蜜花

オフィスラブ

予感

それは会社の創立30周年記念パーティーの前日のこと。その日は部長と先輩の高橋社員（男性）、同じく2年先輩の結城社員（女性）と私の4人は翌日の会場となるホテルへ直行して打ち合わせや諸々の確認をすることになっていました。スムーズに行けば大したことはないのですが、全社員が参加し来客者も多い一大イベント。段取りの再確認や、社長からの急なオーダーも入ったりでなかなか思うようには捗らず、すべての業務を終えたのが午前0時近くになり、私たちはそのホテルで宿泊して良いことになりました。ここは超有名ホテルだし、私は内心ラッキーって感じでしたが、高橋社員と結城社員は「大丈夫ですので」とそそくさと2人でタクシーに乗り込み、帰ってしまいました。

先輩2人が帰ると下っ端の私が泊まるわけにはいかないなと思い、
「部長、私も帰った方が……」
「いや、泊まった方が少しでも休めるから泊まって行きなさい。こんなホテルにはなかなか泊まれないぞ」
「ありがとうございます。でも高橋さんも結城さんも帰られたので、申し訳なくて」
「あいつらはいいんだよ。実は2人は付き合ってて同棲してる仲だから」
「そうなんですか！」
「もう数ヶ月前だけど2人から報告受けててね。あっ、まだ他には内緒だぞ。それに、お前が帰っちゃうと俺も泊まりにくいだろ（笑）」

（そうか……部長も泊まるんだ……）

「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

私は会社では見せたことのない微笑みで、部長の目を見ていました。