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第2章
第6話 水を求めて
しおりを挟むそれにしても暑いな…
歩いているうちに3枚程薬草を拾う事ができたが、暑さで喉が渇いてきた。
流石にこんな所に井戸は作ってないよなぁ。
東の森には川が流れてると言っていたが何の情報も無しに知らない土地に行くのは危険すぎる。
他のプレイヤーはどうしているんだ?
こんなに歩いても1人も出くわさないなんて…
一度上に登ってみるか。
太く立派な蔓が巻きついた登りやすそうな大木を上ってゆく。
木登りも大分板についてきたな。
途中の枝が混み合った所まで登ると木の葉が一枚青く光っている。
これは、アイテムか!
千切ると〈迷彩〉の文字が浮き上がった。
〈迷彩〉?青く光っているし回復アイテムじゃないのか。あと考えられるとしたら効果アイテムか装備アイテムかトラップアイテムって可能性も…
「とりあえず食べてみるか。」
口に入れようとするが入らない。例えるなら磁石の反発のように阻まれてしまう。
他にも握りつぶしたり、叩きつけたり、破ろうとしたりしたがことごとくダメだった。
「開け!ゴマ!」
「これもダメか。あと葉っぱといえば…まぁ違うだろうけど。」
昔絵本で狐や狸が頭に葉っぱを乗せて変化するなんてシーンが描かれていて、みんなで真似をして遊んだような。お?これも記憶か?
ぽんっ!
「うわ!何だ!?爆発した!?」
葉を頭に乗せた途端、全身を覆うほどの真っ白な煙が吹き出した。
煙はすぐに消えたが、服装が兵士の様な迷彩服へと変貌していた。
「〈迷彩〉ってそのままかよ。」
そういえば奴らもこんな服装をしていた気がする。
「これ、何が違うんだ?動きやすいし通気性も上がったみたいではあるが。」
これなら水が出てきてくれた方が遥かにマシだった気がするのだが。
ガサガサッ
地面の方から草を踏みつける音が聞こえる。
そっと枝陰から見下ろすと、ワイバーンが1匹獲物を探しているのか鼻を動かしながら辺りを伺っている。
見つかったらランチだな。
そういえば、コイツらは水分をどう補給しているんだ?
見た事も無いモンスターだが、生き物に変わりはないのだから水分が少なからず必要な筈だ。
飛び立つ様子も無いしついていってみるか。
木の上からワイバーンの後をつけて大分経つが全く此方に気づく様子は無い。
もしかしてこの服のお陰なのか?
中央の森の中だが、大分西の森に近づいてきている気がする。ファーストウルフまで出てきたら厄介だな…
そろそろついて行くのを諦めようかと思った時、ワイバーンが足を止めた。
気づかれたか!?
咄嗟に身を隠すが、目があった訳でもないしと向き直すとワイバーンが見当たらない。
どこへ行った!?
全身の血が引いて手や足先が冷たく凍りつく。
震える腕にぐっと力を込めてワイバーンを探すと前方の少し背の低い木に取り付いてガサゴソと何やら探っている。
喉に詰められた栓が外れ押さえ込まれていた空気が外へと吐き出される。
知らないうちに肩に力が入っていたのか、さっきよりも体が軽く感じた。
近づいてみるとワイバーンは何かを食べているようだ。
木の実…いや、果実か!
大きな実を1つ、また1つと口いっぱいに頬張っている。見たこともない果実だが、果汁をたっぷり蓄えているようで、それはワイバーンの大きな口でも収まりきらず口元から溢れ出ては地面に滴り落ちている。
その様子を見て喉が自然と音をたて、体が猛烈な乾きを訴えてくる。
このままここで生唾を飲んでいたらワイバーンに全て食べ尽くされてしまうかもしれない。
満を持して取りに行く事に決めた。
ワイバーンとは果樹を挟んで反対側で少し距離を取って地面に降りた。
幸い食事に夢中でこちらに気づく気配はない。
今のうちに距離を詰めておこう。
周囲の草木に隠れながら後1メートルという距離まで近づいた時、思いもよらない問題に直面する。
「あれ、絶対届かないよな。」
近くで見ると案外背丈がある果樹で果実は上の方にたわわに実っている。
登れば簡単に取れるが、確実にワイバーンに気づかれるだろう。
クソ~、ここまできて諦められるかよ!
そうしているうちにもワイバーンは実を貪りながら上へ上へと登っていく。
「アイツ、マジで全部食べるんじゃないか?そんなに食ったら腹下すぞ!何個か残して損は無いって!」
ギシッギシギシ
ん?あの木さっきより低くなってないか?
