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第六章 聖なる夜に(後編)
初めてのキス *
しおりを挟む今夜はクリスマスイブ。この街中のどこかで、恋人達が愛を確かめ合う日。
そんな特別な夜に、真琴と鷹城は初めての口づけを交わしていた。
「……ん……」
鷹城の唇はマシュマロのように柔らかい。皮膚と粘膜の間みたいな独特な感触。思った以上の熱さに、電流のようなしびれが真琴の唇に走った。
「――!」
鷹城が驚愕(きょうがく)したように目を見開く。肩をつかまれて引きはがされそうになるが、しかし真琴は負けずに接吻を続けた。
「……ん、……ん……」
(キスしてる……せんせいと)
そう思うと、とても唇を離す気になれなかった。
テクニックのかけらもない、無骨な口づけ。愛しさがどっと溢れるせいか、ただぐいぐい押しつけるだけで、ムードもへったくれもない。
それでも嬉しかった。
ちゅっちゅと軽く吸うだけで、体に火がついたように熱くなる。かすかなリップ音さえ興奮して、鼓膜がとろけそうだった。
「……っ、は……ぁ……」
息が続かなくなって、真琴はしかたなく口づけを解いた。そっと鷹城を窺うと、石のように固まっていた。
「せんせい……。もしかして、イヤだった……?」
「いや……。そうじゃねえ、けど……」
「けど……?」
「良かったのか? ファーストキスだったんだろ……?」
そうだった、と真琴は思った。
「いいよ……。せんせいに、あげる」
と、微笑した。
(もらってくれたら、うれしい)
酔っているとはいえ、恋い焦がれる相手と初めてのキスが出来たのだ。喜ばない方がどうかしている。
「ねえ、イヤじゃないなら……もっとしてもいい?」
「だけど……」
「ヤリ捨てなんて、ぜったいにしない。やくそくする」
「でも……」
「おねがい。させて……」
返事を待たずにまたキスをした。今度はただ押しつけるだけではなく、鷹城の上唇をついばむ。
それを続けていると、観念したのか、肩をつかんでいた鷹城の手から力が抜け、ベッドに落ちた。
「……っ、ふ……んっ……ん」
「……う……」
鷹城がかすかに喉声をもらした。
「ん、……っ、ふ……んぅ……」
鷹城の唇が緩んだので、真琴はそっと舌を忍ばせた。
初めてたどる他人の口腔(こうこう)。固い歯を怖々とつついた後、鷹城の舌を探す。
初めてのキスだというのに、手順が分かるのが不思議だった。これが本能だろうか。
奥で縮こまっていた舌を見つけると、真琴は誘い出すように先端に触れた。ぬるっとして、熱い。真琴はビクッと肩を跳ねさせてから、鷹城の舌に自分のものを触れさせた。
「……ふ、ん……っ、ん、んん……」
先と先を接触させるだけだったが、効果は大きかった。快感で肌が粟立ち、腰の奥がうずく。
しばらく拙(つたない)い口づけに浸った後、唇を離した。唾液が糸を引く。
「どう……? こんどは、きもちいい?」
「ん。……まあな」
鷹城は濡れた唇で答えた。
「ほかのところにも、していい……?」
「……好きにしな」
もうどうにでもなれ、と鳶{とび}色の瞳が言っているような気がした。
真琴は体勢を直して、再度彼の太ももにまたがった。
鷹城が「ちょっと待て」と言い、ベッドヘッドのクッションにもたれる。
二人の準備が整った後、改めて鷹城の股間を見た。先程は兆(きざ)し気味だった楔が、今では下着を持ち上げるほど張り詰めている。
「こんなに……」
真琴はほうっと恍惚の息を漏らした。
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