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王立魔術学園編
16話 そうだ、海で泳ごう。
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夏休みも1週間を過ぎた日、いつものように学園の部室へと集ったイブとケイとエーコとギギギは姿を現さないロームの代わりに置き手紙を見つけた。中には “異世界生産技術部(仮)課外活動許可証”とローム直筆のメッセージが添えられていた。
「砂漠のリゾート “ザ・フラワーシティ”にある別荘に遊びに来ませんか? お客様の心をときめかせる用意があります、さあどうぞ砂漠の楽園へ! だと、どうする?」
ケイが胡散臭そうにメッセージを読んだ。エーコが貴族でも普通は泊まれない様なリゾート地だと補足すると、途端にケイもイブもギギギも目を輝かせ、その日の内にエーコの実家アクエリウス家の馬車で砂漠のリゾートを目指すことになった。そしてロームと合流して5人となったケイたちは“海”に来ていた。目の前に広がる海を前にケイは隣に立つロームに素直に驚きを伝えた。
「本当にあったんだな海、というかここは本当にあのザ・フラワーの真下なのか?」
ロームは驚くケイを見ると嬉しそうに答えた。
「ケイでも驚くんだな、いやぁうれしいよ。ここは間違いなくザ・フラワーの下にある超巨大空洞だよ。水底に広がる岩塩層が塩水を、ザ・フラワーの主根の吸排が波を作り出す奇跡のビーチさ。砂と太陽にはこと困らないから一年中を通してリゾートシーズンなんだが、夏は逆に閑散期なんで一学期の慰労にどうかと思ってな。」
「いや一番苦労してたのはロームだと思うんだが。まあ最近バタバタしてゆっくり話をする間もなかったからちょうどいいか。」
「決勝終わったと思ったら、すり替え事件やらギギギ先輩やらイブさんに吹き飛ばされたりやら全部ケイ絡みなんだがな。お、話をすればイブさん達来たぞ!」
ロームが浜辺に直結のログハウスから出てくる女性陣に爽やかに手を振った。エーコ、イブ、ギギギは三者三様の水着に身を包み、ビーチへと向かっている。低身長でスレンダーなイブは、少し布地多めだが上下で別れた白色の水着を恥ずかしそうに手で隠している。ギギギは小麦色の肌を強調するように黒系の上下つながった水着をまとっているが、逆にその豊満なバストが寄せて上げられ強調されていた。エーコは赤色の上下が別れた機能的なデザインの水着をまとっている。そんな3人を臆することなく、礼儀だと言わんばかりに褒めるロームにケイは尊敬の念を感じずにはいられなかった。
「皆とてもお似合いだよ。ビーチのトップスリーは頂いたといっても過言じゃないんじゃないかい? そう思うだろケイ?」
「あ、ああ、そうだな大変お美しいな、はははは」
「ケイ、あんまりだらしない顔でイブちゃんとギギちゃんのこと見てると岩盤まで沈めるわよ?」
「あんまりケイをいじめるなよエーコ。きっとこういうのに慣れてないんだろ、さあそんなことより泳ごうぜ」
ケイをかばうように皆に提案するロームの言葉に従い、海へと歩き始めた。ケイはめちゃくちゃロームに感謝した。
~*~*~*~
僕は現在海に浮かんで頭を冷やしている。沖ではロームがガチで泳いでいるし、水面が膝上あたりにくる浅瀬ではイブとエーコとギギギが水におっかなびっくりとはしゃいでいる。いやそれにしてもこの世界の体の成長は早いと思う。10歳にしては身長も体つきも前世の女子高校や大人顔負けで、やっぱり過酷な環境がそうさせるのかなとか考えてしまう。いや実際考えてるのは、その刺激的な水着姿なんだけど。
「おおい、覗きか? エーコに殺されるぞ?」
「うへえっ?! ・・・なんだロームか、驚かすなよな。」
