面白かったよ。ジョージに感謝しないとな」
男はポーカーフェイスを崩し、碧の瞳を細めてにやりと笑った。
ドキンッ。とてもセクシーな笑みだった。
まだ幼いシャーロットは生まれて初めて胸のときめきを覚える。
(いやだ、胸がドキドキしてきた……!)
「あ、兄のご友人ですの?」
シャーロットは頬を熱くしながら問いかける。
「ああ」
男はぶっきらぼうに答えた。
「では王立騎士団の方なのですね」
「まあな」
その時ゴーン、ゴーンと鐘の音が響いた。式がもうすぐ始まる。
「貴女も早く戻りなさい。皆{みな}が心配するよ」
男は歩き出そうとする。
(待って、もう行ってしまうの?)
慌ててシャーロットは男を引き留めた。小さな手でキュッと彼の袖をつかむ。
「あの、お名前を――、お名前をお聞かせ下さいまし」
「名前?」
「は、はい」
こくこくと頷く。
「オリヴァー・スチュワート・ブランドン。――じゃあな、可愛い天使さん」
色っぽい声で優しく微笑むと、男――オリヴァーはシャーロットの頭をぽんぽと叩いた。暖かい大きな掌である。彼は踵を返して行ってしまった。
(オリヴァー、さま……)
シャーロットは身体から力が抜け、へなへなと芝生にへたり込んだ。ぼうっとしたまま去りゆく男の背中を見詰める。深紅のマントを翻しながら歩く颯爽とした後ろ姿が格好良い。
(オリヴァー様……オリヴァー様……)
――なんて素敵なお名前。
ドキン、ドキンと痛いくらいに心臓が鳴っている。まるで引力が働いているかのように、オリヴァーから目が離せない。一秒でも長く彼の姿を脳裏に焼き付けていたかった。
一瞬強い風が吹き、シャーロットの黄金色の髪を乱していった。その風に乗って、遠くからオリヴァーの煙草の香りが届いた。ツンとした匂いに心がキュンとうずく。
(ああ、オリヴァーさま)
――どうしましょう、私、わたし。
(貴方さまに恋をしてしまいましたわ……)
長い長い初恋の始まりだった。
「他にもある。今日は天気がいい。少し暑いくらいだ。だから控え室はどこも窓が開いている」
男が振り返り、建物を見上げる。確かにシャーロットがいた部屋の窓も全開だ。
「君がお母上と話している間に、あの窓からカラスが侵入し、指輪を持ち去った。奴らは光り物が好きだからな」
「まあっ、そうでしたの……」
「ちょっとした悪戯心だろう。許してあげなさい」
「もちろんです。それにしてもすごい、すごいですわっ! 貴方様はなんて頭がいいのでしょう」
シャーロットは蒼い瞳をきらきらさせて男を見上げた。
「それほどでもない。だがいい余興になった。面白かったよ。ジョージに感謝しないとな」
男はポーカーフェイスを崩し、碧の瞳を細めてにやりと笑った。
ドキンッ。とてもセクシーな笑みだった。
まだ幼いシャーロットは生まれて初めて胸のときめきを覚える。
(いやだ、胸がドキドキしてきた……!)
「あ、兄のご友人ですの?」
シャーロットは頬を熱くしながら問いかける。
「ああ」
男はぶっきらぼうに答えた。
「では王立騎士団の方なのですね」
「まあな」
その時ゴーン、ゴーンと鐘の音が響いた。式がもうすぐ始まる。
「貴女も早く戻りなさい。皆{みな}が心配するよ」
男は歩き出そうとする。
(待って、もう行ってしまうの?)
慌ててシャーロットは男を引き留めた。小さな手でキュッと彼の袖をつかむ。
「あの、お名前を――、お名前をお聞かせ下さいまし」
「名前?」
「は、はい」
こくこくと頷く。
「オリヴァー・スチュワート・ブランドン。――じゃあな、可愛い天使さん」
色っぽい声で優しく微笑むと、男――オリヴァーはシャーロットの頭をぽんぽと叩いた。暖かい大きな掌である。彼は踵を返して行ってしまった。
(オリヴァー、さま……)
シャーロットは身体から力が抜け、へなへなと芝生にへたり込んだ。ぼうっとしたまま去りゆく男の背中を見詰める。深紅のマントを翻しながら歩く颯爽とした後ろ姿が格好良い。
(オリヴァー様……オリヴァー様……)
――なんて素敵なお名前。
ドキン、ドキンと痛いくらいに心臓が鳴っている。まるで引力が働いているかのように、オリヴァーから目が離せない。一秒でも長く彼の姿を脳裏に焼き付けていたかった。
一瞬強い風が吹き、シャーロットの黄金色の髪を乱していった。その風に乗って、遠くからオリヴァーの煙草の香りが届いた。ツンとした匂いに心がキュンとうずく。
(ああ、オリヴァーさま)
――どうしましょう、私、わたし。
(貴方さまに恋をしてしまいましたわ……)
長い長い初恋の始まりだった。
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