星降る世界で君にキス

コダーマ

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【3.あのときからずっと 】大切

大切(12)

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 彼女がいるのは美術室の前であった。

 そういえば、と思い出す。
 呉田先生は美術教師であったと。
 この教室も週のうち何日かは美術部が使っているはずだが、今日はその日ではないらしい。

「ケイちゃん、ここにゆき……義弟おとうとがいるの?」

 一応、声をひそめて彼女の隣りに並ぶと、コクコクと頷きながらもケイは扉の隙間を指した。
 女ふたりで顔をくっつけるようにして中を覗く羽目になる。

 普通の教室と比べて広い美術室には木製の大きな机が八卓並んでいた。
 その周囲を小ぶりの椅子が取り囲む形で設えられている。
 絵の具の匂いとともに漂う、古臭い木の香り。
 教室の向こうは窓に面しており、星歌の元からも中庭の木々が見える。

 木の緑を背景にするように、居た。
 行人と呉田が教卓を挟むような形で立っている。
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