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第19話 タケル
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カヤはタケルの取り巻きの男に銃を没収された。
動揺して突っ立ったままの耕太にタケルが言う。
「ぼくたち、コータ様とカヤさんがマンションから逃げたすぐ後にタイムリープしました。そしたらミサキ先生、まだ微かに息してて、すぐにここに行けって」
カヤが顔をしかめる。
「ミサキ先生は前から言ってたんです。カヤさんはこの先の世界を信じているふりをして、本当は信じていないって。だからお父さんとお母さんの敵だって」
カヤは言った。
「この先の世界なんて嘘よ」
「うそじゃないよ。ちゃんとあるんだ。時間を操ってみんなが幸せになれる世界があるんだ」
「時間なんて操れないの。そんなことをしたらこの世界そのものがなくなっちゃうんだよ」
タケルはカヤを睨みつけて言った。
「いまカヤさん、時間を操ってるよね」
動揺しながらもカヤは答えた。
「これは何かのバグ。いつタイムパラッドックスが起きて時空が消滅するか分からないの」
カヤはサングラスに映る数値をタケルに見せて続けた。
「私の時間軸が正常ならタイムリミットは無限に増えていくはずなのに、なぜか止まったまま。何かのきっかけで急激にパラドックスに向かってもおかしくないの」
タケルはニヤリとし、言った。
「ぼくはだまされない。カヤさんは自分で好き勝手に時間を操ってこの世界を自分のものにするんだ」
ため息をつくカヤを、吉村が怪訝そうに見た。
耕太が状況を打破しようと、タケルに何か言おうとするが、先にタケルが言った。
「ぼく、許さないよ。だってカヤさん、ぼくのお父さんとお母さんを殺したじゃん」
耕太とカヤが弁明しようとした瞬間、タケルが手を上げた。その合図と共に男三人がカヤに向かって銃を向ける。咄嗟に内ポケットから銃を取った耕太が、タケルの取り巻きの男一人を撃つ。それに怯んだ他の男二人も、耕太は立て続けに撃ち抜いた。
取り乱すタケルに、耕太は言った。
「タイムリープが成立するのは誰かひとりの時間軸だけなんだ」
耕太がタケルに銃を向けて続ける。
「大丈夫。カヤが元の世界へ戻れば、これもなかった事になるから」
怯えるタケルに向かって、耕太がトリガーを引く。
その場に倒れるタケルを見て愕然とする吉村。
その吉村にカヤが言う。
「吉村さん心配しないで下さい。タイムリープシステムはちゃんとなかった事になりますから」
吉村が震えながら言った。
「あなたは時間を操ろうとしている」
言葉に詰まるカヤに代わって耕太が言う。
「吉村さんなら分かりますよね? 時間なんて操れないって」
吉村はしばらく俯き、言った。
「……では、今の、今の不安定な時空の状態をどうするのです?」
再び言葉に詰まるカヤに代わって、耕太が言う。
「僕が消えます。そしてその瞬間カヤは元の世界に戻って、タイムリープそのものがなかった事になります」
「……しかし、耕太さんがいなくなってしまえば私たちの研究が」
遮る様に耕太が言う。
「それが目的です」
「……は?」
「無限エネルギーもタイムリープも、僕がいなくなればなかった事になります」
「そんな事はできません。この研究は耕太さんのお父様の夢でもあるのですから」
「……夢……か」
耕太が遠い目でそう呟くと、吉村の前に数人の警備員がやって来る。警備員たちは倒れている男たちの銃を拾って、銃口をカヤに向けた。
咄嗟にカヤの盾になって耕太は言った。
「逃げよう」
耕太が上に向けて銃を撃つと、白いガーベラが映る天井が崩れ落ちた。カヤは咄嗟に、そのガレキから身を守る吉村からノートを奪い取る。そのまま耕太とカヤは部屋を出た。
耕太とカヤは真っ白い廊下を駆け抜け、施設側面の足場に掛かる階段を駆け上がった。
息を切らせる耕太とカヤは、とうとう巨大な円柱の研究施設の一番上へとたどり着く。そこには外へ出れそうな鉄扉があるが、鍵がかかっていて開かない。
耕太とカヤは鉄扉を背にして座りこんだ。
カヤが言う。
「また二人で逃げたね」
