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王立魔術学園編
18 話 デザートはレールガン(前編)
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翌日ケイが起きたのは昼にもさしかかろうかと言うところだった。
ひどい酩酊の中、ケイは寝台傍に用意された水差しに手のを伸ばすと、“街に遊びに行ってきます。皆より”と書かれた置き手紙が目に入った。グラスの中に丸めていれられた嫌がらせのような置き手紙を抜きさり、水差しへと水を注いで一気に飲み干した。
「ああ、頭痛い。しかもなんか変な夢を見た様なきがする。なんか緑の丘でおっさんと喋っていたような…まあいいか。さてやることないし、砂漠でも撃ちっ放しにいくかな。」
ケイはそういうと自分の荷物が入った大きなトランクを抱えて、部屋を出て行った。馬舎で馬を一頭を鞍付きで借りると、トランクをくくりつけてフラワーシティの繁華街へ向けて出発した。
改めてフラワーシティの街並みを見ると大層興味深く、なかなか歩みは進まなかった。ザ・フラワーの根の上を人を背に乗せて走るモンスターがいたり、爬虫類系の亜人と思われる商人が馬車ほどでかい巨大な背負い袋を担いで道を歩いていたり、首都ではおよそ見られない光景が当たり前に広がっていたのだ。木の根の間に作られた苔むした商店の中にも、金属鎧より頑丈で軽いモンスターの皮鱗を使った武器や、防具が多く立ち並んでいたし、怪しい液体や骨粉を瓶にパンパンに詰めて売っているところもあった。
ケイは屋台で買ったなんの肉かわからない串焼きを咥えながら、メインストリーとを来たときと逆向きに進み出入り門の出口の列に並んだ。
「んぐんぐ、ギギギもこういうところに、んぐんぐ、来れれば受け入れて貰えて良かったのかな。って硬えよ、さっきから同じとこ20分は噛んでるよっ!」
列に並んでいる間中噛んでいる肉が一向に噛み切れないことに思わず突っ込んでしまうと、隣に並んでいたやたらでかい亜人の男性がケイを見て笑った。
「おい坊主、そらデザートワームの肉だ。それを噛み切れるのはモンスターか亜人くらいなもんだ。お前さんには無理だ、代わりに飴でもやろうか? がははは」
馬に乗っているケイと同じくらいの目線高さで喋るでかい亜人男性に、ムッとしたケイは思わず食ってかかってしまった。
「じゃあ、おっさんは食えるのかよ? あと、飴くれるならくれよ、口が油まみれで気持ち悪いんすよ」
「お、おぅ、挑発してんのかよくわけんねえな。どれ残りの肉切れ渡して見ろ、よく見とけよ。あ、おれはなヨーっていうんだ、よろしくな」
そういうとヨーは串に残っていた肉切れを一口でその天指す大きな牙が生えた口に放り込むと、バリゴリと音を立てて咀嚼してしまった。獣の様に縦細に伸びる瞳孔が特徴的な大きな瞳をグリっと見開いて自慢げな顔をするとケイに向かってムキムキの上腕二頭筋を強調するポーズをとった。
「おおお! ヨーさんすげええ、上腕二頭筋は全く関係ないけどあの肉を噛みちぎるとから只者じゃないっすね! 感動しました、あと僕の名前は“飴が欲しい”ケイと申します。」
「飴やるから素直に褒めてくれよ、とほほだよ。ケイは見たとこよそ者だが、亜人が怖くねえのか? しかも獰猛種の亜人だぞ?」
ヨーはゴソゴソと皮のジャケットを探すと小綺麗な紙で包まれた飴をケイへと放った。ケイはそれを口にすぐに放り込むと軽く礼をして、さっきのヨーの質問に答えた。
「首都から来たんですけど、友達が亜人なんですよ。確か8割デーモンっつってましたけど、中身は12割人間かなって思ってまして。ヨーさんはどんなモンスター系の亜人なんですか? あ、こういうのってタブーですか?!」
「いやいや構わねえよ、むしろ堂々と言える方がおれは気持ちいいってもんだ。ケイはまあ多分いいやつだから教えてやろう、おれはなデザートタイガーの亜人だ、気づいたらこの街にいてこの街で育ってきたんだ。最近ちょっと床に伏せてたんだが、久々に外に行きたくなってな、これから散歩にいくんだ。ケイはなにか外に目的があるのか?」
