越中富山の九田部さん

池田ラテ雫

文字の大きさ
上 下
18 / 19
2章

死神

しおりを挟む
 富子の病気を聞いて皆で見舞いに行くと富子は病床についていた。
狒々の時のように身体に黒い靄が掛かっていて
他の人たちに見えていないようだが
富子の足元にはやせ細った年寄りが立っていて富子の様子を伺っている。

九田部 麒麟「死神・・・」

佐伯 まお「え・・・狒々さんの時と同じように簡単に剥がせないの?」

九田部 麒麟「いや狒々自体に体力があったし神鳴りを落とすなんて人には耐えられないよ・・」

佐伯 まお「そんな・・・」

神保 保則「だだだだ・・大丈夫・・・※1死神が枕元に居なければまだ寿命は尽きてないはずずずず・・・」
※1(古典落語 死神参照)

佐伯 まお「保則兄ぃ落ち着いて!?」

神保 保則「おおおおおお・・おちついてるよ!?うん・・・?おちついてる・・」

駄目だ・・これはパニックになってる・・

九田部 麒麟「そうですね、死神は仮にも(神格)をもっている妖怪です、彼を追い返すよりも彼女の障りさわりを剥がした方がまだ可能性があります」

九田部 麒麟「でも・・・これは・・・」

考え込む九田部さん・・・

九田部 麒麟「まおさん・・借りの話ですが、古典落語の死神では枕元にたった死神を医者が無理やり返した結果、患者の寿命が伸びたかわりに医者の寿命が尽きてしまいました・・」
九田部 麒麟「勿論そうならないように全力を尽くしますが万が一の時の覚悟はありますか?お友達の為に自分の命をベットする覚悟は・・ありますか?」

佐伯 まお「え・・・」

そんな・・危ない状況なの!?・・

躊躇するまお

九田部 麒麟「・・・信仰は私達妖怪の力にはなりますが祈るだけでなんでも叶うわけではありません、薬と毒・呪いと祈り・益獣と害獣・人間が区別しているだけで同じものです。」

九田部 麒麟「何かを成すと言う事には必ず副作用があります。神頼みはファッションでも無料ただでもないんです。覚悟はありますか・・?」

真顔で九田部さんは私をまっすぐ見つめ返す。

何時もの茶化した感じの九田部さんではない。

嘘偽りのない本気の問なんだろう・・・

佐伯 まお「死ぬ覚悟なんてできてない!・・・でも富子が死ぬのも嫌だ・・・どっちも助かる可能性があるんだよね?」

九田部 麒麟「私の考えが間違っていなければ・・」

正直断言して欲しい・・でもそれは我がままなんだよね・・・九田部さんはあくまで両方助かる可能性を示唆してくれているだけだ絶対に助かるわけではないのだ、覚悟も決断も自分がしなければ意味がない

それは癌告知された患者が医者に治療選択を丸ねげして結果論で医者にクレームするのと同じ行為だ

だが医療知識が乏しい側はある程度は信頼関係に依存して頼るしかない。

佐伯 まお「私はまだ妖怪この世界に詳しくない、でも九田部さんが今回真剣に対応してくれてるのは解る・・・だから!」

大きく息を吸ってそして吐く

佐伯 まお「覚悟した!任せる!私はどうしたらいいですか?」

九田部 麒麟「僕が障りさわりを剥がします、万が一死神さんが邪魔しようとしたら間に入ってください」

おぉぅ中々勇気のいる要求じゃないですか・・でも

佐伯 まお「解った!信じる!」

ここまできたらやるしかない保則兄はもうパニックでポンコツ確定だし

九田部 麒麟「では・いきます」

そう言うとくたべさんは呪を唱える


もえんふどうみょうおう(不動明王)
かえんふどうおう(火炎不動王)
なみきりふどうおう(波切不動王)
おおやまふどうおう(大山不動王)
こんがらふどうおう(吟伽羅不動王)
きちじょうみょうふどうおう(吉祥妙不動王)
てんじくふどうおう(天竺不動王)
てんじくさかやまふどうおう(天竺逆山不動王)。

かやし(逆し)におこなうぞ
かやし(逆し)におこない(行い)
おろせば(下ろせば)
むこう(向こう)
はちばな(血花)
にさかす(咲かす)ぞ。
みじん(味塵)
とやぶれ(破れ)
や、そわか。

