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いけない、少しうたた寝をしていたようだ。
遠くに見える山の装いが変わりつつある。
この前まではあんなに笑っていたのに、もうこんなに滴って――
窓の間からひょいと滑り込んできた風に目を細める。
今日は日差しが心地よい。
なんだか懐かしい夢を見た気がする・・・
「ウッス銀次!久しぶり!元気にしてたかよ?」
「ちょっと大河!もう子供じゃないんだからズケズケと入ってかないの!」
お客さんか、珍しいな・・・
ん?
前に何処かで聞いた声のような――
「おう、来たか。コイツだよ俺の右足――」
「「「周三!!!」」」
「あ?何でお前らコイツの名前知ってんだよ」
「うそうそっ周三なの!?こんなに大きくなってぇ。私よ小春、ってもう忘れちゃたよね」
「俺は!?俺の事は覚えてるよな周三!?すげぇリハビリ頑張ったもんなぁ――元気そうで良かった」
あぁ、そうか。覚えてる――
大河は相変わらずうるさいけど、小春は少し大きくなった。
「おい、周三は俺の猫だぞ!お前らどういう事か説明しろ!」
良かった。銀次も楽しそうだ。
『クロちゃん、お願いが1つだけあるの。
銀ちゃんもね事故で片足を失ったの、それからはずっと元気がなくてね・・・
クロちゃん、銀次の友達になってあげてくれないかな?』
多分俺は銀次の、銀次は俺の足になったんだ。
人間は俺を撫でると笑顔になる。
俺はその顔や声が好きだ。
俺は、野生に帰る事を諦めようと思う。
「おい、周三!」
「ねー、周三!」
「な、周三!」
残された寿命は彼等への恩返しに使いたいと、俺はあの日に決めたから。
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