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1.20歳~21歳
一肌脱ぐ大会なら地区大会くらいには出れる早さ
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雑談放送、と書かれていた。
コメントの勢いは程よい。
少なすぎては無言が続くし、多すぎては生放送特有の「放送主との会話」が成り立たない。
途中参加の私には何の話をしているのかさっぱりわからなかったが、控えめのBGMと優しい語り口が心地いい。
タイミングを見て、コメントを送信する。
『初見です@海』
他のコメントに紛れて画面を横切る。
一呼吸置いて、放送主は私のコメントに気がついた。
「初見さんいらっしゃい、うみさん、ですか?」
読みを確認しているその声は、間違いなく私に向けられた物だった。
短く、はい、と返信し、私は頭を抱えた。
あまりにも、声が好みのタイプすぎた。
どタイプ。どストレート。
少し高めの、でも嫌な高音ではない、落ち着きもある。
桃の香りのサイダーのような・・・例えが下手すぎる。
甘いけど、甘すぎない、爽やかさの残るそんな声だった。
それだけなら頭を抱える程ではなかった。
この短いやり取りで、私は思い出したくもない過去を思い出したのだ。
声に惹かれてホイホイ釣られ、黒歴史を積み重ねた回数は数え切れない・・・数えたくないの方が近い。
まだだ、まだ確認するべき事はたくさんある。
一つ大きく深呼吸をして、画面に視線を戻す。
彼は「メガネ」と名乗っているらしい。
今いるリスナーのほとんどは常連のようだ。
「じゃあうみさん、自己紹介とお近づきを兼ねて、水着写メください!!」
私はまた頭を抱える事になった。
なんとこの男、下ネタまでも平気で言ってのける。
私のまるで下ネタのような人生の中で、下ネタに対する抵抗がないかどうかはかなりの重要ポイントと言っても過言ではない。
顔を覆った手の隙間から画面を覗くと、常連リスナーから総ツッコミを受けている。
やれダメガネだの、エロメガネだの、それに対して彼もまたケタケタと笑っている。
なるほど、彼はこういうキャラで通っているのか。
「みんなも送ってくれていいんだよ?ほらほら、あ、うみさん、これ俺のIDね、ここに送って!!」
そう言い放つや、またリスナーから変態メガネその他諸々のコメントが一斉に流れていく。
徐々に空気を掴んできた。
彼はこういうキャラでこのコミュニティを育ててきたのだ。
ならば、と、私はキーボードに手を伸ばす。
常連による、「初見さん帰っちゃったんじゃない?」というコメントのすぐ後に、私は勢いよく文字を叩き込み送信した。
『水着ないんで、下着でいいですか?』
また一呼吸置いて、彼は反応した。
「マジで!?!?ま、待ってます!!」
彼の反応から少しして、コメントが一気に流れる。
初見さんそんなに頑張らなくていいよ、とか、
何て事をさせるんだクソメガネ、とか、
おおおおおちおちちおちつけ、のようなむしろお前が落ち着けよコメントなど。
もう私は頭を抱えなかった。
そして学習もしていなかった。
売り言葉に買い言葉、私のやる気スイッチは触れやすく、故意に触ろうとすれば逃げていくような、天邪鬼なシステムになっているようだ。
こうして私は文字通り、一肌脱いだのである。
コメントの勢いは程よい。
少なすぎては無言が続くし、多すぎては生放送特有の「放送主との会話」が成り立たない。
途中参加の私には何の話をしているのかさっぱりわからなかったが、控えめのBGMと優しい語り口が心地いい。
タイミングを見て、コメントを送信する。
『初見です@海』
他のコメントに紛れて画面を横切る。
一呼吸置いて、放送主は私のコメントに気がついた。
「初見さんいらっしゃい、うみさん、ですか?」
読みを確認しているその声は、間違いなく私に向けられた物だった。
短く、はい、と返信し、私は頭を抱えた。
あまりにも、声が好みのタイプすぎた。
どタイプ。どストレート。
少し高めの、でも嫌な高音ではない、落ち着きもある。
桃の香りのサイダーのような・・・例えが下手すぎる。
甘いけど、甘すぎない、爽やかさの残るそんな声だった。
それだけなら頭を抱える程ではなかった。
この短いやり取りで、私は思い出したくもない過去を思い出したのだ。
声に惹かれてホイホイ釣られ、黒歴史を積み重ねた回数は数え切れない・・・数えたくないの方が近い。
まだだ、まだ確認するべき事はたくさんある。
一つ大きく深呼吸をして、画面に視線を戻す。
彼は「メガネ」と名乗っているらしい。
今いるリスナーのほとんどは常連のようだ。
「じゃあうみさん、自己紹介とお近づきを兼ねて、水着写メください!!」
私はまた頭を抱える事になった。
なんとこの男、下ネタまでも平気で言ってのける。
私のまるで下ネタのような人生の中で、下ネタに対する抵抗がないかどうかはかなりの重要ポイントと言っても過言ではない。
顔を覆った手の隙間から画面を覗くと、常連リスナーから総ツッコミを受けている。
やれダメガネだの、エロメガネだの、それに対して彼もまたケタケタと笑っている。
なるほど、彼はこういうキャラで通っているのか。
「みんなも送ってくれていいんだよ?ほらほら、あ、うみさん、これ俺のIDね、ここに送って!!」
そう言い放つや、またリスナーから変態メガネその他諸々のコメントが一斉に流れていく。
徐々に空気を掴んできた。
彼はこういうキャラでこのコミュニティを育ててきたのだ。
ならば、と、私はキーボードに手を伸ばす。
常連による、「初見さん帰っちゃったんじゃない?」というコメントのすぐ後に、私は勢いよく文字を叩き込み送信した。
『水着ないんで、下着でいいですか?』
また一呼吸置いて、彼は反応した。
「マジで!?!?ま、待ってます!!」
彼の反応から少しして、コメントが一気に流れる。
初見さんそんなに頑張らなくていいよ、とか、
何て事をさせるんだクソメガネ、とか、
おおおおおちおちちおちつけ、のようなむしろお前が落ち着けよコメントなど。
もう私は頭を抱えなかった。
そして学習もしていなかった。
売り言葉に買い言葉、私のやる気スイッチは触れやすく、故意に触ろうとすれば逃げていくような、天邪鬼なシステムになっているようだ。
こうして私は文字通り、一肌脱いだのである。
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