「イブさんはスレンダーだが持ち前の美肌と合わさって白い水着が神々しいな。新手のライバルのギギギ先輩もいるしケイの前でちょっと大胆な水着で攻めて見ましたってところか。ギギギ先輩は多分エーコに着せて貰ったんだろうが、胸元をしっかり隠すデザインにしたことで逆に強調するという引き算のテクニックだな。イブさんとは違った長くて肉付きのいい肢体が僕気になりますといったところか、ケイ?」
「おい、分析をありがとう。ほとんどあってるけど、頼むから黙っててくれよ。」
「“エーコもなかなか胸があるし、引き締まった腹筋や太ももとかやばいなぁ、正面切って見れないな僕”といったところか、本当にむっつりだなケイは」
「・・・うるせえ僕は純情なんだよ、それに前もいったけど前世の世界なら10歳過ぎなんてまだ子供なんだよ。途中までそうなるもんだと思ってたんだから慣れないんだよ」
「ケイは記憶を引き継いだだけで、この世界に生きているじゃないか、もう少し適応してもいいんじゃないか? 貴族なんて12歳超えたら結婚、出産を迎えるやつだって少なくないぞ。」
そんなことを話していると、海に慣れたのかイブ達もゆらゆら浮いているケイの所へと泳いでくる。
「ケイ君! 海ってすごいねっ、水がこんな塩辛いしこんな高い波誰が起こしてるんだろ?」
そんなことを言いつつイブはケイの直ぐ近くまでやってきた。
「いや本来は月の引力によってたが、この波はザ・フラワーの生命活動のせいであってな・・・」
水で濡れた髪をおでこにピシッとかき分けてて、いつもと違い艶かしい雰囲気のイブにケイはイブを直視できていない。そんな実はウブな幼馴染に気を大きくしたのか、イブがちょっと大きめの波が来たタイミングに合わせてケイへと抱きつく。
「ごめんケイ君! 波が強くて、ちょっと掴まっててもいい?」
しょっぱそうな顔をしながらケホケホとしながらイブはケイの腕を両腕を抱くようにして抱きついた。当然、イブの控えめな膨らみがケイの二の腕を包む。厚布一枚で覆われただけの成熟途中といった絶妙な柔らかさがケイの背筋に電流を流した。そんな二人の様子を見ていたギギギが、水に浮かぶほど立派な膨らみを前面に押し出しながら犬かきでケイの空いている腕を急襲した。
「イブズルイ! ギギニハ駄目言ッタノニ、自分ハOK!」
ギギギの小麦色の弾力のある膨らみにすっぽり挟まれたケイの細腕は幸せの余り感覚が消えそうだった。両腕に水を弾く乙女の柔肌の感触を受けてケイの我慢は限界に達した。
「アクアビイイイイイイイっム!」
ケイの後方に激流が現れ、鳥が飛んでいくような速度で沖へ向かってすっ飛んでいった。水面を水切りしながら進む姿はまるでトビウオのようだったとロームは語る。
1時間後、頭を冷やしたのかすっきりした顔で帰ってきたケイをむかえた一同は、また明日も来ようと刺激的な海遊びを振り返りながらロームの屋敷へと戻った。
屋敷へ戻ると、5人は用意されていた男湯女湯へと通され、砂やら塩水、体の疲れを綺麗に落とした。その後はいつの間にか用意されていたラフだが気品ある衣装に身を包んだ。ロームとケイは、真っ白なシャツと真っ白な皮のズボンに、エーコとイブとギギギは真っ白なイブニングドレスに身にまとい大食堂で食事となった。美しい大理石で作られた白亜の空間は、その高い天井からシャンデリアが吊るされ、部屋の隅に置かれたチェロのような弦楽器からは会話を邪魔しない程度の心地よい音楽が奏でられた。料理に至っては、学園のある首都の高級レストレンでもでてこないような極上のコースが振舞われ、エーコですら感激してイブとともに涙を流すほどだった。ケイとギギギはおしゃベりそっちのけで、出される料理を付き添えのパンを使って汁まで残さず平らげていた。ロームはハチャメチャな会食を始終笑いながら取り仕切り、パンがなくなれば給仕を呼び、水がなくなれば手ずから水差しを傾けて回った。祝勝会と題した食事会では結局まともにおしゃべりなんかできる雰囲気は訪れず、食後に向かった談話室でようやくゆっくりした時間が流れた。談話室は部屋の各所に仕込まれた魔術灯を間接照明に使った落ちつく場所で、思い思いにソファーにのびていた。