「へえ、タイガーってかっこいいですね。言われてみると耳の形もトラっぽい様な気がする。僕もまあ散歩みたいなもんです。」
「おお、それじゃ一緒にいかねえか? ガイドなしで散歩したって危ねえし、つまんねえから、おれのおすすめコースに連れてってやるよ。」
「えええ、人気のないとこに連れてってがぶりじゃないでしょうね? 怪しいなあ、お願いしようかなあ」
「おい、どっちなんだよケイは、そろそろ検査場だから門の前で待ってるからな、な!」
ヨーはそういうとケイとはべつの検査場へと入っていった。
暇という理由でヨーと一緒に“散歩”をすることにしたケイは、防塵マスクを自分と馬に装着して、砂漠をヨーと疾走していた。ヨーは自らの手足を器用に使って、体重の乗りにくい砂地を風の様にかけていく。ケイはエアコントロールで風の防壁を作りながら馬を走らせて、なんとかその後ろについていっていた。
「ケーイ、おそいぞお、そんなことだと目的地まで1日かかっちまうぞお!」
「いや、あんたが早すぎるんだろ! 常人のペースをだなあ、考えろよ!」
「いやいやケイなら常人の壁越えられそうな気がする、がんばれ若者」
その後30分走り続け、ヨーの影をギリギリ見失いそうになる直前にやっとケイは追いついた。ケイは馬に水をやりながら、ヨーが立つ崖に並んだ。
そこには、あのザ・デザートフラワーの全貌を上から見渡す圧倒的な光景が待っていた。黄色の砂漠の中にぽっかりと水水しい緑の山を作り上げるザ・デザートフラワーの力強く、巨大な枝葉は圧倒的で、そのあまりにもスケールの大きな存在に言葉がでてこなかった。
ヨーは自慢気な顔でケイへと向かう。
「いいもんだろ、俺の秘密の場所だ。こんな感動的な光景を俺はしらねえよ。ああここから出たことはないんだがな。がははは」
「いや、本当になんといっていいんだかわかりませんが、ありがとうございました、本当に」
「そんなに感動してくれたのなら連れて来た甲斐があるってもんだ、あとザ・フラワーのてっぺんをよく見て見ろ、そこに蕾があるはずだ」
ヨーはいつのまにか取り出して単眼鏡をケイへと渡すと、ザ。フラワーのてっぺん付近を指差した。ケイはヨーの言葉に従い単眼鏡を覗くと感嘆の声を上げる。
「おおヨーさんの言う通りついてるよ、他のスケールに対して小さいから気づきにくいけどこれがデザートフラワーの蕾か。確か何年かに1回だけ咲くんだっけ?」
「20年だ、20の頃に一回見たことがある。めちゃくちゃ綺麗なんだぞ、次に咲くのは5年後だな。もしケイが覚えてたら見に来るといい。もしまだあればだがな。」
「え、それはどういうこと?」
ヨーは砂漠にそびえる大樹を見つめながら語り始めた。
「ケイがよそ者だから話せるのかな。俺はこの間まであのデザートフラワーの蕾の守護を任せれていた警備隊の隊長だったんだ。若かりし頃に見たあの美しさに惚れて、次の開花まで命をかけて守ろうと決めて奮闘してきた。若返りの秘薬の元になるとも言われる蕾は数多くの盗賊に狙われ、そんな賊どもと昼夜問わずデザートフラワーの上層を駆け回り、排除してきた。だが今回はもうダメだ。この街に融資する有力な貴族が無理やり警備隊を無能な新人に入れ替えたんだ。多分そのうち襲撃があって、警備隊は全滅し、蕾は盗まれるだろうな。」
「そうだったんですね。今日は久しぶりに外に出るっていってましたが、どうして急に?」
「守備隊になんとか残ってくれた部下の隊員達が、上層部の怪しい動きを突き止めてくれたのだが、……おそらく今夜襲撃が起こるらしい。やけ酒をやめてこうして外にでたのも、最後にあの蕾を目に焼き付けておきたかったんだ。それに、ケイに声をかけたのも誰かにあの蕾が確かにあったことを見て欲しかったのかもしれないな。ありがとうケイ。」
「……ヨーさん、そんなあなたにいいものと伝手があります。急いで街に戻りましょう。」
ケイは年に似合わない悪そうな顔をして、狐につままれたようなヨーに続けて尋ねる。
「あなたの覚悟に対し、我々は相応の仕事をしてみせます。死ねますか?」