もえゆけ、たえ(絶え)
ゆけ、かれ(枯れ)ゆけ
いきりょう(生霊)
いぬがみ(狗神)
さるがみ(猿神)
すいかん(水官)
ながなわ(長縄)
とぶひ(飛火)
へんび(変火)

そのみ(身)
のむなもと(胸元)
しほう(四方)さんざら
みじん(味塵)とみだれ(乱れ)
や、そわか。

むこう(向こう)
はしるまい(知るまい)
こちらはしりとる(知り取る)
むこうはあおち(青血)
くろち(黒血)
あかち(赤血)
しんち(真血)
をはけ(吐け)
あわ(泡)をはけ(吐け)。

そくざ(即座)
みじん(味塵)
に、まらべや
てんじく(天竺)
ななだんこく(七段国)
へおこなえば(行えば)
ななつ(七つ)のいし(石)
をあつめて(集めて)
ななつ(七つ)
のはか(墓)をつき、
 ななつ(七つ)のいし(石)
のそとば(外羽)をたて(建て)
ななつ(七つ)のいし(石)
のじょうかぎ(錠鍵)
おろして、みじん(味塵)
すいぞん、おん・あ・び・ら・うん・けん・そわかとおこなう。

うちしき(打ち式)
かやししき(返し式)
まかだんごく
けいたんこく(計反国)と
ななつ(七つ)のじごく(地獄)
へうち(打ち)おとす(落とす)。

おん・あ・び・ら・うん・けん・そわか。

九田部さんが呪を唱えると富子から黒い靄が剥がされそうになるが
靄が抵抗を見せる。

その一部始終を窪んだ眼で眺める死神。

その間を佐伯さえぎる(遮る)まお

結局靄が富子を離れ去っていくまで死神は見守ってからいずこっへと消え去った。

そして一気に腰がぬけてへなへなとその場にまおは座り込んだ。

佐伯 まお「こわかった~~~~・・・」

そして嘘のようにみるみると血色を取り戻す富子。

本当に良かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【未完】妖狐さんは働きたくない!〜アヤカシ書店の怠惰な日常〜

愛早さくら
キャラ文芸
街角にある古びた書店……その奥で。妖狐の陽子は今日も布団に潜り込んでいた。曰く、 「私、元は狐よ?なんで勤労なんかしなきゃいけないの。働きたいやつだけ働けばいいのよ」 と。そんな彼女から布団を引っぺがすのはこの書店のバイト店員……天狗と人のハーフである玄夜だった。 「そんなこと言わずに仕事してください!」 「仕事って何よー」 「――……依頼です」 怠惰な店主のいる古びた書店。 時折ここには相談事が舞い込んでくる。 警察などでは解決できない、少し不可思議な相談事が。 普段は寝てばかりの怠惰な陽子が渋々でも『仕事』をする時。 そこには確かに救われる『何か』があった。 とある街の片隅に住まう、人ならざる者達が人やそれ以外所以の少し不思議を解決したりしなかったりする短編連作。 ……になる予定です。 怠惰な妖狐と勤勉な天狗(と人とのハーフ)の騒がしかったりそうじゃなかったりする日常を、よろしれば少しだけ、覗いていってみませんか? >>すごく中途半端ですけど、ちょっと続きを書くのがしんどくなってきたので2話まででいったん完結にさせて頂きました。未完です。

マーちゃんの深憂

釧路太郎
キャラ文芸
 生きているもの死んでいるものに関わらず大なり小なり魔力をその身に秘めているものだが、それを上手に活用することが出来るモノは限られている。生まれつきその能力に長けているものは魔法使いとして活躍する場面が多く得られるのだが、普通の人間にはそのような場面に出会うことも出来ないどころか魔法を普通に使う事すら難しいのだ。  生まれ持った才能がなければ魔法を使う事すら出来ず、努力をして魔法を使えるようになるという事に対して何の意味もない行動であった。むしろ、魔法に関する才能がないのにもかかわらず魔法を使うための努力をすることは自分の可能性を極端に狭めて未来を閉ざすことになる場合が非常に多かった。  しかし、魔法を使うことが出来ない普通の人たちにとって文字通り人生を変えることになる世紀の大発明が今から三年前に誕生したのだ。その発明によって魔力を誰でも苦労なく扱えるようになり、三年経った今現在は日本に登録されている魔法使いの数が四千人からほぼすべての国民へと増加したのだった。  日本人の日本人による日本人のための魔法革命によって世界中で猛威を振るっていた魔物たちは駆逐され、長きにわたって人類を苦しめていた問題から一気に解放されたのである。  日本のみならず世界そのものを変えた彼女の発明は多くの者から支持され、その名誉は永遠に語り継がれるであろう。 設定・用語解説は別に用意してあります。 そちらを見ていただくとより本編を楽しめるとは思います。 「マーちゃんの深憂 設定・用語集」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/863298964/650844803

