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最終章 未来へ

俺には分かる *

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「でも、先生は、すごい……ひとだから……、んっ……。おれなんかじゃ、全然だめ、だと思ったから……っ、あ、」
「おれなんか、って言うな。お前じゃなきゃダメなんだから。――あのな、びびってんのが自分だけだと思うなよ。歳の差とか、将来とか、気にしてんのは俺の方だ」

 鷹城が空いた手で完全に勃起した真琴のものをつかみ、乱暴にしごき出す。みだらな音が浴室に響いて、耳まで犯された気分だった。

「っあ……んっ、ど、どういう意味ですか……!」
「聞きたいか」
「……んっ、はい……っ」

 ふっさりとした陰嚢(いんのう)を指でくすぐられながら真琴は頷く。子猫みたいな甘え声しか出ないのが恥ずかしいのに、押し寄せる愉悦のせいで構っている暇がない。

「お前を俺のにしたら、お前の未来を閉ざしちまうみたいで怖いんだよ」

 鷹城は切なげに続ける。

「お前なら、俺よりももっとましな相手がいるだろ……? 性格も職業も、ちゃんとしたまともな相手が。男でも、女でもいい。お前は俺の中では、普通に大学を卒業して、夢叶えて作家になって、いい相手見つけて、普通に結婚する。んで、優しい父親になる、はずなんだ。だから、そういうあったかい未来が待ってるんだと思うと、俺がその道を曲げていいのか……って思っちまう」

 本心を吐露しているせいなのか、口調は冷静なのに、鷹城の手つきは落ち着きがなかった。的確なテクニックで、真琴の性器の先端から裏筋をたどり、根元をきゅっと締めつける。
 そんないやらしい仕方で何回か往復した後、また先端に戻り、甘い汁を垂れ流している鈴口を親指の先で開いた。とぷっと漏れる蜜に、真琴は「んっ」と身悶えてしまう。 
 たっぷりとそこを苛(さいな)んだあと、とうにゆるみ始めた蕾に鷹城は指を侵入させた。

「あ……っ、そんな先の、こと……わか、分からない……」
「俺には分かるんだよ。通ってきた道だからな」

 確かに三十を超えた鷹城にとっては、予想できるのかもしれない。

 真琴だって鷹城と会うまでは、自分は大学を卒業したら、作家になるか、どこかの会社に就職して、平凡に暮らすのだ、と思っていた。
 でも結婚について想像したことはなかった。こんなネガティブ思考の自分に、人生の伴侶が現れるとは思っていなかったのである。
 だからむしろ鷹城と出会ったことは幸運だった。この人だ、と思う相手に巡り会えたのだから。
 しかし鷹城はそう思ってはいないらしい。彼の言葉をかりれば、真琴は〈普通に結婚し、優しい父親になる〉ことになっている。

(でも、さきに先生に出会ったんだから仕方ない。こんなに恋しちゃったんだから……)

 真琴はなんとか鏡から片手を離し、あごに添えられた鷹城の手をとった。そしてその長い指に優しく口づける。形のよい爪や、節だった指の側面に唇で触れ、手のひらに頬を寄せた。
 目を細め、愛おしいものに頬ずりする仕草に、はっとしたように鷹城が息をのんだ。激しい愛撫がいったん止まる。

「先生はばかです……」

 真琴は言った。

「なっ……」
「未来なんて誰にも分からないのに、今からそんなこと気にして……。おれより、ずっと、ずうぅっとばかです」
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