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【2.砕け散る星】彼のことば
彼のことば(2)
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この男が、石野谷という名のあの生徒の元に行ったのは恐らく間違いないだろう。
思いのほか早く戻ってきてくれて良かった。
あのまま、ひとりで自分のアパートには帰りたくなかったから。
「星歌?」
不意の呼びかけに我に返ると、段を上りきったところで行人が立ちつくし、見下ろしていた。
「大丈夫か? 足、痛い?」
「んーん、だいじょぶだよ」
にわかに沸き立つ雨雲が空を汚すように、ともすれば、どす黒い感情が全身を蝕むところだった。
星歌は平静を装って義弟の問いに首を振った。
決して遅い時間ではないとはいえ、単身者向けのアパートだ。
廊下での会話には気を遣う。
それ以降、ふたりは無言で廊下を進んだ。
鍵を取り出す行人の手、骨ばった手首を何気なく見つめていた星歌は、チャリンという音に引き寄せられてそれを凝視した。
「あっ……!」
行人の手からこぼれて、遊ぶように揺れている白い星形。
今まさに星歌の左拳の中で眠っている壊れたブレスレット──その星のカケラとまったく同じものを、行人はキーチェーンに加工して持っていたのだ。
「行人、それ……」
思いのほか早く戻ってきてくれて良かった。
あのまま、ひとりで自分のアパートには帰りたくなかったから。
「星歌?」
不意の呼びかけに我に返ると、段を上りきったところで行人が立ちつくし、見下ろしていた。
「大丈夫か? 足、痛い?」
「んーん、だいじょぶだよ」
にわかに沸き立つ雨雲が空を汚すように、ともすれば、どす黒い感情が全身を蝕むところだった。
星歌は平静を装って義弟の問いに首を振った。
決して遅い時間ではないとはいえ、単身者向けのアパートだ。
廊下での会話には気を遣う。
それ以降、ふたりは無言で廊下を進んだ。
鍵を取り出す行人の手、骨ばった手首を何気なく見つめていた星歌は、チャリンという音に引き寄せられてそれを凝視した。
「あっ……!」
行人の手からこぼれて、遊ぶように揺れている白い星形。
今まさに星歌の左拳の中で眠っている壊れたブレスレット──その星のカケラとまったく同じものを、行人はキーチェーンに加工して持っていたのだ。
「行人、それ……」
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