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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(後編)
28.フレポジ夫人と最強の男
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会場は静寂に包まれていた…
『黒の卵』から魔力が放たれ邪悪な気配が漂うのだが、それだけ…
フィフティフは何かをしたかったのだろうが、いつまでたっても何も起きず会場の人間全員が首を傾げる状況であった。
しばらくして、何も起こらない事に焦ったフィフティフはケヴィンに対して怒鳴ってきた。
「な…なんだこれは!貴様なにかしたのか!?」
「いや、俺に聞かれても…」
フィフティフがケヴィンを疑ってくるが当然そんな物は知らない。
なので答えながらも謎の美女に何ともないかを確かめるために手を握る。
「何とも無いか?」
「は、はい…ケヴィン様は?」
「ああ、お陰様で俺は平気だ」
エルシャはホッとしながらもそんなケヴィンに対して頬を染めてしまっていた。
手を擦りながらも身を案じてくれる夫、勿論これが100%善意から来ているのではなく80%くらいは下心である事は理解している。
だが、それはこの目の前の紳士が間違いなく夫である証拠であり、それに心配されるというのはやはり嬉しい物なのだ。
ふと、視線を感じそちらの方へ眼をやると、そこには自分の顔をした妻役の女性がムスッとした顔でこちらを見ていた。
なにもそんなに睨まなくても…
そんな風に思いつつも彼女を和ませるために笑顔を振りまいてあげる事にした。
(笑顔…笑顔…)
………フッ。
その瞬間、エルシャルフィールの顔は今にも詰め寄って来そうな怒りの表情への変わった。
おっと、イケナイイケナイ。
あまりにもやられっぱなしだったため、思わず意趣返しをしてしまった。
しかし、そんな二人の高度なアイコンタクトを邪魔するようにフィフティフが怒鳴り散らす。
「おい、これは一体どういうことだ!『薔薇』をケヴィンに身に着けさせたはずではなかったのか!?」
その言葉に、目をバチバチさせていた二人の美女は声の主を同時に睨みつける。
「あらぁ?一体どうしたのかしら…もしかして不良品だったの?」
「そんなわけがあるか!一体どうなって…!?」
「どうもこうも、単に失敗しただけでしょう?
もぅ…折角頑張って手伝ってあげたのに」
エルシャルフィールはため息一つ、そして…
「もういいわ…これ以上はお姫様が狼になって噛み付みついて来そうだから」
言うとパチンッ!!と指を鳴らした。
ポンッ…!ポンッ…!ポンッ…!ポンッ…!
「キャッ!」
指の音を合図にパーティ客の胸に着いたブローチが次々に破裂して花びらが舞い散った。
エルシャの手の中にあったソレも同様で突然の事に思わず声をあげてしまうほど。
邪悪な気配が漂う空間でなにかの演出なのかと勘違いしてしまいそうな場違いな花吹雪…
「こ…れは…お前まさか!!」
「無能がいくら命を賭けた所で無駄死にだったみたいね」
舞い散る花びらの中でフィフティフが怒りに震えギリギリと歯を鳴らす…
長年練り続けた計画が目の前の女に一瞬で灰にされたのだ、その屈辱と怒りは計り知れない物であった。
そして、それを嘲笑るエルシャルフィール…
だが、この状況に至ってもなお理解が出来てないのはエルシャの夫…
「え…どうゆうこと?」
愕然とした表情で二人のエルシャはケヴィンを見つめる。
「ケヴィン様まだ気が付いてないんですか?」
エルシャが何かに気付いて欲しいとエルシャルフィールの方を指差す…が。
「へ…?…ハッ!もしかして、前髪少し切ったとか!?」
女性に気づかいが出来ても、女性の嘘は全く見抜けない間抜けな羊に二人は絶望しかなかった。
