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運命のつがい
怯えなくていい
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「何の数字だか分かる?」
いきなり変わった先輩の変化に戸惑う。
「君が高村くんを思い出した数だよ。僕と比較した数とも言えるかな」
僕は青くなった。比較なんてそんなつもりはなかった。でも、確かに思い出していた。
「今まで彼とだけだったから、彼を基準にするのは分かる。でも今のは急に彼を思い出し、僕を彼と同じかもって怯えた。君は今、僕と彼を一緒にしたんだよ」
「違、そんなつもりじゃ」
「じゃあ一体何に怯えたの?言ってごらん?」
「それは……」
「抱き合うとね、お互いのことが何でも分かるんだ。体に出るからね。今、すごく嬉しいとか悲しいとか。何か思い出してるな、とかもね。思い出したから怖くなったんでしょ。でも、今抱いてるのは僕だよ。痛い思いや悲しい思いなんてさせない。なのに君は僕が彼みたいだったらどうしようって怯えた」
「違う、そうじゃないんです、先輩が高村さんと同じだなんて思ってない。ただ……」
「ただ?」
「……」
「言って。僕は怒ってるよ。さあ、言って」
自分の本音をさらけ出すのは怖い。でも怒ってる先輩は許してくれない。このまま嫌われる方がもっと怖い。
「………僕は毎回、ぐちゃぐちゃのドロドロになって、酷い顔も醜い痴態も晒した。それを高村さんは嘲笑ってた」
先輩は無表情で僕を見下ろしている。
「……僕は情けなくて恥ずかしくて死にそうだった。先輩は嘲笑わないって思ってる。……けど……ううん、凄く酷い顔なんだ、やっぱり呆れて嗤われちゃうかも。汚いって軽蔑されちゃうかも。やだ。そんなの嫌だ。僕、先輩とエッチするの怖い。嫌われるのが怖い……」
そうだ。比べてるんじゃなくて単に先輩に醜い姿を見せたくないのだ。せっかく好きって言ってもらえたのに、嗤われたくない。幻滅して嫌われたくない。
「どうして僕が嫌うのさ。好きな子が気持ちよくてトロトロになってるなんて、たまらないよ。そうさせたくて頑張るのに。そんな姿、見せてよ。嗤ったりなんかするわけない。その顔が見たい」
そういって僕の全身をゆっくりと見た。お腹をつうっ、と指先で辿られて、僕は羞恥で全身が真っ赤になった。
嘘だ。あんな姿が見たいなんてあるわけない。あの嘲笑われた醜い姿が嬉しいだなんて。
「僕だって多分隠せないよ。セックスなんて、醜い部分の見せ合いだ。嬉しければ掻き抱くし、激情に飲まれれば乱暴に突き動かす。好きな子が別の男を思い出してるのが分かれば嫉妬する」
嫉妬?先輩が?まさか。
「晶馬くんには格好いい僕しか見せたくないから隠してるけど、本当は僕だって醜い。高村君に嫉妬するし、君を傷つけた彼を社会的に抹消したいくらい憎い。実際僕にはそれが出来る。でもそれをすると君が傷付くからしない。いや、君に怖がられたくないから出来ない。僕にストップを掛けられるのは晶馬くん、君だけだ。こんな僕は怖い?嫌いになった?」
頭を振った。びっくりした。でも、
「ちょっと怖いけど、嫌いになんかなりません。きっとどんな先輩を見ても嫌いになんてなれない」
これだけは自信をもって言える。
先輩は無表情だった顔を和ませて、安心したようにほうっと息を吐いた。
「良かった。僕も今怖かった。君に本当の姿を見せて嫌われないかって不安だった。一緒だよ。僕も晶馬くんのどんな姿を見ても嫌いになんてなれない。本当に好きなんだ」
「あ……」
唐突に理解した。