そうか!!ワイバーンの重みでしなってるのか!
これなら取れるかもしれない!
ギシギシギシ
ほらほら、上の実の方が赤く熟れて美味そうだぞ~。
いい子だ、登れ~、登れ~。
ギシギシガサガサッギシ
もう少し…もう少し…。
薄桃色にふっくら膨らんだ実が今にも落ちんばかりにフワリフワリと揺れている。
パキ、ガサガサガサガサ、ギシシッ
「今だ!!」
草陰から飛び出ししなり曲がった木の枝葉に隠れつつ、頭くらいある果実を3つ摘み取り、すかさず草陰まで戻る事が出来た。
「ありがとな、お前について来て正解だったぜ。」
果樹に夢中なワイバーンに別れを告げて森の奥へ身を隠す事にした。
「そろそろいいかな?」
果樹からも大分遠ざかっただろうし、あまり進むと西の森に入りそうだ。
その時、一際大きな大木が目に入った。
大木の根元は地面に行き場を無くしたのか立派な根が地上に這い出している。
根と根の隙間に体を滑り込ませると中はちょっとした空間になっていた。
これは丁度いいシェルターになりそうだな。
小石や砂を手で払い飛ばし果実を置くと、隣に腰を下ろした。
「はぁ~。」
自然と吐き出された息に自分が疲れていた事を実感する。
そういえば、全然休憩を取っていなかったな。
隣から果実の甘い良い香りがする。
思わず垂れそうになった涎を拭うと、1つ掴み取り表面を服で拭ってかぶりつく。
甘く爽やかな果汁が口いっぱいに広がり、喉を通って体中に染み渡っていく。
「これは美味い!アイツが夢中になるのも分かるな!食感は林檎で、味は桃といったところか。これだけ果汁を蓄えていれば水分補給に使えそうだ。」
綺麗に平らげると中から大きな種子が1つ出てきた。
種子は硬く食べられそうにないため残り2つの隣に転がすと、だんだん眠気が襲ってきた。
大の字で寝転がってみると分厚い根肌が顔に見える。
「静かだな。」
隙間々から入り込む光が夜空の様に美しく輝き、土の香りが干したての布団の香りと重なって、疲れた体と怯える心を包み込んでいった。
隣から果実の甘い良い香りがする。
思わず垂れそうになった涎を拭うと、1つ掴み取り表面を服で拭ってかぶりつく。
甘く爽やかな果汁が口いっぱいに広がり、喉を通って体中に染み渡っていく。
「これは美味い!アイツが夢中になるのも分かるな!食感は林檎で、味は桃といったところか。これだけ果汁を蓄えていれば水分補給に使えそうだ。」
綺麗に平らげると中から大きな種子が1つ出てきた。
種子は硬く食べられそうにないため残り2つの隣に転がすと、だんだん眠気が襲ってきた。
大の字で寝転がってみると分厚い根肌が顔に見える。
「静かだな。」
隙間々から入り込む光が夜空の様に美しく輝き、土の香りが干したての布団の香りと重なって、疲れた体と怯える心を包み込んでいった。
ザザザッ、フゥーフゥー。ィーー!
コツッ。
「う!な、何だ?痛え~。」
額に衝撃を受けて目を覚ました。
上から小石が落ちてきたのか、どれくらい寝てたんだ?
ザザッザザザザ。
何かいる!獣か!?もしかして果実の香りを嗅ぎ付けてきたか!?
根の隙間から外を覗くが生き物の姿は確認出来ない。
どうする、外に出るか?ここで様子を見た方がいいか?果実を外に放れば気をひく事が出来るかもしれないが…
あれこれ考えているうちに外は静かになっていた。
「行ったのか?」
このシェルターに守られたのだろうか?
だが、また戻ってくる可能性はある。運が悪ければ仲間を引き連れてくるかもしれない。
「仕方ない、移動するか。」
数分考えて移動する事に決めた。
体についた土埃を払い落とし、果実を2つ抱えて木の根から這い出す。
暗い所で目が慣れてしまったのか、外はとても明るく感じた。
日差しの反射に目を細めつつも、周囲を警戒してまずは、この大木の周辺を歩いてみる事にした。
さっきの音は何だったのだろう…
ワイバーンやファーストウルフの足音とはまるで違っていた。もしや新しい獣か?
「こんな事なら、シュガーにもっと聞いておくんだった。」
ここを曲がれば丁度半周か、そろそろ別の場所へ移動してもいいだろう。
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