星降る世界で君にキス

コダーマ

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【3.あのときからずっと 】大切

大切(3)

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 虚ろな視線を店内に這わせる星歌の思考は、暗いところへ潜っていった。

 行人はいつも自分を助けてくれた。
 上手くいかない日常の中で、異世界転生を半ば本気で願う自分の話を笑って聞いてくれたのは彼だけだった。

 どんなに頼っていたことか──そう思うと、パンの焼ける香ばしい匂いがなぜか鼻にツンときて涙腺を刺激する。

 窯をあけて焼きあがったパンを作業台に並べる翔太の真剣な横顔。
 星歌は静かに扉を閉めた。

 きっと、自分がいるかぎり行人は帰ってこないのだろうと結論づける。
 今日は自分のアパートへ帰ろう。
 事故物件だろうが構うものか。

 もう義弟に頼っちゃいけないんだ。
 嫌なことがあるたびに異世界のことを考えるのも、もう止めにしなくては。

 幼かったあのとき、行人が作ってくれた星のブレスレットはバラバラになって、今は鞄の底に沈んでいる。
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