「ロームさまあ、どうしてこんなによくしてくれるんですかあ? 裏でもあるんですかあ? あ、女子の水着が見たかったとか?」
「なんだケイ気持ち悪い、様なんてやめろよ。うちの女性陣の水着姿はビーチでも群を抜いていたが、むっつりなお前と違って俺はそんな破廉恥な思考は持ってないよ。強いて言うならただ遊びたかったのかな、学園にいるとどうしても競争意識やお前の生産活動に付き合わされるしな」
ケイは図星なのか恥ずかしそうに黙ってしまう、その代わりにイブがお礼をいった。
「ローム君、あらためてありがとう。貴族じゃない私やギギちゃん、ケイ君をこんな素敵なところに呼んでくれて。こんな素敵なドレス絶対に着ることなんかないと思ってたもん、本当に夢みたいで何とお礼をいったらいいのか。そもそも、いきなりエーコちゃんとローム君に無礼を働いた平民のケイ君や私と仲良くしてくれたことに感謝というか謝罪というか」
「イブちゃん卑下する必要は微塵もないわ、無礼なのは最初からケイだけよ。イブちゃんは最初から清く可愛く強かったわ。あの日そこの悪魔の雷から私を救ってくれたイブちゃんは本当に素敵だったわ。それからも素晴らしかったけど、イブちゃんみたいに他人のために何かをできる人間ってそういないと思うの。貴族社会にいるからかもしれないけど誰かを蹴落とすのが当たり前、損切り上等な人間関係に疲れ切っていた私への救いだと思ったわ。こちらこそお礼を言いたいわ、仲良くしてくれてありがとう」
そんなエーコの赤裸々な告白に乗せられたのか、ロームも語り始めた。
「エーコの言う通りだ、俺は周りにサリンダー家の嫡子としか見らえて来なかった。それが貴族社会においての絶対的正解だし、恩恵には預かっているけどロームって男はなんなんだっていう思いがずっと胸にあった。だって魔術や政治経済や教養を磨き、いくらいい成績を収めてもさすがサリンダー家次期当主としか言われないんだ。それが入学してみたらどうだ、平民のケイやイブさんは自然体で悠々と俺らを超えてみせた。血筋や権力なんか気にせずに、自分の力を自分が思ったように振るう、そんな自由な魔術に俺の心も救われたんだと思う、イブさん、ケイ俺らと出会ってくれて本当にありがとう」
エーコとロームの真摯な言葉にケイは気恥ずかしそうにしているし、イブは驚きのあまり涙をうっすらうかべていた。そして二人の気持ちを代弁するようにケイが控えめな声量で話し始めた。
「貴族の事は分からないけど、エーコとロームがいなければ僕とイブは学園で荒れていたと思う。ロームは見てるだろうが、入学初日のゴランみたいなちょっかい出してくる奴らを血祭りにあげることを延々続けていただろうな。それにイブは昔から僕とつるんで魔術に明け暮れてたせいで、友達ができなかったからエーコが友達になってくれて本当に良かったと感謝している。こちらこそ、ありがとうだ」
ケイは言い終わると恥ずかしそうにそっぽを向いてしまう。だがその先にはギギギがまっすぐな瞳で見つめていた。
「ケイハ私ノコトモ助ケテクレタ、亜人ダッテイッテモ構ワズダンジョン同好会ニ遊ビニ来タ。石モ自分デトルカラ場所ダケ教エロッテ、ギギニ最初カラ優シカッタ。イブニ紹介シテクレタノモ、エーコトロームニ紹介シテクレタノモケイ。コンナ素晴ラシイコトアルナンテ思ッテカッタ、アリガトウ」
ギギギがゆっくりと言い終わると、ケイは顔を真っ赤にして天井を仰いで、顔を隠した。どんな感情かは分からないが、ケイはみんなに囲まれながら暖かい涙を一人流した。皆はいつものケイらしからぬ素直さにニヤニヤと微笑みあった。