流石にこの状況ともなればエルシャが彼女が誰であるかを隠す必要はないだろうと、この残念な夫に対して仕方なくも答えを教える事にした。
「ケヴィン様…エルシャルフィールは私、そして彼女は…」
その言葉を言い終わる前にエルシャルフィールの周りに激しい風が吹き荒れ花びらが舞い散る。
一瞬人々の目が遮られたかと思えば、次の瞬間そこにいたのは別人であった。
仮面の美女…『怪盗カルディエ』
「カ…カ…カルディエ!!なんでお前がココに!?」
「お久しぶりねぇ、ケヴィン様」
世界の全てを嘲るような態度で現れた美女…
それに対して百点満点のリアクションを見せるのがエルシャの夫のケヴィンであった。
「カルディエ…貴様がこれをやったのか?」
「まあ、そうゆう事になるわねぇ…
あの変なブローチ全部取り換えるの大変だったんだから、ケヴィン様が皆と仲良しで助かったわ~。
あ、ちゃんとカードは送ったわよ?皇女様宛にだけど」
「何故貴様の様なコソ泥がケヴィンに味方をする!」
「何故って…」
聞かれたカルディエはふとエルシャと目があうと一言…
「たまたま?」
そのたまたまで夫を盗まれたエルシャは頬をヒクつかせてしまう。
だがそれ以上に怒りに震えているのがフィフティフであった。
「ま、まあ、なんだかよくわからんが、とりあえずお前の計画は失敗したってわけだ。
サッサとお縄につくんだな…」
それを言って目の前の人間がはいそうですかと観念するとは思えないのだが…
でなければ邪教信者などやってはいない。
「ふざけるな!!私はこの命を賭けてでもやり遂げると決めているのだ!」
「命を賭けるって…ジェジルじいさんの身体を使ってか?」
フィフティフの言葉に今まで平静を保って聞いていたケヴィンも我慢が出来なくなっていた。
エルシャは普段のケヴィンが発している腑抜けた軽薄なオーラとは違う殺気に満ちた気配に気圧され一歩身を引いた。
その気配の意味は武術など全く触れた事の無いエルシャでもわかる…
これから戦いが始まるのだと。
対するフィフティフも一瞬その気配に身じろぎするが、再び余裕の表情へと戻っていく。
「クックック…カルディエにまんまと嵌められたようだが、こちらにはまだ『黒の卵』が残っている。
コーデリア皇女を葬る所を確認できなくなるのは残念だが最早手段を選んでもいられないからな」
そう言ってフィフティフは『黒の卵』を掲げた。
「おいやめろ!」
ケヴィンの制止の声と同時に、カルディエが小さな金属針を投げつけ阻止を計る。
しかし、それはパァン!と障壁の様なものに弾かれてしまった。
既に『黒の卵』の魔力がフィフティフの身体にまとわりついていたのだ。
「一体これは…!?」
「チッ…『黒の卵』ってのは魔力の塊って使い方も出来るんだが、本来の目的は実は違う物だったりするんだ」
「違う目的?」
「ああ、かつて人間達を滅亡寸前まで苦しめたと伝えられる邪神の下僕…そいつの召喚だ」
「なんて事を…」
フィフティフの周りを暗闇の渦が取り巻く中、邪神の聖域に閉じ込められたパーティー客は一か所に集められ警備の兵たちがそれを護衛する形になっていた。
また、コーデリア皇女も同様に近衛兵たちに護衛され既に後ろに下がっている。
そして、残りの兵がフィフティフに対応するための陣を敷いていた。
邪神の聖域のせいで数はさほど多くもなく、卵の魔物相手に数が通用するかは相手次第…大抵は質が要求されるだろう。
ケヴィンとしては皇室警護の人材であれば一流の騎士であってほしいと願う事しか出来ない。
………そして邪悪な霧がはれソレが現れた。
「顔の無い魔物…」
「なんなんだありゃ…あんま強そうじゃないな」
「そうねぇ…」
「何を言っているのですか!聖典にも記述がありますでしょう!?」
「え…あ、はい…えーっとたしか~…エルシャさん?」
「え、私?…いやいや…ここはほら、自称エルシャ様の出番でしょう!」
ため息とともに答えを出すエルシャ。