隠せるのに、先輩はわざと僕に冷たい目を見せたんだ。僕にもこんな怖い面があるよって教えるために。
先輩も僕に嫌われることは怖い。でも、どんなに怖い姿でも受け入れて欲しいって願ってるし、僕が受け入れるって信じてくれてる。同じなんだ。僕がどんな先輩の姿を見ても嫌わないように、先輩も僕がどんな醜態を晒しても嫌わない。そう教えてくれた。
僕が嫌われることに怯えなくていいように。
僕は充分に愛されている。嫌われることに怯えながら抱かれなくていいんだ――
「……っ、」
涙腺が崩壊した。涙があとからあとから溢れ出て、わあわあ声をあげて泣いた。首に抱きついて頬ずりし、足を絡めてしがみついた。
先輩は赤子をあやすように僕の背中をたたき、ぐちょぐちょに泣きぬれた顔を舌で舐め取って宥めてくれた。
「先輩、先輩、せんぱぃ」
「ねえ、お願いだから李玖《りく》って呼んでみて」
「李玖先輩、李玖さん……」
嬉しくてぎゅうぅっと強くしがみついた。
李玖先輩の劫火は僕を丸ごと焼き尽くした。僕は悶えることしかできない。
首筋に吸い付かれ、舐め上げられてゾクゾクと肌が粟だった。長い指先の大きな手は腰骨をしっかり掴み、僕をぎりぎりまで引き寄せようとする。
「ああっ、ああっ、ああんっ!」
「はっ、はっ、可愛い。晶馬くん、かわいい」
グリッ
「うあぁ、はあ、あぁぁんぅ、李玖《りく》さん、李玖さんっぅう」
角度が変わってひと際大きく悶えた。背中に回していた、汗で滑る手を先輩の髪に差し込むと、吸い込まれそうな瞳が欲望の色を纏って僕を射る。粘液で濡れた柔らかな唇が歯列を割り、熱い舌が絡みついて互いの唾液がクチュ、クチュッと音を立てる。
「ん……んん……はぁ。もっと。はぁ、はぁ、李玖さん、もっと」
「はぁっ、はぁ、どっち?こっち?それともこっち?」
「んああっ!あっ、あぁあぁ、あっ、あっ」
胸の尖りを指の腹で捏ねられ、腰にジン…と重い痺れが走った。身悶え、のけ反った喉を強く吸われ、舐め上げられて背中がのけ反りゾクゾクと逆毛が立った。腰を深く突き入れられ、僕の分身を強く擦られた。
「あぁぅ、だめ、いっちゃう、むりぃ。だめぇ」
「はっ、はっ、どれが、だめ?」
「ぜんぶだめぇ、うぅ、きもち、い、ぜんぶぅ、せんぱいぜんぶぅ」
「ああ、可愛い。はあっ、晶馬、やっとだ、やっと僕のだ……」
「ああ、ああっ、いく、いっちゃう、ほしい、ちょうだい、せんぱい、ぜんぶちょうだい」
「はっ、はっ、李玖って、呼んで、ごらんっ、全部あげるよ、はっ、僕を全部だ、……っ、」
「李玖、りく、ちょうだい!りく!ぜんぶっ、りく、りくっ!……あ!……ああ!あああぁ、ああぁぁっっ!!!」
「っ!……っ!……!!」
ひと際深く突き入れられて胎内がぎゅうぎゅうと収縮した。奥を暴かれて背がのけ反り、足先がつま先立つ。
ビュクッ、ビュクッと白濁が勢いよく飛び、胸から腹あたりをしとどに濡らした。すぐあとに先輩も息を詰めて駆け上がっていった。最奥で動きを止め、びくっ、びくっと痙攣した。
「……っく、……っ、……っ」
先輩の細められた瞳、鼻先から落ちそうな汗。どくり、どくりと胎内に広がった熱。
「はあっ、はあっ」
「はぁはぁ、はぁはぁ」
ぶわっと多幸感が広がった。胸が詰まり涙が溢れ、零れ落ちた。
「李玖さん……好き……好き……」
凄く甘えた声が出た。
「僕もだ。愛してる、晶馬くん」
汗と色気を纏った蕩けるような笑顔を返された。頬ずりされ、涙を舌で拭われる。嬉しくなって力いっぱい抱きつき、幸せの余韻に浸った。
翌日の朝───
「晶馬、晶馬くん、出ておいでよ。お顔見せて。ね、いい子だから。恥ずかしくないよ」