「そうだね」
今度は耕太が言った。
「カヤにひとつ、言ってなかったことがある」
「……え」
動揺して突っ立ったままの耕太にタケルが言う。
「ぼくたち、コータ様とカヤさんがマンションから逃げたすぐ後にタイムリープしました。そしたらミサキ先生、まだ微かに息してて、すぐにここに行けって」
カヤが顔をしかめる。
「ミサキ先生は前から言ってたんです。カヤさんはこの先の世界を信じているふりをして、本当は信じていないって。だからお父さんとお母さんの敵だって」
カヤは言った。
「この先の世界なんて嘘よ」
「うそじゃないよ。ちゃんとあるんだ。時間を操ってみんなが幸せになれる世界があるんだ」
「時間なんて操れないの。そんなことをしたらこの世界そのものがなくなっちゃうんだよ」
タケルはカヤを睨みつけて言った。
「いまカヤさん、時間を操ってるよね」
動揺しながらもカヤは答えた。
「これは何かのバグ。いつタイムパラッドックスが起きて時空が消滅するか分からないの」
カヤはサングラスに映る数値をタケルに見せて続けた。
「私の時間軸が正常ならタイムリミットは無限に増えていくはずなのに、なぜか止まったまま。何かのきっかけで急激にパラドックスに向かってもおかしくないの」
タケルはニヤリとし、言った。
「ぼくはだまされない。カヤさんは自分で好き勝手に時間を操ってこの世界を自分のものにするんだ」
ため息をつくカヤを、吉村が怪訝そうに見た。
耕太が状況を打破しようと、タケルに何か言おうとするが、先にタケルが言った。
「ぼく、許さないよ。だってカヤさん、ぼくのお父さんとお母さんを殺したじゃん」
耕太とカヤが弁明しようとした瞬間、タケルが手を上げた。その合図と共に男三人がカヤに向かって銃を向ける。咄嗟に内ポケットから銃を取った耕太が、タケルの取り巻きの男一人を撃つ。それに怯んだ他の男二人も、耕太は立て続けに撃ち抜いた。
取り乱すタケルに、耕太は言った。
「タイムリープが成立するのは誰かひとりの時間軸だけなんだ」
耕太がタケルに銃を向けて続ける。
「大丈夫。カヤが元の世界へ戻れば、これもなかった事になるから」
怯えるタケルに向かって、耕太がトリガーを引く。
その場に倒れるタケルを見て愕然とする吉村。
その吉村にカヤが言う。
「吉村さん心配しないで下さい。タイムリープシステムはちゃんとなかった事になりますから」
吉村が震えながら言った。
「あなたは時間を操ろうとしている」
言葉に詰まるカヤに代わって耕太が言う。
「吉村さんなら分かりますよね? 時間なんて操れないって」
吉村はしばらく俯き、言った。
「……では、今の、今の不安定な時空の状態をどうするのです?」
再び言葉に詰まるカヤに代わって、耕太が言う。
「僕が消えます。そしてその瞬間カヤは元の世界に戻って、タイムリープそのものがなかった事になります」
「……しかし、耕太さんがいなくなってしまえば私たちの研究が」
遮る様に耕太が言う。
「それが目的です」
「……は?」
「無限エネルギーもタイムリープも、僕がいなくなればなかった事になります」
「そんな事はできません。この研究は耕太さんのお父様の夢でもあるのですから」
「……夢……か」
耕太が遠い目でそう呟くと、吉村の前に数人の警備員がやって来る。警備員たちは倒れている男たちの銃を拾って、銃口をカヤに向けた。
咄嗟にカヤの盾になって耕太は言った。
「逃げよう」
耕太が上に向けて銃を撃つと、白いガーベラが映る天井が崩れ落ちた。カヤは咄嗟に、そのガレキから身を守る吉村からノートを奪い取る。そのまま耕太とカヤは部屋を出た。
耕太とカヤは真っ白い廊下を駆け抜け、施設側面の足場に掛かる階段を駆け上がった。
息を切らせる耕太とカヤは、とうとう巨大な円柱の研究施設の一番上へとたどり着く。そこには外へ出れそうな鉄扉があるが、鍵がかかっていて開かない。
耕太とカヤは鉄扉を背にして座りこんだ。
カヤが言う。
「また二人で逃げたね」
「そうだね」
今度は耕太が言った。
「カヤにひとつ、言ってなかったことがある」
「……え」
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