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その日から、俺は最初の檻から出る事にした。
代わって、新しい二階建ての檻のハンモックが俺のお気に入りの場所だ。
早速と俺は行動を開始した。
「あらクロちゃん、ムカデを退治してくれたの!?危ないから今度からは私に言ってね」
危険を排除。
「母さん、クロがまたトカゲを捕ってきてたよ。ちゃんと逃がしておいたからね」
備蓄の手伝い。
そして、1番困難かつ重要な仕事。
「っふぁ!?テメェ、また来やがったな・・・何度も言ってんだろ寄ってくんな!!」
銀次の友達になる事。
「おまっ、ふざけんじゃねー!この服高ぇんだぞ!?穴空いてんじゃねーか!!」
「うわっ!!嘘だろ・・・何だそれカエルか?ちょちょマジか。待て待て待て来んな来んな来んなぁぁぁあーー!!!!」
「しッ!鳴くな、見つかんだろーが。おい!テメェ・・・わざとやってんだろ」
「何がクロちゃんだ、んな面かよ。
――周三。テメェにはそれで十分だ」
※ ※ ※
「んだよ、なんか文句あんのか周三。
・・・しゃーねーな。次帰った時は鰹節でも買ってきてやるよ。じゃあな」
銀次はいつも傷だらけになって帰ってくる。
きっと外で外敵を払ったり、餌を捕るのに苦労しているんだろう。
気持ちは分かる。
俺も最初は不安で一杯だった、だけど大丈夫だ。銀次には俺が着いてる。俺が銀次の足りない足になってやるから――
「!!しゅッ」
『ビッビィーー!!キィィィーー!!!ッグン』
腹の底が冷えるこの感覚。前にも感じた恐怖。
だけど今回は前とは違って怖くはない。
「馬鹿野郎!!勝手に飛び出す奴があるか!!もう少しでバイクに轢かれてたんだぞ!今度は足だけですまなかったかもしれねぇんだ!二度とすんな!!!」
銀次は大声で怒っていたけど、俺を抱いた手は震えていた。
「いや・・・悪いのは俺か・・・
お前は俺を止めようとしたんだろ?
すまない、すまねぇ周三。
・・・・・・もう行かねぇから」
銀次は俺を力いっぱい締め付けていた、毛を少し濡らされたりもしたけど、不思議と嫌な気はしてない。
いつも空いていた何かが埋まっていくような不思議な気持ちがした。
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