いま僕は頭まで布団に包まってミノムシになり、イヤイヤと頭を振っている。
安心して抱かれて幸せを感じる事と恥ずかしいと思う事は別の話なのだと、一晩たって頭が正常に戻ってから知ることになった。
いきなり変わった先輩の変化に戸惑う。
「君が高村くんを思い出した数だよ。僕と比較した数とも言えるかな」
僕は青くなった。比較なんてそんなつもりはなかった。でも、確かに思い出していた。
「今まで彼とだけだったから、彼を基準にするのは分かる。でも今のは急に彼を思い出し、僕を彼と同じかもって怯えた。君は今、僕と彼を一緒にしたんだよ」
「違、そんなつもりじゃ」
「じゃあ一体何に怯えたの?言ってごらん?」
「それは……」
「抱き合うとね、お互いのことが何でも分かるんだ。体に出るからね。今、すごく嬉しいとか悲しいとか。何か思い出してるな、とかもね。思い出したから怖くなったんでしょ。でも、今抱いてるのは僕だよ。痛い思いや悲しい思いなんてさせない。なのに君は僕が彼みたいだったらどうしようって怯えた」
「違う、そうじゃないんです、先輩が高村さんと同じだなんて思ってない。ただ……」
「ただ?」
「……」
「言って。僕は怒ってるよ。さあ、言って」
自分の本音をさらけ出すのは怖い。でも怒ってる先輩は許してくれない。このまま嫌われる方がもっと怖い。
「………僕は毎回、ぐちゃぐちゃのドロドロになって、酷い顔も醜い痴態も晒した。それを高村さんは嘲笑ってた」
先輩は無表情で僕を見下ろしている。
「……僕は情けなくて恥ずかしくて死にそうだった。先輩は嘲笑わないって思ってる。……けど……ううん、凄く酷い顔なんだ、やっぱり呆れて嗤われちゃうかも。汚いって軽蔑されちゃうかも。やだ。そんなの嫌だ。僕、先輩とエッチするの怖い。嫌われるのが怖い……」
そうだ。比べてるんじゃなくて単に先輩に醜い姿を見せたくないのだ。せっかく好きって言ってもらえたのに、嗤われたくない。幻滅して嫌われたくない。
「どうして僕が嫌うのさ。好きな子が気持ちよくてトロトロになってるなんて、たまらないよ。そうさせたくて頑張るのに。そんな姿、見せてよ。嗤ったりなんかするわけない。その顔が見たい」
そういって僕の全身をゆっくりと見た。お腹をつうっ、と指先で辿られて、僕は羞恥で全身が真っ赤になった。
嘘だ。あんな姿が見たいなんてあるわけない。あの嘲笑われた醜い姿が嬉しいだなんて。
「僕だって多分隠せないよ。セックスなんて、醜い部分の見せ合いだ。嬉しければ掻き抱くし、激情に飲まれれば乱暴に突き動かす。好きな子が別の男を思い出してるのが分かれば嫉妬する」
嫉妬?先輩が?まさか。
「晶馬くんには格好いい僕しか見せたくないから隠してるけど、本当は僕だって醜い。高村君に嫉妬するし、君を傷つけた彼を社会的に抹消したいくらい憎い。実際僕にはそれが出来る。でもそれをすると君が傷付くからしない。いや、君に怖がられたくないから出来ない。僕にストップを掛けられるのは晶馬くん、君だけだ。こんな僕は怖い?嫌いになった?」
頭を振った。びっくりした。でも、
「ちょっと怖いけど、嫌いになんかなりません。きっとどんな先輩を見ても嫌いになんてなれない」
これだけは自信をもって言える。
先輩は無表情だった顔を和ませて、安心したようにほうっと息を吐いた。
「良かった。僕も今怖かった。君に本当の姿を見せて嫌われないかって不安だった。一緒だよ。僕も晶馬くんのどんな姿を見ても嫌いになんてなれない。本当に好きなんだ」
「あ……」
唐突に理解した。
隠せるのに、先輩はわざと僕に冷たい目を見せたんだ。僕にもこんな怖い面があるよって教えるために。
