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訪問者
訪問者・4〈綾音と涼平〉
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※〈訪問者・2〉に大事な伏線部分が抜けていました。
先輩が綾音ちゃんにお菓子を二個あげるシーンです。追記しましたのでお読みでない方は再読をお願いいたします。
────────────
綾音と二人で市街地までバスで下り、電車に乗った。二人掛けのシートに腰掛け、鈍行列車の緩い揺れに身を任せる。横を見ると、隣に座る綾音の手に小さな箱が乗っていた。
「綾音、それどうした」
「帰る時に藤代さまから戴いたの」
リボンで巻かれただけのシンプルな小箱。
一瞬 指輪かと思いドキリとしたが、持ってみると何も入ってないかのように軽い。振ってもかすかにカタカタと音がするだけだ。
「パンドラの匣なんですって」
「パンドラの匣?」
──先に玄関を出た涼平君を追って帰ろうとしたら藤代さまに呼び止められた。
「待って、綾音さん手を出して」
「え?こうですか?」
広げた手の平に乗せられた、リボンを結ばれたシンプルな小箱。
「今日の訪問記念にあげる。パンドラの匣」
「パンドラの匣ですか?」
「そう。開けてもいいけど時期が来るまではただの箱だよ」
僕はしげしげと箱を眺めた。クリーム色で名刺入れのような大きさ。軽い。
「時期が来たら?なんだろう……不思議。じゃあその時まで大事に取っておきます」
「うん。そうして。じゃあね」
「はい、失礼します」
そう挨拶をして急いで涼平君を追ったんだ。走って揺れた箱からはカタカタと軽い音がしてたよ──
綾音からその話を聞いた俺は、藤代さんをますます薄気味悪く感じた。
時期が来たら?
あの人は綾音の未来に一体何を見ているんだ?
稀少種は、その名のとおり数が少なくて本来なら俺たち一般人が出会う事はまずない。そのため稀少種がどういった存在なのかを詳しく知る者は誰もいない。なので俺らには藤代さんが稀少種の象徴なのだ。
彼の類まれなる身体能力と多分野に渡る広い知識、秀でた容姿と人目を惹く大らかなオーラ。それらの見た者を虜にしてしまうカリスマ的な存在感が、なるほどこれがαの上位種、稀少種なのかと皆を納得させていた。
頭が良くてスポーツが出来て優しくて。そんな人格者が稀少種なのだと。
しかし、果たして俺たちが見ているその姿だけが全てだろうか。その神のような存在がαですらないβとΩの俺たちに掴めるのか?複雑計算を瞬時にする思考回路と桁外れの能力を秘めている彼らが、もし本当の姿を隠していたとしたら、俺たちにそれを知る術はあるのか?
もしかしたら誰も稀少種の本当の姿を知らないのではないのだろうか──
今日、俺たちは藤代さんの普段の様子を知りたくて、住まいを不意打ちで訪れた。彼には何かを隠す時間も手段もなかったから、普段の様子を見ている筈だった。
管理人さんに怪しまれることなくマンションに入れてもらい、驚く藤代さんに嫌がられることなく部屋に上げてもらって覗いた日常。だが俺たちが見た彼の生活は、果たしてどこまでが本物だったんだ?
誰かが覗く事を前提に広げられたノートとロックを掛けていないパソコン。
パソコンで見た履歴の写真、あれは若手アイドル達への暴行と横領で逮捕された、タレント議員のスクープ写真だった。逮捕された一昨日から今日まで連日報道が続いている。だが、さっき俺たちが見たのは一週間前のパソコンの履歴で、つまり逮捕よりずっと以前に撮られていたものだ。しかも画面の端には危険思想団体の幹部と大手輸入企業のCEOも写っていた。
綾音ん家の情報によると、そのCEOは海外と武器の取引きを行っているという黒い噂がある。そんな奴と一緒にいるなんて……本当にヤバいのはその二人との繋がりだが、テレビではそれは一切公表されていない。
世間が知らされたのは事件のほんの一部だった。本当なら他の国も巻き込んだテロに発展する恐れのあった事件だったのだ。ということは、あの時俺たちが見た写真がスキャンダルに隠された逮捕の本当の理由で、この事件の核心だ。それを藤代さんは事前に知っていたということになる。あれを見せられただけでその事に気付く人間はどれだけいるだろう。
俺が見て理解したノートの分子式、あれがノーベル賞も取れる可能性のある世紀の発見とは、淳也と綾音には分からなかった。
俺が見て分からなかった数字の羅列は、淳也にとっては重要なものだったに違いない。
さりげなさを装って巧妙にばら蒔かれたエサの数々。それに喰いついた人間の反応を観察していた藤代さん。
それらは、あたかも お前達はこれがどこまで分かるのかと問われ続け、自分がどういう人間であるかの選別を受けていたようで、なんとも不気味で胸糞が悪い。
あの人の存在をどう捉えればいいんだ?大学で見せる優しい顔は果たして本物なのか?