それからケイが再起することはなく、空いた手でしっしっと人払いするので気を使ったエーコトとイブとギギギは女部屋へと退散した。ロームは少しすると窓を開け夜の空気をいれながら、どこからか持ってきた高そうな酒瓶とグラスをケイの前に置いて飲み始め夜は更けていった。
「砂漠のリゾート “ザ・フラワーシティ”にある別荘に遊びに来ませんか? お客様の心をときめかせる用意があります、さあどうぞ砂漠の楽園へ! だと、どうする?」
ケイが胡散臭そうにメッセージを読んだ。エーコが貴族でも普通は泊まれない様なリゾート地だと補足すると、途端にケイもイブもギギギも目を輝かせ、その日の内にエーコの実家アクエリウス家の馬車で砂漠のリゾートを目指すことになった。そしてロームと合流して5人となったケイたちは“海”に来ていた。目の前に広がる海を前にケイは隣に立つロームに素直に驚きを伝えた。
「本当にあったんだな海、というかここは本当にあのザ・フラワーの真下なのか?」
ロームは驚くケイを見ると嬉しそうに答えた。
「ケイでも驚くんだな、いやぁうれしいよ。ここは間違いなくザ・フラワーの下にある超巨大空洞だよ。水底に広がる岩塩層が塩水を、ザ・フラワーの主根の吸排が波を作り出す奇跡のビーチさ。砂と太陽にはこと困らないから一年中を通してリゾートシーズンなんだが、夏は逆に閑散期なんで一学期の慰労にどうかと思ってな。」
「いや一番苦労してたのはロームだと思うんだが。まあ最近バタバタしてゆっくり話をする間もなかったからちょうどいいか。」
「決勝終わったと思ったら、すり替え事件やらギギギ先輩やらイブさんに吹き飛ばされたりやら全部ケイ絡みなんだがな。お、話をすればイブさん達来たぞ!」
ロームが浜辺に直結のログハウスから出てくる女性陣に爽やかに手を振った。エーコ、イブ、ギギギは三者三様の水着に身を包み、ビーチへと向かっている。低身長でスレンダーなイブは、少し布地多めだが上下で別れた白色の水着を恥ずかしそうに手で隠している。ギギギは小麦色の肌を強調するように黒系の上下つながった水着をまとっているが、逆にその豊満なバストが寄せて上げられ強調されていた。エーコは赤色の上下が別れた機能的なデザインの水着をまとっている。そんな3人を臆することなく、礼儀だと言わんばかりに褒めるロームにケイは尊敬の念を感じずにはいられなかった。
「皆とてもお似合いだよ。ビーチのトップスリーは頂いたといっても過言じゃないんじゃないかい? そう思うだろケイ?」
「あ、ああ、そうだな大変お美しいな、はははは」
「ケイ、あんまりだらしない顔でイブちゃんとギギちゃんのこと見てると岩盤まで沈めるわよ?」
「あんまりケイをいじめるなよエーコ。きっとこういうのに慣れてないんだろ、さあそんなことより泳ごうぜ」
ケイをかばうように皆に提案するロームの言葉に従い、海へと歩き始めた。ケイはめちゃくちゃロームに感謝した。
~*~*~*~
僕は現在海に浮かんで頭を冷やしている。沖ではロームがガチで泳いでいるし、水面が膝上あたりにくる浅瀬ではイブとエーコとギギギが水におっかなびっくりとはしゃいでいる。いやそれにしてもこの世界の体の成長は早いと思う。10歳にしては身長も体つきも前世の女子高校や大人顔負けで、やっぱり過酷な環境がそうさせるのかなとか考えてしまう。いや実際考えてるのは、その刺激的な水着姿なんだけど。
「おおい、覗きか? エーコに殺されるぞ?」
「うへえっ?! ・・・なんだロームか、驚かすなよな。」
「イブさんはスレンダーだが持ち前の美肌と合わさって白い水着が神々しいな。新手のライバルのギギギ先輩もいるしケイの前でちょっと大胆な水着で攻めて見ましたってところか。ギギギ先輩は多分エーコに着せて貰ったんだろうが、胸元をしっかり隠すデザインにしたことで逆に強調するという引き算のテクニックだな。イブさんとは違った長くて肉付きのいい肢体が僕気になりますといったところか、ケイ?」
「おい、分析をありがとう。ほとんどあってるけど、頼むから黙っててくれよ。」