先輩も僕に嫌われることは怖い。でも、どんなに怖い姿でも受け入れて欲しいって願ってるし、僕が受け入れるって信じてくれてる。同じなんだ。僕がどんな先輩の姿を見ても嫌わないように、先輩も僕がどんな醜態を晒しても嫌わない。そう教えてくれた。
僕が嫌われることに怯えなくていいように。
僕は充分に愛されている。嫌われることに怯えながら抱かれなくていいんだ――
「……っ、」
涙腺が崩壊した。涙があとからあとから溢れ出て、わあわあ声をあげて泣いた。首に抱きついて頬ずりし、足を絡めてしがみついた。
先輩は赤子をあやすように僕の背中をたたき、ぐちょぐちょに泣きぬれた顔を舌で舐め取って宥めてくれた。
「先輩、先輩、せんぱぃ」
「ねえ、お願いだから李玖《りく》って呼んでみて」
「李玖先輩、李玖さん……」
嬉しくてぎゅうぅっと強くしがみついた。
李玖先輩の劫火は僕を丸ごと焼き尽くした。僕は悶えることしかできない。
首筋に吸い付かれ、舐め上げられてゾクゾクと肌が粟だった。長い指先の大きな手は腰骨をしっかり掴み、僕をぎりぎりまで引き寄せようとする。
「ああっ、ああっ、ああんっ!」
「はっ、はっ、可愛い。晶馬くん、かわいい」
グリッ
「うあぁ、はあ、あぁぁんぅ、李玖《りく》さん、李玖さんっぅう」
角度が変わってひと際大きく悶えた。背中に回していた、汗で滑る手を先輩の髪に差し込むと、吸い込まれそうな瞳が欲望の色を纏って僕を射る。粘液で濡れた柔らかな唇が歯列を割り、熱い舌が絡みついて互いの唾液がクチュ、クチュッと音を立てる。
「ん……んん……はぁ。もっと。はぁ、はぁ、李玖さん、もっと」
「はぁっ、はぁ、どっち?こっち?それともこっち?」
「んああっ!あっ、あぁあぁ、あっ、あっ」
胸の尖りを指の腹で捏ねられ、腰にジン…と重い痺れが走った。身悶え、のけ反った喉を強く吸われ、舐め上げられて背中がのけ反りゾクゾクと逆毛が立った。腰を深く突き入れられ、僕の分身を強く擦られた。
「あぁぅ、だめ、いっちゃう、むりぃ。だめぇ」
「はっ、はっ、どれが、だめ?」
「ぜんぶだめぇ、うぅ、きもち、い、ぜんぶぅ、せんぱいぜんぶぅ」
「ああ、可愛い。はあっ、晶馬、やっとだ、やっと僕のだ……」
「ああ、ああっ、いく、いっちゃう、ほしい、ちょうだい、せんぱい、ぜんぶちょうだい」
「はっ、はっ、李玖って、呼んで、ごらんっ、全部あげるよ、はっ、僕を全部だ、……っ、」
「李玖、りく、ちょうだい!りく!ぜんぶっ、りく、りくっ!……あ!……ああ!あああぁ、ああぁぁっっ!!!」
「っ!……っ!……!!」
ひと際深く突き入れられて胎内がぎゅうぎゅうと収縮した。奥を暴かれて背がのけ反り、足先がつま先立つ。
ビュクッ、ビュクッと白濁が勢いよく飛び、胸から腹あたりをしとどに濡らした。すぐあとに先輩も息を詰めて駆け上がっていった。最奥で動きを止め、びくっ、びくっと痙攣した。
「……っく、……っ、……っ」
先輩の細められた瞳、鼻先から落ちそうな汗。どくり、どくりと胎内に広がった熱。
「はあっ、はあっ」
「はぁはぁ、はぁはぁ」
ぶわっと多幸感が広がった。胸が詰まり涙が溢れ、零れ落ちた。
「李玖さん……好き……好き……」
凄く甘えた声が出た。
「僕もだ。愛してる、晶馬くん」
汗と色気を纏った蕩けるような笑顔を返された。頬ずりされ、涙を舌で拭われる。嬉しくなって力いっぱい抱きつき、幸せの余韻に浸った。
翌日の朝───
「晶馬、晶馬くん、出ておいでよ。お顔見せて。ね、いい子だから。恥ずかしくないよ」
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