おとぎ話の結末

咲房

文字の大きさ
上 下
2 / 81
運命のつがい

運命の相手

しおりを挟む
 あの出会いのあと、運命の番|《つがい》である高村さんとは全く接点がなかった。登録された連絡先を見て名前を知ったくらいで、お互いに名乗りもしなかったことに後で気付き、愕然とした。

 <運命の番>に会えば無条件で恋に落ちると思っていた。すぐに気付いて一目惚れして、その日のうちに恋人同士 になれるって。
 実際、動悸がしたし体も熱くなったし、微笑まれたら恋に落ちたかもしれない。
 でも、目が合った直後の嫌そうな顔と、品定めされた目線に、全てが一瞬にして凍りついた。
 運命の相手というのはこうなのか。
 よく知りもしない相手の顔色ひとつで感情が乱高下して、思考も理性も追いつかない。まして、αに従うさがのΩなら、その存在感は尚更だ。
 本当は、どんな人なのか知りたくて、遠くからでも見ようかと思ったが、視界に入れたらフラフラ近寄りそうだったし、近づくなと言われてた手前どんな顔をされるかと想像するだけで恐怖で動けず、高村さんのことは未だに知らなかった。
 同じゼミを受講してる友達の田中くんが高村さんを知っていたので、どんな人か聞いてみた。

「あまり評判よくないかな。ヒートのΩを見つけたらすぐヤッてるし、普段はそこらの女にも手を出してる。晶馬の相手って本当?言いたくないけど……その……あんまり……」

 言いにくそうに言葉を濁してくれた。
 でも、出会ってしまったのだ。それに僕たちは運命の相手なんだ。怖いけれど、お互い色々知っていけばきっと上手くやっていける筈。



 しばらくは何事もなく、以前と同じように学校生活を送っていたが、ある日の朝、風邪に似た怠さと発熱を感じた。 
 それは段々と酷くなり、一人で立ち上がれなくなってしまった。
 ついに、初めての発情期ヒートが始まったのだ。
 体中から力が抜け、腕さえ上がらない。熱いのに熱は外に出ず溜まる一方で、呼吸も浅く短くなっていた。抑制剤は……ああ、そうだ机の三番目の引き出し……
 思考もふわふわしてきた。
 高村さんに連絡しろと言われていた事を思い出してヒートがきた事をメールし、田中くんには一週間引きこもる事を大学に伝えてもらって、なんとか薬を飲んでベッドに倒れこんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...