急に悪魔の様な雰囲気を放つ目の前の少年に、ヨーは藁にもすがる思いで静かに強く頷いて見せた。そしてそのまま2つの影は元来た道を戻っていった。
ひどい酩酊の中、ケイは寝台傍に用意された水差しに手のを伸ばすと、“街に遊びに行ってきます。皆より”と書かれた置き手紙が目に入った。グラスの中に丸めていれられた嫌がらせのような置き手紙を抜きさり、水差しへと水を注いで一気に飲み干した。
「ああ、頭痛い。しかもなんか変な夢を見た様なきがする。なんか緑の丘でおっさんと喋っていたような…まあいいか。さてやることないし、砂漠でも撃ちっ放しにいくかな。」
ケイはそういうと自分の荷物が入った大きなトランクを抱えて、部屋を出て行った。馬舎で馬を一頭を鞍付きで借りると、トランクをくくりつけてフラワーシティの繁華街へ向けて出発した。
改めてフラワーシティの街並みを見ると大層興味深く、なかなか歩みは進まなかった。ザ・フラワーの根の上を人を背に乗せて走るモンスターがいたり、爬虫類系の亜人と思われる商人が馬車ほどでかい巨大な背負い袋を担いで道を歩いていたり、首都ではおよそ見られない光景が当たり前に広がっていたのだ。木の根の間に作られた苔むした商店の中にも、金属鎧より頑丈で軽いモンスターの皮鱗を使った武器や、防具が多く立ち並んでいたし、怪しい液体や骨粉を瓶にパンパンに詰めて売っているところもあった。
ケイは屋台で買ったなんの肉かわからない串焼きを咥えながら、メインストリーとを来たときと逆向きに進み出入り門の出口の列に並んだ。
「んぐんぐ、ギギギもこういうところに、んぐんぐ、来れれば受け入れて貰えて良かったのかな。って硬えよ、さっきから同じとこ20分は噛んでるよっ!」
列に並んでいる間中噛んでいる肉が一向に噛み切れないことに思わず突っ込んでしまうと、隣に並んでいたやたらでかい亜人の男性がケイを見て笑った。
「おい坊主、そらデザートワームの肉だ。それを噛み切れるのはモンスターか亜人くらいなもんだ。お前さんには無理だ、代わりに飴でもやろうか? がははは」
馬に乗っているケイと同じくらいの目線高さで喋るでかい亜人男性に、ムッとしたケイは思わず食ってかかってしまった。
「じゃあ、おっさんは食えるのかよ? あと、飴くれるならくれよ、口が油まみれで気持ち悪いんすよ」
「お、おぅ、挑発してんのかよくわけんねえな。どれ残りの肉切れ渡して見ろ、よく見とけよ。あ、おれはなヨーっていうんだ、よろしくな」
そういうとヨーは串に残っていた肉切れを一口でその天指す大きな牙が生えた口に放り込むと、バリゴリと音を立てて咀嚼してしまった。獣の様に縦細に伸びる瞳孔が特徴的な大きな瞳をグリっと見開いて自慢げな顔をするとケイに向かってムキムキの上腕二頭筋を強調するポーズをとった。
「おおお! ヨーさんすげええ、上腕二頭筋は全く関係ないけどあの肉を噛みちぎるとから只者じゃないっすね! 感動しました、あと僕の名前は“飴が欲しい”ケイと申します。」
「飴やるから素直に褒めてくれよ、とほほだよ。ケイは見たとこよそ者だが、亜人が怖くねえのか? しかも獰猛種の亜人だぞ?」
ヨーはゴソゴソと皮のジャケットを探すと小綺麗な紙で包まれた飴をケイへと放った。ケイはそれを口にすぐに放り込むと軽く礼をして、さっきのヨーの質問に答えた。
「首都から来たんですけど、友達が亜人なんですよ。確か8割デーモンっつってましたけど、中身は12割人間かなって思ってまして。ヨーさんはどんなモンスター系の亜人なんですか? あ、こういうのってタブーですか?!」
「いやいや構わねえよ、むしろ堂々と言える方がおれは気持ちいいってもんだ。ケイはまあ多分いいやつだから教えてやろう、おれはなデザートタイガーの亜人だ、気づいたらこの街にいてこの街で育ってきたんだ。最近ちょっと床に伏せてたんだが、久々に外に行きたくなってな、これから散歩にいくんだ。ケイはなにか外に目的があるのか?」
「へえ、タイガーってかっこいいですね。言われてみると耳の形もトラっぽい様な気がする。僕もまあ散歩みたいなもんです。」
