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のぶの田楽
事件
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夕食を終えると、晃之進は朔太郎を小上がりに座らせた。
もう日が落ちた。
いつ迎えが来るかもわからない。
「朔太郎さま、今夜お父上さまのところへ帰ることになりました。もうすぐ屋敷から迎えが参ります」
いつもと違いかしこまって晃之進が言う。
のぶはこの段になって、朔太郎の中で父親がどんな存在なのだろうと思いあたった。ともに過ごした一年たらずの間に彼の口から父親についての話を聞いたことはなかった。
「ちちうえさま?」
朔太郎が首を傾げる。
「はい、もともといらっしゃったところへお戻りいただきます」
晃之進が答えると、彼は目を見開いた。もとのところへ戻るという言葉にこれから起こることを理解したようだ。
のぶに向かって問いかける。
「かかさまも?」
すがるような目がつらかった。抱きしめて、「どこへもやらない」と言ってやりたくなるのを堪えてのぶは首を横に振る。
「かかさまは、参りません。さくちゃんひとりでゆくのです。お父上さまに会えるなんて、嬉しいね」
彼の心を挫かぬようにわざと明るい声を出す。だがそれはなんの意味もなさなかった。
「いっしょにきてくれぬのか?」
もやは今にも泣きそうである。
「……行けません」
のぶは声を絞り出す。
朔太郎が立ち上がり、勢いよくのぶに抱きついた。
「いやじゃ、いやじゃ。かかさまといっしょがいい」
ぶんぶんと首を振り訴える。
「さくちゃん……!」
しがみつく彼をのぶも強く抱きしめた。
笑顔で送り出したかったが、やっぱりそれはできなかった。涙が溢れて止まらない。
このまま彼を連れてどこかへ逃げてしまいたい。お役目も、田楽屋も、亭主でさえも捨てたとしても一緒にいられるならそれでいい。
「かかさま、かかさま」
……けれどそれは、叶わぬことなのだ。
「さくちゃん、さくちゃん……」
抱き合い泣くふたりを、晃之進が黙って見つめている。裏口がことりと鳴るのに気がついて立ち上がった。
「ごめん」
低い声で断って、初老の侍がひとり入ってきた。父親からの迎えだ。彼は床に膝をついて、頭を下げた。
「朔太郎さま、お迎えにあがりました」
のぶは身を固くする。
ついにこの時が来てしまった。のぶはここで朔太郎と別れて、侍と晃之進が夜の闇に紛れ屋敷まで朔太郎を連れていくことになっている。
「いやじゃ、ここにおる!」
朔太郎がのぶにしがみついた。その彼の反応に侍は眉をひそめて、忌々しげにのぶを見た。
「さくちゃん、お父上さまが待っていますよ」
のぶは侍へ風呂敷を差し出した。
「朔太郎さまのお荷物です。お屋敷まで一緒にお持ちくださいませ」
着替えのほか風ぐるまや駒など、朔太郎が大切にしている物が入っている。しばらくは寂しくするだろうが、駒やめんこがあれば心が慰められるかもしれない。
「そのようなものは不用。身ひとつでお迎えしろと言われておる」
にべもなく侍は言った。
「ここでの出来事も朔太郎さまにとっては不用のものだ。早く忘れていただかねばならぬ。思い出すようなものは持っていけぬ」
ひどい言葉にのぶは息を呑む。晃之進がなにかを堪えるように息を吐いた。
こんな小さな子にあまりにも酷だと思うけれど、それが父親の指示ならば逆らうことはできなかった。
でもせめて、と思いのぶは急いで風呂敷の包みを解く。中から蒲鉾板の位牌を出して朔太郎に握らせた。
「これをお持ちいただくことをお許しくださいませ」
侍が眉を寄せて朔太郎の手元を見た。
「なんだ、それは」
「お母上さまのご位牌の代わりです。朔太郎さまはこれをお母上さまと思いお持ちになられておりました」
「朔太郎さまの御母堂の位牌は国元にある」
「そ、それはそうですが、それではあまりにも遠すぎます。まだお小さいのですからこうやってお母上さまを近くに感じている必要がございましょう。どうか……どうか」
いくら尊い身の上でも、のぶやここで慣れ親しんだ人たちから突然切り離される朔太郎が不憫だった。
「お殿さまも、お母上さまのことを忘れろとはおっしゃらないでしょう」
流れる涙をそのままに、のぶは訴える。侍がぐっと詰まった。
——その時。
カタンと、裏口の戸が鳴った。
晃之進が刀の柄を握った次の瞬間、黒い影が田楽屋に入ってきた。
「のぶ、下がれ!」
晃之進の低い声を聞いたと同時に身体が動く。朔太郎を抱いて、晃之進の後ろの壁に張り付いた。
「なにやつ」
侍も柄を握って鋭く問う。
相手は三人だった。
皆刀を刺していて布で顔を覆っている。
「その小僧を渡してもらおう」
真ん中の覆面が低い声で言う。
「お前……榊原か?」
その声に侍は反応した。相手は答えなかったが、確信があるようだ。
「このようなことをしてなになる? おぬしらの処分は覆らん」