須藤先生の平凡なる非日常

如月あこ
キャラ文芸
渡月は、一人暮らしをする専門学生。 生徒が憧れるイケメン非常勤講師「須藤先生」と、ふとしたことで知り合った渡月は、強引にアトリエの手伝いをさせられることに。 須藤先生と関わっていくうちに、渡月は、自分の人生に疑問を持ち始める。 幼い頃の記憶にある人物は誰? 『お父さん』は、何者? 渡月は、自分の日常が日常ではなかったことを知る。 偏屈なハンドメイド作家先生×専門女学生の、恋愛ミステリー? Rは残虐表現のため。

【完結】陰陽師は神様のお気に入り

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
キャラ文芸
 平安の夜を騒がせる幽霊騒ぎ。陰陽師である真桜は、騒ぎの元凶を見極めようと夜の見回りに出る。式神を連れての夜歩きの果て、彼の目の前に現れたのは―――美人過ぎる神様だった。  非常識で自分勝手な神様と繰り広げる騒動が、次第に都を巻き込んでいく。 ※注意:キスシーン(触れる程度)あります。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※「エブリスタ10/11新作セレクション」掲載作品

我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな

ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】 少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。 次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。 姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。 笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。 なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中

見鬼の女官は烏の妻となる

白鷺雨月
キャラ文芸
皇帝暗殺の罪で投獄された李明鈴。失意の中、処刑を待つ彼女のもとに美貌の宦官があらわれる。 宦官の名は烏次元といった。 濡れ烏の羽のような黒髪を持つ美しき青年は明鈴に我妻となれば牢からだしてやろうと提案する。 死から逃れるため、明鈴は男性としての機能を捨て去った宦官の妻となることを決意する。

彩鬼万華鏡奇譚 天の足夜のきせきがたり

響 蒼華
キャラ文芸
元は令嬢だったあやめは、現在、女中としてある作家の家で働いていた。 紡ぐ文章は美しく、されど生活能力皆無な締め切り破りの問題児である玄鳥。 手のかかる雇い主の元の面倒見ながら忙しく過ごす日々、ある時あやめは一つの万華鏡を見つける。 持ち主を失ってから色を無くした、何も映さない万華鏡。 その日から、月の美しい夜に玄鳥は物語をあやめに聞かせるようになる。 彩の名を持つ鬼と人との不思議な恋物語、それが語られる度に万華鏡は色を取り戻していき……。 過去と現在とが触れあい絡めとりながら、全ては一つへと収束していく――。 ※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。 イラスト:Suico 様

死華は鳥籠の月を射堕す 〜ヤンデレに拾われた私は、偏愛の檻に閉じ込められる〜

鶴森はり
キャラ文芸
〈毎週水曜日、21時頃更新!〉  ――裏社会が支配する羽無町。  退廃した町で何者かに狙われた陽野月音は、町を牛耳る二大組織の一つ「月花」の当主であり、名前に恥じぬ美しさを持った月花泰華により九死に一生を得る。  溺愛しつつも思惑を悟らせない泰華に不信感を抱きながらも「匿ってあげよう。その命、必ず俺が守る」という提案と甘美な優しさに絆されて、生き延びるため共に過ごすことになる。  だが、やがて徐々に明らかになる自分自身の問題と、二つの組織に亀裂を入れる悪が月音と町を飲み込でいく。  何故月音は命を狙われるのか、泰華は月音に執着して囲うのか。様々な謎は、ある一つの事件――とある「当主殺人未遂事件」へと繋がっていく。 「私は、生きなきゃいけない。死んでも殺しても生きる」  月音の矛盾した決意と泰華の美しくも歪んだ愛、バランスを崩し始めた町の行く末は破滅か、それとも――。 偏愛✕隠れヤンデレに囲われる、死と隣り合わせな危険すぎる同棲生活。 ほんのりミステリー風味のダークストーリー。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 反倫理的、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※カクヨムさま、小説家になろうさま、エブリスタさまにも投稿しております。

処理中です...