「“エーコもなかなか胸があるし、引き締まった腹筋や太ももとかやばいなぁ、正面切って見れないな僕”といったところか、本当にむっつりだなケイは」
「・・・うるせえ僕は純情なんだよ、それに前もいったけど前世の世界なら10歳過ぎなんてまだ子供なんだよ。途中までそうなるもんだと思ってたんだから慣れないんだよ」
「ケイは記憶を引き継いだだけで、この世界に生きているじゃないか、もう少し適応してもいいんじゃないか? 貴族なんて12歳超えたら結婚、出産を迎えるやつだって少なくないぞ。」
そんなことを話していると、海に慣れたのかイブ達もゆらゆら浮いているケイの所へと泳いでくる。
「ケイ君! 海ってすごいねっ、水がこんな塩辛いしこんな高い波誰が起こしてるんだろ?」
そんなことを言いつつイブはケイの直ぐ近くまでやってきた。
「いや本来は月の引力によってたが、この波はザ・フラワーの生命活動のせいであってな・・・」
水で濡れた髪をおでこにピシッとかき分けてて、いつもと違い艶かしい雰囲気のイブにケイはイブを直視できていない。そんな実はウブな幼馴染に気を大きくしたのか、イブがちょっと大きめの波が来たタイミングに合わせてケイへと抱きつく。
「ごめんケイ君! 波が強くて、ちょっと掴まっててもいい?」
しょっぱそうな顔をしながらケホケホとしながらイブはケイの腕を両腕を抱くようにして抱きついた。当然、イブの控えめな膨らみがケイの二の腕を包む。厚布一枚で覆われただけの成熟途中といった絶妙な柔らかさがケイの背筋に電流を流した。そんな二人の様子を見ていたギギギが、水に浮かぶほど立派な膨らみを前面に押し出しながら犬かきでケイの空いている腕を急襲した。
「イブズルイ! ギギニハ駄目言ッタノニ、自分ハOK!」
ギギギの小麦色の弾力のある膨らみにすっぽり挟まれたケイの細腕は幸せの余り感覚が消えそうだった。両腕に水を弾く乙女の柔肌の感触を受けてケイの我慢は限界に達した。
「アクアビイイイイイイイっム!」
ケイの後方に激流が現れ、鳥が飛んでいくような速度で沖へ向かってすっ飛んでいった。水面を水切りしながら進む姿はまるでトビウオのようだったとロームは語る。
1時間後、頭を冷やしたのかすっきりした顔で帰ってきたケイをむかえた一同は、また明日も来ようと刺激的な海遊びを振り返りながらロームの屋敷へと戻った。
屋敷へ戻ると、5人は用意されていた男湯女湯へと通され、砂やら塩水、体の疲れを綺麗に落とした。その後はいつの間にか用意されていたラフだが気品ある衣装に身を包んだ。ロームとケイは、真っ白なシャツと真っ白な皮のズボンに、エーコとイブとギギギは真っ白なイブニングドレスに身にまとい大食堂で食事となった。美しい大理石で作られた白亜の空間は、その高い天井からシャンデリアが吊るされ、部屋の隅に置かれたチェロのような弦楽器からは会話を邪魔しない程度の心地よい音楽が奏でられた。料理に至っては、学園のある首都の高級レストレンでもでてこないような極上のコースが振舞われ、エーコですら感激してイブとともに涙を流すほどだった。ケイとギギギはおしゃベりそっちのけで、出される料理を付き添えのパンを使って汁まで残さず平らげていた。ロームはハチャメチャな会食を始終笑いながら取り仕切り、パンがなくなれば給仕を呼び、水がなくなれば手ずから水差しを傾けて回った。祝勝会と題した食事会では結局まともにおしゃべりなんかできる雰囲気は訪れず、食後に向かった談話室でようやくゆっくりした時間が流れた。談話室は部屋の各所に仕込まれた魔術灯を間接照明に使った落ちつく場所で、思い思いにソファーにのびていた。
「ロームさまあ、どうしてこんなによくしてくれるんですかあ? 裏でもあるんですかあ? あ、女子の水着が見たかったとか?」