「顔の無い魔物、千の悪魔の一体…『鏡の悪魔』、あの姿は仮の物です」
「仮?…んじゃあ、本性はまた別なのか?」
「はい…伝承ではその本性は人の心の中にある最強の存在と言われております」
「なるほど全然わからん」
ケヴィンが眉をひそめるが、エルシャにはそれを咎める余裕もなかった。
「つまり…この会場にいる人々が最も強いと思っている存在こそが、あの『鏡の悪魔』の本性となるのです」
………
………
………
「お、おいおい…それってもしかして…」
「マズいわ!!」
わかってくれた…のは良いのだが、今度はエルシャが眉をひそめる番である。
ケヴィン達が理解した瞬間に訪れた反応は、分かり易く恐慌であった…
会場中に叫び声が上がっているのだ。
そして、突然ライムがパーティー会場中に声をあげた。
「この世界の最強の存在はダンゴムシ!!!いいですね、皆さん!!!ダンゴムシです!!!!」
会場中の人間皆が必死に「「「ダンゴムシ最強、ダンゴムシ最強、ダンゴムシ最強」」」と唱え始めるのだが…
どうやら『鏡の悪魔』はその咄嗟の機転には応えてはくれないらしい。
その姿を変えていく…
「わぁ~素敵なダンゴムシ…」
「現実逃避乙」
「ああ…オワタ…」
「どうすんだよこれ…???」
会場中から諦めの様な声が上がる。
招待客の一部などは結界の壁を何とか壊そうとし始めていた。
「よりにもよってアイツが敵かよ…」
「知ってた…」
頭を抱えるケヴィンとカルディエ…
この空間で状況が飲み込めないのはエルシャ一人だろう。
「あの…彼は一体…?」
そこに佇んでいたのはいかにも人畜無害そうな顔を浮かべた黒髪の青年。
あれが最強の存在と言われても全くピンとこないエルシャである。
「ああ、エルシャにはまだ紹介してなかったな…
あれが最強のダンゴムシこと『黄金の稲穂』のリーダー」
ケヴィンは諦めたように呟く。
「ヒイロだ…」
『黒の卵』から魔力が放たれ邪悪な気配が漂うのだが、それだけ…
フィフティフは何かをしたかったのだろうが、いつまでたっても何も起きず会場の人間全員が首を傾げる状況であった。
しばらくして、何も起こらない事に焦ったフィフティフはケヴィンに対して怒鳴ってきた。
「な…なんだこれは!貴様なにかしたのか!?」
「いや、俺に聞かれても…」
フィフティフがケヴィンを疑ってくるが当然そんな物は知らない。
なので答えながらも謎の美女に何ともないかを確かめるために手を握る。
「何とも無いか?」
「は、はい…ケヴィン様は?」
「ああ、お陰様で俺は平気だ」
エルシャはホッとしながらもそんなケヴィンに対して頬を染めてしまっていた。
手を擦りながらも身を案じてくれる夫、勿論これが100%善意から来ているのではなく80%くらいは下心である事は理解している。
だが、それはこの目の前の紳士が間違いなく夫である証拠であり、それに心配されるというのはやはり嬉しい物なのだ。
ふと、視線を感じそちらの方へ眼をやると、そこには自分の顔をした妻役の女性がムスッとした顔でこちらを見ていた。
なにもそんなに睨まなくても…
そんな風に思いつつも彼女を和ませるために笑顔を振りまいてあげる事にした。
(笑顔…笑顔…)
………フッ。
その瞬間、エルシャルフィールの顔は今にも詰め寄って来そうな怒りの表情への変わった。
おっと、イケナイイケナイ。
あまりにもやられっぱなしだったため、思わず意趣返しをしてしまった。
しかし、そんな二人の高度なアイコンタクトを邪魔するようにフィフティフが怒鳴り散らす。
「おい、これは一体どういうことだ!『薔薇』をケヴィンに身に着けさせたはずではなかったのか!?」
その言葉に、目をバチバチさせていた二人の美女は声の主を同時に睨みつける。
「あらぁ?一体どうしたのかしら…もしかして不良品だったの?」
「そんなわけがあるか!一体どうなって…!?」
「どうもこうも、単に失敗しただけでしょう?
