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1.20歳~21歳
気持ちのいい目覚めと疑いのステップワン
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珍しく陽の差す明かりで目が覚める。
最近はすっかり明るくなってから就寝、夕方頃に起きてくる生活だったからか、寝ぼけた頭では違和感を強く感じてしまう。
早い時間に起きた、とは言っても時刻は昼前で、
両親は仕事に出かけていた。
ようやく身体を起こして、開きっぱなしだったパソコンに目をやる。
そうだ、寝落ち通話だったんだ。
「俺は学校あるからそろそろおちるね、ゆっくり寝てて!」
そんなメッセージを添えて、通話は切られていた。
彼のログインアイコンは退席中になっている。
昨日は結局、どこまで話したんだっけ。
確か彼は、工業系大学の三年生だと言っていた。
私には縁のない響きだ。
中学はまともに行っていなかったし、夜間定時制の高校も三年目の秋に退学した。
それから二年の間に、結婚も離婚も経験した。
思い出したら頭痛がしてきた。
過去にいい思い出なんかない。
そんな事より彼だ。
今は彼の事を考えていればいい。
ある意味ではこれも、現実逃避なのかもしれない。
枕元に置いていた携帯のライトが、何かの通知でピカピカと点滅している。
ロックを解除してみると、彼からのチャットが届いていた。
そうだ、携帯で連絡できるように教えあったんだった。
「やっほー!起きた?」
一時間ほど前に来ていたものだった。
彼が今見れる状況かはわからないが、返事を送ってみる。
『おはよー。ちょっと寝すぎちゃった』
既読アイコンは表示されない。
今は手が離せないのか。
その後、朝食を用意し、動画を見ながら食べている時も、頭から彼の事が離れなかった。
なんてことだ。完全に恋ではないか。
でも同時に、警告アラートも鳴っている。
あれだけの女性リスナー、いわゆる「囲い」が居て、それだけの数をずっと囲わせる方法は二つ。
一つは、彼自身が本当に愛されるキャラで、みんな純粋に可愛がっているだけのパターン。
もう一つは、一人一人と裏で繋がっていて、リスナーみんなが「私は他のリスナーと違って彼の特別」だと思い込んでいるパターン。
もし後者なら、少なからず彼の策略の賜物である。
そんなのに引っかかる女は大体どこか抜けているはずだ。
言わずもがな、私は思いっきり引っかかっている。
自覚があるだけマシか・・・と、朝食のトーストを食べきったところで、携帯が震えた。
「おはよー!俺も朝寝坊しちゃって、遅刻するかと思ったよ。里香と通話つないでると、何か安心するっていうか」
もうすぐ飲み干そうとしていたコーヒーが気管に入りむせ返った。
な、なんなんだこいつは。やはり策士か。
こうやって特別感を持たせようとしてるのか。
・・・いや、やめよう。
最初から彼を疑うのは良くない。
もしかしたら本気でそう思ってくれているのかもしれないし。
こう考えるのは、何度も言うが私が学習しないからである。
最近はすっかり明るくなってから就寝、夕方頃に起きてくる生活だったからか、寝ぼけた頭では違和感を強く感じてしまう。
早い時間に起きた、とは言っても時刻は昼前で、
両親は仕事に出かけていた。
ようやく身体を起こして、開きっぱなしだったパソコンに目をやる。
そうだ、寝落ち通話だったんだ。
「俺は学校あるからそろそろおちるね、ゆっくり寝てて!」
そんなメッセージを添えて、通話は切られていた。
彼のログインアイコンは退席中になっている。
昨日は結局、どこまで話したんだっけ。
確か彼は、工業系大学の三年生だと言っていた。
私には縁のない響きだ。
中学はまともに行っていなかったし、夜間定時制の高校も三年目の秋に退学した。
それから二年の間に、結婚も離婚も経験した。
思い出したら頭痛がしてきた。
過去にいい思い出なんかない。
そんな事より彼だ。
今は彼の事を考えていればいい。
ある意味ではこれも、現実逃避なのかもしれない。
枕元に置いていた携帯のライトが、何かの通知でピカピカと点滅している。
ロックを解除してみると、彼からのチャットが届いていた。
そうだ、携帯で連絡できるように教えあったんだった。
「やっほー!起きた?」
一時間ほど前に来ていたものだった。
彼が今見れる状況かはわからないが、返事を送ってみる。
『おはよー。ちょっと寝すぎちゃった』
既読アイコンは表示されない。
今は手が離せないのか。
その後、朝食を用意し、動画を見ながら食べている時も、頭から彼の事が離れなかった。
なんてことだ。完全に恋ではないか。
でも同時に、警告アラートも鳴っている。
あれだけの女性リスナー、いわゆる「囲い」が居て、それだけの数をずっと囲わせる方法は二つ。
一つは、彼自身が本当に愛されるキャラで、みんな純粋に可愛がっているだけのパターン。
もう一つは、一人一人と裏で繋がっていて、リスナーみんなが「私は他のリスナーと違って彼の特別」だと思い込んでいるパターン。
もし後者なら、少なからず彼の策略の賜物である。
そんなのに引っかかる女は大体どこか抜けているはずだ。
言わずもがな、私は思いっきり引っかかっている。
自覚があるだけマシか・・・と、朝食のトーストを食べきったところで、携帯が震えた。
「おはよー!俺も朝寝坊しちゃって、遅刻するかと思ったよ。里香と通話つないでると、何か安心するっていうか」
もうすぐ飲み干そうとしていたコーヒーが気管に入りむせ返った。
な、なんなんだこいつは。やはり策士か。
こうやって特別感を持たせようとしてるのか。
・・・いや、やめよう。
最初から彼を疑うのは良くない。
もしかしたら本気でそう思ってくれているのかもしれないし。
こう考えるのは、何度も言うが私が学習しないからである。
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