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第11話 不毛サスペンス
コインランドリーでオカシナ体験(1)
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あー、高校行かんでもすむ話ないかなー。
今から格闘家になってオリンピック目指すとか、芸能界デビュー果たすとか、海外放浪の旅に身を投じて無医村でボランティアして尊敬されるとか。
2,000アンペアの電気を自在に操り、悪い方の宇宙人を懲らしめるとか、恐ろしいほどの金持ちの御曹司と出会って、最初は反発しあいながらも次第に惹かれあうとか。
いっそ地球が悪い方の宇宙人たち相手に総攻撃態勢を整えて、民間人のアタシが突然その参謀に迎えられたりとか……そういうシンデレラストーリー待ってへんかなー。
夕方、アパート前でブツブツ言ってたら、うらしまが会社から帰ってきた。
「おつかれ、うらしま。アレ? お姉は?」
サディストの姉も、いつもはアパートの玄関まで一応迎えに出てくるのに。
敷居を一歩入ったと同時にうらしまは犬になり、お姉の足元を四つん這いで進むという気持ち悪い光景が見られるのに。
「乙姫サマは3日前に発売したゲームにハマってるから、時間の感覚がないんじゃないかなぁ」
「ゲーム?」
「モンスターをハンティングしていくやつ。1日21時間はやるって言ってたから」
「ほぼ丸1日やん! 人間としてどうなん、ソレ?」
うらしまと共に部屋に行くと、ゴミ屋敷の中に姉が転がっていた。
コントローラー片手に白目むいて、瞼がピクピク痙攣している。
「お、お姉……」
この人のこんな姿、見たくなかった……。
うらしまに命令して、この部屋の洗濯物を回収させて外へと向かう。
アパート玄関にはワンちゃんが待っていた。
「ちょちょちょうど良かったです。一緒に洗濯に行きましょう」
アタシらは商店街に向かって歩き出した。
何故か付いて来るうらしまの尻を蹴って追い払う。
「あっふぅん」と悲鳴をあげて、奴はアパートへ戻っていった。
「せせせ洗濯機欲しいですね」
ワンちゃんの言葉にアタシは大きく頷いた。
いちいちコインランドリーに行くのは面倒臭いし、お金も勿体ない。
そう、うちのアパートには洗濯機がないのだ。
「お姉に言っても埒明かんし、アパートのみんなでお金出し合って1台買わへん? 安いやつでいいし」
「ああああたし、乾燥機付のがいいですぅ」
「そりゃその方がいいけど…でも高いんちゃう?」
「そそそそれはちょっと厳しいですぅ」
それに、とワンちゃんが付け足した。
コインランドリーってちょっと怖いですよね、と。
「な、何で?」
「ととと都市伝説でよくあるじゃないですか。コインランドリーに行くと、やたらガガガガタンガタン音させて回ってるドラムがあって、不審に思って開けたら中にししし死体があっ!」
アアアアァーッ!
突然ワンちゃんが叫び、アタシは「ギェーッ!」と悲鳴をあげた。
「か、怪談? 怪談か? やめてぇな。アタシ、そのテの話アカンねんて。怖いねん」
ワンちゃんはウフフと笑った。
アタシの反応が素直すぎて面白かったらしい。
「そそそうだ、昨日はどうもアリガトウゴザイマシタ」
「昨日? あ、ああ……」
桃太郎とのデート(?)を思い出したのだろう。
ワンちゃん、露骨に頬を染めている。
アタシはカメさん騒動を思い出して、ガックリ……疲れる思いだ。
しかも桃太郎的には昨日のアレは商店街一周世直しの旅(日帰り)で、ワンちゃんはお供のつもりだったようだし。
アタシが後を付けていたことは桃太郎にはしっかりバレていた。
家に帰ると「余にはすべてお見通しじゃ」と意味深に笑われたものだ。
アホの桃太郎に踊らされたようで、夕べは情けない気分のまま眠りに落ちたのだった。
それでもワンちゃんが喜んでくれたなら、アタシは素直に嬉しいけどな。
そもそもワンちゃんは、桃太郎なんかのどこがいいんやろ。
そのへんが強烈に疑問やけどな。
だって…アレやで? 「自称・桃太郎」無職やで?
ワンちゃんに問いただすことはしたくないし。
アタシが考えてもたかがしれてる。
そのへんの乙女の機微ってやつはカメさんに聞くのが手っ取り早いやろ。
てっとり早いなんて言ってる時点で、乙女の1人としてアタシはアカンのかな?
コインランドリーは商店街の入口近くにある。
天井の低い狭い店内に古びたランドリーが3つ並んでいるのだが、あまり利用客はなく、いつ行っても誰もいない。
夕方のこの時間なのに、電気すら点いていない。
それなのに、中から奇妙な音がする……。
ガッコン、ガッコン。
嫌な話を聞いた後なので、アタシはここでもうビクついていた。
「な、何や。何の音や? 突然サスペンス展開か?」
「ままままさか、ししし死体が?」
アタシたちはカタカタ震え、手を取り合ってビクビクしながら中へと入っていった。
「ああああれですね」
一番左の機械が使用中だった。
ガコン、ガコン──凄い音をさせて中で何かが回転している。
「いやいやいや、ままままさかな」
「いいいいええ、ただただの都市伝説のはずぅ」
「な、中、見てみよか」
「いいいいやぁ。ほっときましょうよぅ」
「だ、大丈夫や。アタシに任せとき」
死体なんて入ってるわけない。
映画じゃあるまいし、現実世界でそんな現場に遭遇してたまるか!