もぅ…折角頑張って手伝ってあげたのに」
エルシャルフィールはため息一つ、そして…
「もういいわ…これ以上はお姫様が狼になって噛み付みついて来そうだから」
言うとパチンッ!!と指を鳴らした。
ポンッ…!ポンッ…!ポンッ…!ポンッ…!
「キャッ!」
指の音を合図にパーティ客の胸に着いたブローチが次々に破裂して花びらが舞い散った。
エルシャの手の中にあったソレも同様で突然の事に思わず声をあげてしまうほど。
邪悪な気配が漂う空間でなにかの演出なのかと勘違いしてしまいそうな場違いな花吹雪…
「こ…れは…お前まさか!!」
「無能がいくら命を賭けた所で無駄死にだったみたいね」
舞い散る花びらの中でフィフティフが怒りに震えギリギリと歯を鳴らす…
長年練り続けた計画が目の前の女に一瞬で灰にされたのだ、その屈辱と怒りは計り知れない物であった。
そして、それを嘲笑るエルシャルフィール…
だが、この状況に至ってもなお理解が出来てないのはエルシャの夫…
「え…どうゆうこと?」
愕然とした表情で二人のエルシャはケヴィンを見つめる。
「ケヴィン様まだ気が付いてないんですか?」
エルシャが何かに気付いて欲しいとエルシャルフィールの方を指差す…が。
「へ…?…ハッ!もしかして、前髪少し切ったとか!?」
女性に気づかいが出来ても、女性の嘘は全く見抜けない間抜けな羊に二人は絶望しかなかった。
流石にこの状況ともなればエルシャが彼女が誰であるかを隠す必要はないだろうと、この残念な夫に対して仕方なくも答えを教える事にした。
「ケヴィン様…エルシャルフィールは私、そして彼女は…」
その言葉を言い終わる前にエルシャルフィールの周りに激しい風が吹き荒れ花びらが舞い散る。
一瞬人々の目が遮られたかと思えば、次の瞬間そこにいたのは別人であった。
仮面の美女…『怪盗カルディエ』
「カ…カ…カルディエ!!なんでお前がココに!?」
「お久しぶりねぇ、ケヴィン様」
世界の全てを嘲るような態度で現れた美女…
それに対して百点満点のリアクションを見せるのがエルシャの夫のケヴィンであった。
「カルディエ…貴様がこれをやったのか?」
「まあ、そうゆう事になるわねぇ…
あの変なブローチ全部取り換えるの大変だったんだから、ケヴィン様が皆と仲良しで助かったわ~。
あ、ちゃんとカードは送ったわよ?皇女様宛にだけど」
「何故貴様の様なコソ泥がケヴィンに味方をする!」
「何故って…」
聞かれたカルディエはふとエルシャと目があうと一言…
「たまたま?」
そのたまたまで夫を盗まれたエルシャは頬をヒクつかせてしまう。
だがそれ以上に怒りに震えているのがフィフティフであった。
「ま、まあ、なんだかよくわからんが、とりあえずお前の計画は失敗したってわけだ。
サッサとお縄につくんだな…」
それを言って目の前の人間がはいそうですかと観念するとは思えないのだが…
でなければ邪教信者などやってはいない。
「ふざけるな!!私はこの命を賭けてでもやり遂げると決めているのだ!」
「命を賭けるって…ジェジルじいさんの身体を使ってか?」
フィフティフの言葉に今まで平静を保って聞いていたケヴィンも我慢が出来なくなっていた。
エルシャは普段のケヴィンが発している腑抜けた軽薄なオーラとは違う殺気に満ちた気配に気圧され一歩身を引いた。
その気配の意味は武術など全く触れた事の無いエルシャでもわかる…
これから戦いが始まるのだと。
対するフィフティフも一瞬その気配に身じろぎするが、再び余裕の表情へと戻っていく。
「クックック…カルディエにまんまと嵌められたようだが、こちらにはまだ『黒の卵』が残っている。