「おお、それじゃ一緒にいかねえか? ガイドなしで散歩したって危ねえし、つまんねえから、おれのおすすめコースに連れてってやるよ。」
「えええ、人気のないとこに連れてってがぶりじゃないでしょうね? 怪しいなあ、お願いしようかなあ」
「おい、どっちなんだよケイは、そろそろ検査場だから門の前で待ってるからな、な!」
ヨーはそういうとケイとはべつの検査場へと入っていった。
暇という理由でヨーと一緒に“散歩”をすることにしたケイは、防塵マスクを自分と馬に装着して、砂漠をヨーと疾走していた。ヨーは自らの手足を器用に使って、体重の乗りにくい砂地を風の様にかけていく。ケイはエアコントロールで風の防壁を作りながら馬を走らせて、なんとかその後ろについていっていた。
「ケーイ、おそいぞお、そんなことだと目的地まで1日かかっちまうぞお!」
「いや、あんたが早すぎるんだろ! 常人のペースをだなあ、考えろよ!」
「いやいやケイなら常人の壁越えられそうな気がする、がんばれ若者」
その後30分走り続け、ヨーの影をギリギリ見失いそうになる直前にやっとケイは追いついた。ケイは馬に水をやりながら、ヨーが立つ崖に並んだ。
そこには、あのザ・デザートフラワーの全貌を上から見渡す圧倒的な光景が待っていた。黄色の砂漠の中にぽっかりと水水しい緑の山を作り上げるザ・デザートフラワーの力強く、巨大な枝葉は圧倒的で、そのあまりにもスケールの大きな存在に言葉がでてこなかった。
ヨーは自慢気な顔でケイへと向かう。
「いいもんだろ、俺の秘密の場所だ。こんな感動的な光景を俺はしらねえよ。ああここから出たことはないんだがな。がははは」
「いや、本当になんといっていいんだかわかりませんが、ありがとうございました、本当に」
「そんなに感動してくれたのなら連れて来た甲斐があるってもんだ、あとザ・フラワーのてっぺんをよく見て見ろ、そこに蕾があるはずだ」
ヨーはいつのまにか取り出して単眼鏡をケイへと渡すと、ザ。フラワーのてっぺん付近を指差した。ケイはヨーの言葉に従い単眼鏡を覗くと感嘆の声を上げる。
「おおヨーさんの言う通りついてるよ、他のスケールに対して小さいから気づきにくいけどこれがデザートフラワーの蕾か。確か何年かに1回だけ咲くんだっけ?」
「20年だ、20の頃に一回見たことがある。めちゃくちゃ綺麗なんだぞ、次に咲くのは5年後だな。もしケイが覚えてたら見に来るといい。もしまだあればだがな。」
「え、それはどういうこと?」
ヨーは砂漠にそびえる大樹を見つめながら語り始めた。
「ケイがよそ者だから話せるのかな。俺はこの間まであのデザートフラワーの蕾の守護を任せれていた警備隊の隊長だったんだ。若かりし頃に見たあの美しさに惚れて、次の開花まで命をかけて守ろうと決めて奮闘してきた。若返りの秘薬の元になるとも言われる蕾は数多くの盗賊に狙われ、そんな賊どもと昼夜問わずデザートフラワーの上層を駆け回り、排除してきた。だが今回はもうダメだ。この街に融資する有力な貴族が無理やり警備隊を無能な新人に入れ替えたんだ。多分そのうち襲撃があって、警備隊は全滅し、蕾は盗まれるだろうな。」
「そうだったんですね。今日は久しぶりに外に出るっていってましたが、どうして急に?」
「守備隊になんとか残ってくれた部下の隊員達が、上層部の怪しい動きを突き止めてくれたのだが、……おそらく今夜襲撃が起こるらしい。やけ酒をやめてこうして外にでたのも、最後にあの蕾を目に焼き付けておきたかったんだ。それに、ケイに声をかけたのも誰かにあの蕾が確かにあったことを見て欲しかったのかもしれないな。ありがとうケイ。」
「……ヨーさん、そんなあなたにいいものと伝手があります。急いで街に戻りましょう。」
ケイは年に似合わない悪そうな顔をして、狐につままれたようなヨーに続けて尋ねる。
「あなたの覚悟に対し、我々は相応の仕事をしてみせます。死ねますか?」
急に悪魔の様な雰囲気を放つ目の前の少年に、ヨーは藁にもすがる思いで静かに強く頷いて見せた。そしてそのまま2つの影は元来た道を戻っていった。
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