とにかく確認しなければ落ち着いて自分の洗濯ができない。
「リカさん、やめてくださいぃぃ」
ワンちゃんの悲鳴を背に、アタシはその中を覗き込んだ──その瞬間。
今から格闘家になってオリンピック目指すとか、芸能界デビュー果たすとか、海外放浪の旅に身を投じて無医村でボランティアして尊敬されるとか。
2,000アンペアの電気を自在に操り、悪い方の宇宙人を懲らしめるとか、恐ろしいほどの金持ちの御曹司と出会って、最初は反発しあいながらも次第に惹かれあうとか。
いっそ地球が悪い方の宇宙人たち相手に総攻撃態勢を整えて、民間人のアタシが突然その参謀に迎えられたりとか……そういうシンデレラストーリー待ってへんかなー。
夕方、アパート前でブツブツ言ってたら、うらしまが会社から帰ってきた。
「おつかれ、うらしま。アレ? お姉は?」
サディストの姉も、いつもはアパートの玄関まで一応迎えに出てくるのに。
敷居を一歩入ったと同時にうらしまは犬になり、お姉の足元を四つん這いで進むという気持ち悪い光景が見られるのに。
「乙姫サマは3日前に発売したゲームにハマってるから、時間の感覚がないんじゃないかなぁ」
「ゲーム?」
「モンスターをハンティングしていくやつ。1日21時間はやるって言ってたから」
「ほぼ丸1日やん! 人間としてどうなん、ソレ?」
うらしまと共に部屋に行くと、ゴミ屋敷の中に姉が転がっていた。
コントローラー片手に白目むいて、瞼がピクピク痙攣している。
「お、お姉……」
この人のこんな姿、見たくなかった……。
うらしまに命令して、この部屋の洗濯物を回収させて外へと向かう。
アパート玄関にはワンちゃんが待っていた。
「ちょちょちょうど良かったです。一緒に洗濯に行きましょう」
アタシらは商店街に向かって歩き出した。
何故か付いて来るうらしまの尻を蹴って追い払う。
「あっふぅん」と悲鳴をあげて、奴はアパートへ戻っていった。
「せせせ洗濯機欲しいですね」
ワンちゃんの言葉にアタシは大きく頷いた。
いちいちコインランドリーに行くのは面倒臭いし、お金も勿体ない。
そう、うちのアパートには洗濯機がないのだ。
「お姉に言っても埒明かんし、アパートのみんなでお金出し合って1台買わへん? 安いやつでいいし」
「ああああたし、乾燥機付のがいいですぅ」
「そりゃその方がいいけど…でも高いんちゃう?」
「そそそそれはちょっと厳しいですぅ」
それに、とワンちゃんが付け足した。
コインランドリーってちょっと怖いですよね、と。
「な、何で?」
「ととと都市伝説でよくあるじゃないですか。コインランドリーに行くと、やたらガガガガタンガタン音させて回ってるドラムがあって、不審に思って開けたら中にししし死体があっ!」
アアアアァーッ!
突然ワンちゃんが叫び、アタシは「ギェーッ!」と悲鳴をあげた。
「か、怪談? 怪談か? やめてぇな。アタシ、そのテの話アカンねんて。怖いねん」
ワンちゃんはウフフと笑った。
アタシの反応が素直すぎて面白かったらしい。
「そそそうだ、昨日はどうもアリガトウゴザイマシタ」
「昨日? あ、ああ……」
桃太郎とのデート(?)を思い出したのだろう。
ワンちゃん、露骨に頬を染めている。
アタシはカメさん騒動を思い出して、ガックリ……疲れる思いだ。
しかも桃太郎的には昨日のアレは商店街一周世直しの旅(日帰り)で、ワンちゃんはお供のつもりだったようだし。
アタシが後を付けていたことは桃太郎にはしっかりバレていた。
家に帰ると「余にはすべてお見通しじゃ」と意味深に笑われたものだ。
アホの桃太郎に踊らされたようで、夕べは情けない気分のまま眠りに落ちたのだった。
それでもワンちゃんが喜んでくれたなら、アタシは素直に嬉しいけどな。
そもそもワンちゃんは、桃太郎なんかのどこがいいんやろ。
そのへんが強烈に疑問やけどな。
だって…アレやで? 「自称・桃太郎」無職やで?
ワンちゃんに問いただすことはしたくないし。
アタシが考えてもたかがしれてる。
そのへんの乙女の機微ってやつはカメさんに聞くのが手っ取り早いやろ。
てっとり早いなんて言ってる時点で、乙女の1人としてアタシはアカンのかな?
コインランドリーは商店街の入口近くにある。
天井の低い狭い店内に古びたランドリーが3つ並んでいるのだが、あまり利用客はなく、いつ行っても誰もいない。
夕方のこの時間なのに、電気すら点いていない。
それなのに、中から奇妙な音がする……。
ガッコン、ガッコン。
嫌な話を聞いた後なので、アタシはここでもうビクついていた。
「な、何や。何の音や? 突然サスペンス展開か?」
「ままままさか、ししし死体が?」
アタシたちはカタカタ震え、手を取り合ってビクビクしながら中へと入っていった。
「ああああれですね」
一番左の機械が使用中だった。
ガコン、ガコン──凄い音をさせて中で何かが回転している。
「いやいやいや、ままままさかな」
「いいいいええ、ただただの都市伝説のはずぅ」
「な、中、見てみよか」
「いいいいやぁ。ほっときましょうよぅ」
「だ、大丈夫や。アタシに任せとき」
死体なんて入ってるわけない。
映画じゃあるまいし、現実世界でそんな現場に遭遇してたまるか!
とにかく確認しなければ落ち着いて自分の洗濯ができない。
「リカさん、やめてくださいぃぃ」
ワンちゃんの悲鳴を背に、アタシはその中を覗き込んだ──その瞬間。
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