「楽しかったね」
俺が思考に沈んでいると、隣に座っている綾音がニコニコと話しかけてきた。
「別荘のボートで魚釣ったり散歩しながら木苺摘んだり。夜の星は凄かったね。落ちてきそうでビックリした。カシオペアもオリオンも北斗七星も全部見つけられたし。天の川は星がいっぱいあってチカチカしてて、本当に星の川みたいで」
「確かにあれは凄かったな。周りが暗いとあそこまでくっきり見えるんだな」
「綺麗だったよね。今日も楽しかった。藤代さまのお住まいはオシャレだったね。さすが藤代さま、急に訪れてもちっとも散らかってなかった。パソコンのお部屋にはいっぱいお勉強の本があって、頭がいい人のお部屋って感じ」
「そう、だな」
「でもなんだか生活感があって、藤代さま本当にここにお住まいなんだって感動しちゃった!うふふ、頂いたキャンディ宝物にしちゃおう」
口数の多い方ではない綾音の終始はしゃいだ様子から相当楽しかったことが窺える。
綾音は藤代さんを怖いと感じたことはないのだろうか。
「綾音、怖くはなかったか?」
「怖い?何が?藤代さまのお部屋?あそこは安全な気がしてた。きっと管理人さんが見張ってくれてるからだね。だから藤代さまも安心して暮らしてるんだよ。優しくていい人がいてくれてよかったね」
藤代さんの事を聞いたつもりだったが、違う反応が返ってきた。
「牧之原さん?管理人さんは警備員じゃないぞ」
「うーん、でもきっと見ててくれてるよ。だって吉本さんや棚木さんたちと同じ目をしてたもん」
吉本さんと棚木さんは綾音んちのSPだ。平泉家お抱えの超一流のボディガードであり、俺の体術と剣術の師匠だ。彼らと管理人さんが同じ目をしてたって?まさか。
しかし綾音は危険に対して人一倍敏感だ。名門平泉家の嫡男として財産を狙われ、優秀なαを産むΩとして体を狙われ続けてきた経験が、危険の匂いを敏感に嗅ぎとる能力を育ててきてる。だとしたら彼は本当は管理人ではないのかもしれない。
じゃあマンションの警備員?いや、綾音にボディガードが必要なように、数少ない稀少種の藤代さん専用のボディガードなのかもしれないな。
いずれにしても危険に敏感な綾音がここまで懐いているんだ、藤代さんも悪い人じゃないのかもしれない。
頭が混乱してきた。どこまでが本当なんだ。
俺はあの人を信用していいのか?綾音の伴侶として認めてしまってもいいのか?
