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【3.あのときからずっと 】「イヤな私」
「イヤな私」(16)
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「あの子、算数って言ったよな。高校生にもなって算数ってどんだけ……」
「そ、そんなふうに笑うのはやめなよ! そりゃ、私もちょっと……えっ、数学じゃなくて算数なんだって思っ……プッ」
ホラ、と言わんばかりのドヤ顔で睨む翔太。
ニヤける口元を慌てて隠して、星歌はブンブンと首を横に振る。
「わ、私も人のことは言えないけど。けど、算数はナイ……さすがにナイよ」
ふたりは顔を見合わせると、声をあげて笑った。
ふと見下ろすと、翔太の笑いは優しい微笑に変わっている。
「良かった、良かった。星歌が笑ってくれて」
パンをこねる大きな手がのびて、彼女の頭をポンポンたたく。
つむじの黒と、背伸びしてプルプル震えるふくらはぎ。
「僕がいるからね。しんどくなったら頼っていいからな。これでも年上なんだし」
「こ、こんなに小っちゃいのに……年上なの?」
「小っちゃいは余計だよ!」
苦笑と微笑が混ざったような、翔太の笑顔。
心地良いリズムで髪を撫でるそのあたたかな手の平。
一生懸命に赤子をあやすような手だと、彼女には感じられた。
「……ありがとね」
こらえていた感情が、一粒の涙となって宙に軌跡を描いた。
「そ、そんなふうに笑うのはやめなよ! そりゃ、私もちょっと……えっ、数学じゃなくて算数なんだって思っ……プッ」
ホラ、と言わんばかりのドヤ顔で睨む翔太。
ニヤける口元を慌てて隠して、星歌はブンブンと首を横に振る。
「わ、私も人のことは言えないけど。けど、算数はナイ……さすがにナイよ」
ふたりは顔を見合わせると、声をあげて笑った。
ふと見下ろすと、翔太の笑いは優しい微笑に変わっている。
「良かった、良かった。星歌が笑ってくれて」
パンをこねる大きな手がのびて、彼女の頭をポンポンたたく。
つむじの黒と、背伸びしてプルプル震えるふくらはぎ。
「僕がいるからね。しんどくなったら頼っていいからな。これでも年上なんだし」
「こ、こんなに小っちゃいのに……年上なの?」
「小っちゃいは余計だよ!」
苦笑と微笑が混ざったような、翔太の笑顔。
心地良いリズムで髪を撫でるそのあたたかな手の平。
一生懸命に赤子をあやすような手だと、彼女には感じられた。
「……ありがとね」
こらえていた感情が、一粒の涙となって宙に軌跡を描いた。
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