コーデリア皇女を葬る所を確認できなくなるのは残念だが最早手段を選んでもいられないからな」
そう言ってフィフティフは『黒の卵』を掲げた。
「おいやめろ!」
ケヴィンの制止の声と同時に、カルディエが小さな金属針を投げつけ阻止を計る。
しかし、それはパァン!と障壁の様なものに弾かれてしまった。
既に『黒の卵』の魔力がフィフティフの身体にまとわりついていたのだ。
「一体これは…!?」
「チッ…『黒の卵』ってのは魔力の塊って使い方も出来るんだが、本来の目的は実は違う物だったりするんだ」
「違う目的?」
「ああ、かつて人間達を滅亡寸前まで苦しめたと伝えられる邪神の下僕…そいつの召喚だ」
「なんて事を…」
フィフティフの周りを暗闇の渦が取り巻く中、邪神の聖域に閉じ込められたパーティー客は一か所に集められ警備の兵たちがそれを護衛する形になっていた。
また、コーデリア皇女も同様に近衛兵たちに護衛され既に後ろに下がっている。
そして、残りの兵がフィフティフに対応するための陣を敷いていた。
邪神の聖域のせいで数はさほど多くもなく、卵の魔物相手に数が通用するかは相手次第…大抵は質が要求されるだろう。
ケヴィンとしては皇室警護の人材であれば一流の騎士であってほしいと願う事しか出来ない。
………そして邪悪な霧がはれソレが現れた。
「顔の無い魔物…」
「なんなんだありゃ…あんま強そうじゃないな」
「そうねぇ…」
「何を言っているのですか!聖典にも記述がありますでしょう!?」
「え…あ、はい…えーっとたしか~…エルシャさん?」
「え、私?…いやいや…ここはほら、自称エルシャ様の出番でしょう!」
ため息とともに答えを出すエルシャ。
「顔の無い魔物、千の悪魔の一体…『鏡の悪魔』、あの姿は仮の物です」
「仮?…んじゃあ、本性はまた別なのか?」
「はい…伝承ではその本性は人の心の中にある最強の存在と言われております」
「なるほど全然わからん」
ケヴィンが眉をひそめるが、エルシャにはそれを咎める余裕もなかった。
「つまり…この会場にいる人々が最も強いと思っている存在こそが、あの『鏡の悪魔』の本性となるのです」
………
………
………
「お、おいおい…それってもしかして…」
「マズいわ!!」
わかってくれた…のは良いのだが、今度はエルシャが眉をひそめる番である。
ケヴィン達が理解した瞬間に訪れた反応は、分かり易く恐慌であった…
会場中に叫び声が上がっているのだ。
そして、突然ライムがパーティー会場中に声をあげた。
「この世界の最強の存在はダンゴムシ!!!いいですね、皆さん!!!ダンゴムシです!!!!」
会場中の人間皆が必死に「「「ダンゴムシ最強、ダンゴムシ最強、ダンゴムシ最強」」」と唱え始めるのだが…
どうやら『鏡の悪魔』はその咄嗟の機転には応えてはくれないらしい。
その姿を変えていく…
「わぁ~素敵なダンゴムシ…」
「現実逃避乙」
「ああ…オワタ…」
「どうすんだよこれ…???」
会場中から諦めの様な声が上がる。
招待客の一部などは結界の壁を何とか壊そうとし始めていた。
「よりにもよってアイツが敵かよ…」
「知ってた…」
頭を抱えるケヴィンとカルディエ…
この空間で状況が飲み込めないのはエルシャ一人だろう。
「あの…彼は一体…?」
そこに佇んでいたのはいかにも人畜無害そうな顔を浮かべた黒髪の青年。
あれが最強の存在と言われても全くピンとこないエルシャである。
「ああ、エルシャにはまだ紹介してなかったな…
あれが最強のダンゴムシこと『黄金の稲穂』のリーダー」
ケヴィンは諦めたように呟く。
「ヒイロだ…」
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