「藤代さま、子供たくさん欲しいって」
「ん?ああ、言ってたな」
「……」
「綾音?」
「子供、僕が産むのかな」
「番になるならそうだろ」
「そう、だね」
「藤代さんがいいんだろ?」
「……うん。藤代さまがいい。藤代さまじゃなきゃ駄目」
「だろ。綾音の子供か。可愛いだろうな」
「そんな事ない。僕に似ない子がいい。藤代さまにそっくりのお子様だったら、カッコイイし頭いいしきっと優秀なαだから」
「αだろうとΩだろうと、どんな子だってお前が産むなら可愛いさ」
「付いてきてくれるんだよね」
「もちろんだ。どこに嫁ごうが付いていく。安心しろ、似てようが似てなかろうが俺はおまえも子供も守るから」
「うん。でもやっぱり子供は似てない方がいい。藤代さまにそっくりで、見た目も能力も性格も、全く僕に似てない子がいい」
横に座っていた綾音は、トンと俺に体をもたれ掛けた。
「……はしゃぎ疲れちゃった」
綾音が俺の手を握った。幼稚園の頃から変わらない、柔らかくて俺より小さな手。俺は綾音の頭を引き寄せた。
「このまま駅に着かないといいな……」
「……ああ」
綾音と二人、このまま。
ずっとずっと旅が続けばいい。
どこにも着かず、永遠に二人で。
俺と綾音は身を寄せ合い、黙って電車に揺られていた。
先輩が綾音ちゃんにお菓子を二個あげるシーンです。追記しましたのでお読みでない方は再読をお願いいたします。
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綾音と二人で市街地までバスで下り、電車に乗った。二人掛けのシートに腰掛け、鈍行列車の緩い揺れに身を任せる。横を見ると、隣に座る綾音の手に小さな箱が乗っていた。
「綾音、それどうした」
「帰る時に藤代さまから戴いたの」
リボンで巻かれただけのシンプルな小箱。
一瞬 指輪かと思いドキリとしたが、持ってみると何も入ってないかのように軽い。振ってもかすかにカタカタと音がするだけだ。
「パンドラの匣なんですって」
「パンドラの匣?」
──先に玄関を出た涼平君を追って帰ろうとしたら藤代さまに呼び止められた。
「待って、綾音さん手を出して」
「え?こうですか?」
広げた手の平に乗せられた、リボンを結ばれたシンプルな小箱。
「今日の訪問記念にあげる。パンドラの匣」
「パンドラの匣ですか?」
「そう。開けてもいいけど時期が来るまではただの箱だよ」
僕はしげしげと箱を眺めた。クリーム色で名刺入れのような大きさ。軽い。
「時期が来たら?なんだろう……不思議。じゃあその時まで大事に取っておきます」
「うん。そうして。じゃあね」
「はい、失礼します」
そう挨拶をして急いで涼平君を追ったんだ。走って揺れた箱からはカタカタと軽い音がしてたよ──
綾音からその話を聞いた俺は、藤代さんをますます薄気味悪く感じた。
時期が来たら?
あの人は綾音の未来に一体何を見ているんだ?
稀少種は、その名のとおり数が少なくて本来なら俺たち一般人が出会う事はまずない。そのため稀少種がどういった存在なのかを詳しく知る者は誰もいない。なので俺らには藤代さんが稀少種の象徴なのだ。
彼の類まれなる身体能力と多分野に渡る広い知識、秀でた容姿と人目を惹く大らかなオーラ。それらの見た者を虜にしてしまうカリスマ的な存在感が、なるほどこれがαの上位種、稀少種なのかと皆を納得させていた。
頭が良くてスポーツが出来て優しくて。そんな人格者が稀少種なのだと。
しかし、果たして俺たちが見ているその姿だけが全てだろうか。その神のような存在がαですらないβとΩの俺たちに掴めるのか?複雑計算を瞬時にする思考回路と桁外れの能力を秘めている彼らが、もし本当の姿を隠していたとしたら、俺たちにそれを知る術はあるのか?
もしかしたら誰も稀少種の本当の姿を知らないのではないのだろうか──
今日、俺たちは藤代さんの普段の様子を知りたくて、住まいを不意打ちで訪れた。彼には何かを隠す時間も手段もなかったから、普段の様子を見ている筈だった。
管理人さんに怪しまれることなくマンションに入れてもらい、驚く藤代さんに嫌がられることなく部屋に上げてもらって覗いた日常。だが俺たちが見た彼の生活は、果たしてどこまでが本物だったんだ?
誰かが覗く事を前提に広げられたノートとロックを掛けていないパソコン。
パソコンで見た履歴の写真、あれは若手アイドル達への暴行と横領で逮捕された、タレント議員のスクープ写真だった。逮捕された一昨日から今日まで連日報道が続いている。だが、さっき俺たちが見たのは一週間前のパソコンの履歴で、つまり逮捕よりずっと以前に撮られていたものだ。しかも画面の端には危険思想団体の幹部と大手輸入企業のCEOも写っていた。
綾音ん家の情報によると、そのCEOは海外と武器の取引きを行っているという黒い噂がある。そんな奴と一緒にいるなんて……本当にヤバいのはその二人との繋がりだが、テレビではそれは一切公表されていない。
世間が知らされたのは事件のほんの一部だった。本当なら他の国も巻き込んだテロに発展する恐れのあった事件だったのだ。ということは、あの時俺たちが見た写真がスキャンダルに隠された逮捕の本当の理由で、この事件の核心だ。それを藤代さんは事前に知っていたということになる。あれを見せられただけでその事に気付く人間はどれだけいるだろう。
俺が見て理解したノートの分子式、あれがノーベル賞も取れる可能性のある世紀の発見とは、淳也と綾音には分からなかった。
俺が見て分からなかった数字の羅列は、淳也にとっては重要なものだったに違いない。
さりげなさを装って巧妙にばら蒔かれたエサの数々。それに喰いついた人間の反応を観察していた藤代さん。
それらは、あたかも お前達はこれがどこまで分かるのかと問われ続け、自分がどういう人間であるかの選別を受けていたようで、なんとも不気味で胸糞が悪い。
あの人の存在をどう捉えればいいんだ?大学で見せる優しい顔は果たして本物なのか?