「なんだケイ気持ち悪い、様なんてやめろよ。うちの女性陣の水着姿はビーチでも群を抜いていたが、むっつりなお前と違って俺はそんな破廉恥な思考は持ってないよ。強いて言うならただ遊びたかったのかな、学園にいるとどうしても競争意識やお前の生産活動に付き合わされるしな」
ケイは図星なのか恥ずかしそうに黙ってしまう、その代わりにイブがお礼をいった。
「ローム君、あらためてありがとう。貴族じゃない私やギギちゃん、ケイ君をこんな素敵なところに呼んでくれて。こんな素敵なドレス絶対に着ることなんかないと思ってたもん、本当に夢みたいで何とお礼をいったらいいのか。そもそも、いきなりエーコちゃんとローム君に無礼を働いた平民のケイ君や私と仲良くしてくれたことに感謝というか謝罪というか」
「イブちゃん卑下する必要は微塵もないわ、無礼なのは最初からケイだけよ。イブちゃんは最初から清く可愛く強かったわ。あの日そこの悪魔の雷から私を救ってくれたイブちゃんは本当に素敵だったわ。それからも素晴らしかったけど、イブちゃんみたいに他人のために何かをできる人間ってそういないと思うの。貴族社会にいるからかもしれないけど誰かを蹴落とすのが当たり前、損切り上等な人間関係に疲れ切っていた私への救いだと思ったわ。こちらこそお礼を言いたいわ、仲良くしてくれてありがとう」
そんなエーコの赤裸々な告白に乗せられたのか、ロームも語り始めた。
「エーコの言う通りだ、俺は周りにサリンダー家の嫡子としか見らえて来なかった。それが貴族社会においての絶対的正解だし、恩恵には預かっているけどロームって男はなんなんだっていう思いがずっと胸にあった。だって魔術や政治経済や教養を磨き、いくらいい成績を収めてもさすがサリンダー家次期当主としか言われないんだ。それが入学してみたらどうだ、平民のケイやイブさんは自然体で悠々と俺らを超えてみせた。血筋や権力なんか気にせずに、自分の力を自分が思ったように振るう、そんな自由な魔術に俺の心も救われたんだと思う、イブさん、ケイ俺らと出会ってくれて本当にありがとう」
エーコとロームの真摯な言葉にケイは気恥ずかしそうにしているし、イブは驚きのあまり涙をうっすらうかべていた。そして二人の気持ちを代弁するようにケイが控えめな声量で話し始めた。
「貴族の事は分からないけど、エーコとロームがいなければ僕とイブは学園で荒れていたと思う。ロームは見てるだろうが、入学初日のゴランみたいなちょっかい出してくる奴らを血祭りにあげることを延々続けていただろうな。それにイブは昔から僕とつるんで魔術に明け暮れてたせいで、友達ができなかったからエーコが友達になってくれて本当に良かったと感謝している。こちらこそ、ありがとうだ」
ケイは言い終わると恥ずかしそうにそっぽを向いてしまう。だがその先にはギギギがまっすぐな瞳で見つめていた。
「ケイハ私ノコトモ助ケテクレタ、亜人ダッテイッテモ構ワズダンジョン同好会ニ遊ビニ来タ。石モ自分デトルカラ場所ダケ教エロッテ、ギギニ最初カラ優シカッタ。イブニ紹介シテクレタノモ、エーコトロームニ紹介シテクレタノモケイ。コンナ素晴ラシイコトアルナンテ思ッテカッタ、アリガトウ」
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それからケイが再起することはなく、空いた手でしっしっと人払いするので気を使ったエーコトとイブとギギギは女部屋へと退散した。ロームは少しすると窓を開け夜の空気をいれながら、どこからか持ってきた高そうな酒瓶とグラスをケイの前に置いて飲み始め夜は更けていった。
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disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
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