「楽しかったね」
俺が思考に沈んでいると、隣に座っている綾音がニコニコと話しかけてきた。
「別荘のボートで魚釣ったり散歩しながら木苺摘んだり。夜の星は凄かったね。落ちてきそうでビックリした。カシオペアもオリオンも北斗七星も全部見つけられたし。天の川は星がいっぱいあってチカチカしてて、本当に星の川みたいで」
「確かにあれは凄かったな。周りが暗いとあそこまでくっきり見えるんだな」
「綺麗だったよね。今日も楽しかった。藤代さまのお住まいはオシャレだったね。さすが藤代さま、急に訪れてもちっとも散らかってなかった。パソコンのお部屋にはいっぱいお勉強の本があって、頭がいい人のお部屋って感じ」
「そう、だな」
「でもなんだか生活感があって、藤代さま本当にここにお住まいなんだって感動しちゃった!うふふ、頂いたキャンディ宝物にしちゃおう」
口数の多い方ではない綾音の終始はしゃいだ様子から相当楽しかったことが窺える。
綾音は藤代さんを怖いと感じたことはないのだろうか。
「綾音、怖くはなかったか?」
「怖い?何が?藤代さまのお部屋?あそこは安全な気がしてた。きっと管理人さんが見張ってくれてるからだね。だから藤代さまも安心して暮らしてるんだよ。優しくていい人がいてくれてよかったね」
藤代さんの事を聞いたつもりだったが、違う反応が返ってきた。
「牧之原さん?管理人さんは警備員じゃないぞ」
「うーん、でもきっと見ててくれてるよ。だって吉本さんや棚木さんたちと同じ目をしてたもん」
吉本さんと棚木さんは綾音んちのSPだ。平泉家お抱えの超一流のボディガードであり、俺の体術と剣術の師匠だ。彼らと管理人さんが同じ目をしてたって?まさか。
しかし綾音は危険に対して人一倍敏感だ。名門平泉家の嫡男として財産を狙われ、優秀なαを産むΩとして体を狙われ続けてきた経験が、危険の匂いを敏感に嗅ぎとる能力を育ててきてる。だとしたら彼は本当は管理人ではないのかもしれない。
じゃあマンションの警備員?いや、綾音にボディガードが必要なように、数少ない稀少種の藤代さん専用のボディガードなのかもしれないな。
いずれにしても危険に敏感な綾音がここまで懐いているんだ、藤代さんも悪い人じゃないのかもしれない。
頭が混乱してきた。どこまでが本当なんだ。
俺はあの人を信用していいのか?綾音の伴侶として認めてしまってもいいのか?
「藤代さま、子供たくさん欲しいって」
「ん?ああ、言ってたな」
「……」
「綾音?」
「子供、僕が産むのかな」
「番になるならそうだろ」
「そう、だね」
「藤代さんがいいんだろ?」
「……うん。藤代さまがいい。藤代さまじゃなきゃ駄目」
「だろ。綾音の子供か。可愛いだろうな」
「そんな事ない。僕に似ない子がいい。藤代さまにそっくりのお子様だったら、カッコイイし頭いいしきっと優秀なαだから」
「αだろうとΩだろうと、どんな子だってお前が産むなら可愛いさ」
「付いてきてくれるんだよね」
「もちろんだ。どこに嫁ごうが付いていく。安心しろ、似てようが似てなかろうが俺はおまえも子供も守るから」
「うん。でもやっぱり子供は似てない方がいい。藤代さまにそっくりで、見た目も能力も性格も、全く僕に似てない子がいい」
横に座っていた綾音は、トンと俺に体をもたれ掛けた。
「……はしゃぎ疲れちゃった」
綾音が俺の手を握った。幼稚園の頃から変わらない、柔らかくて俺より小さな手。俺は綾音の頭を引き寄せた。
「このまま駅に着かないといいな……」
「……ああ」
綾音と二人、このまま。
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