悔しそうに問いかける。
相手は三人、こちらは二人、しかも後ろに女と子供だ。こちらが分が悪い。
榊原と呼ばれた真ん中の侍が笑った。
「さぁなぁ、だが、おれたちの恨みは晴らせるだろう」
そう言って、のぶと晃之進を見た。
「お前たちにゃ恨みはない。用があるのは、そのぼうずだ。大人しく渡せば、お前たちには手出しはせぬ」
「い、嫌です‼︎」
朔太郎を抱きしめて震える声でのぶは叫んだ。朔太郎を差し出して、自分だけ助かるなんて絶対に嫌だった。
「どこのどなたさまかは知らねえが、この子はうちの大事な子にございます。お引き取りください」
晃之進も低い声できっぱりと言う。
「……仕方ない」
榊原が言うと、それを合図に全員が抜刀しする。薄暗い中に刃が白く冷たく光った。
キンキンと鐘がぶつかる音と、「ぐあ」といううめき声。朔太郎の頭を抱きのぶは覆い被さる。
しばらくして目を開くと榊原以外のふたりは床にうずくまっている。晃之進の刀に跳ね返され、峰打ちを食らったのだ。
「おぬし……何者だ」
榊原が訝しむように問いかけた。
藩士の刀を、やすやすとかわす晃之進が只者ではないと踏んだのだろう。
晃之進が答えた。
「北町奉行所、隠密廻同心安居倉之助が手先、安居晃之進にござる」
「はっ! 不浄役人の手先か。お主の管轄は町方だろう。でしゃばるな」
「ここにいるは、某の妻と息子。うろんなやつらから守るのに、侍も町方もごらざらん。……ここで引かぬなら、次は切り捨てる」
そう言って柄をかちゃりと回す。
後ろのふたりが「ひっ」と言って、這うように逃げ出した。榊原が振り返り「くそっ」と吐き捨ててから出ていった。
のぶはホッと息を吐いた。
「今の者どもは」
晃之進が初老の侍に問いかける。厳しい声音になっているのは、朔太郎を心配してのことだろう。藩内部の者ならば屋敷へ連れていっても安全は確保できない。
初老の侍が苦々しげに答えた。
「つい最近、我が藩にて不正が発覚し処分された者どもだ。恨みを募らせてこのような行為に出たのかと。屋敷へ行けば、朔太郎さまはわしが命に代えてもお守りする」
「ならば行こう」
そう決断を下すが、朔太郎はさきほどの恐怖から抜けられず、ひしっとのぶにくっついたままだ。
「のぶ、お前も来い」
その言葉に頷いて、のぶは蒲鉾板を握りしめる朔太郎を抱えたまま立ち上がる。裏口から、四人は冷たい夜の町へ出た。
もう日が落ちた。
いつ迎えが来るかもわからない。
「朔太郎さま、今夜お父上さまのところへ帰ることになりました。もうすぐ屋敷から迎えが参ります」
いつもと違いかしこまって晃之進が言う。
のぶはこの段になって、朔太郎の中で父親がどんな存在なのだろうと思いあたった。ともに過ごした一年たらずの間に彼の口から父親についての話を聞いたことはなかった。
「ちちうえさま?」
朔太郎が首を傾げる。
「はい、もともといらっしゃったところへお戻りいただきます」
晃之進が答えると、彼は目を見開いた。もとのところへ戻るという言葉にこれから起こることを理解したようだ。
のぶに向かって問いかける。
「かかさまも?」
すがるような目がつらかった。抱きしめて、「どこへもやらない」と言ってやりたくなるのを堪えてのぶは首を横に振る。
「かかさまは、参りません。さくちゃんひとりでゆくのです。お父上さまに会えるなんて、嬉しいね」
彼の心を挫かぬようにわざと明るい声を出す。だがそれはなんの意味もなさなかった。
「いっしょにきてくれぬのか?」
もやは今にも泣きそうである。
「……行けません」
のぶは声を絞り出す。
朔太郎が立ち上がり、勢いよくのぶに抱きついた。
「いやじゃ、いやじゃ。かかさまといっしょがいい」
ぶんぶんと首を振り訴える。
「さくちゃん……!」
しがみつく彼をのぶも強く抱きしめた。
笑顔で送り出したかったが、やっぱりそれはできなかった。涙が溢れて止まらない。
このまま彼を連れてどこかへ逃げてしまいたい。お役目も、田楽屋も、亭主でさえも捨てたとしても一緒にいられるならそれでいい。
「かかさま、かかさま」
……けれどそれは、叶わぬことなのだ。
「さくちゃん、さくちゃん……」
抱き合い泣くふたりを、晃之進が黙って見つめている。裏口がことりと鳴るのに気がついて立ち上がった。
「ごめん」
低い声で断って、初老の侍がひとり入ってきた。父親からの迎えだ。彼は床に膝をついて、頭を下げた。
「朔太郎さま、お迎えにあがりました」
のぶは身を固くする。
ついにこの時が来てしまった。のぶはここで朔太郎と別れて、侍と晃之進が夜の闇に紛れ屋敷まで朔太郎を連れていくことになっている。
「いやじゃ、ここにおる!」
朔太郎がのぶにしがみついた。その彼の反応に侍は眉をひそめて、忌々しげにのぶを見た。
「さくちゃん、お父上さまが待っていますよ」
のぶは侍へ風呂敷を差し出した。
「朔太郎さまのお荷物です。お屋敷まで一緒にお持ちくださいませ」
着替えのほか風ぐるまや駒など、朔太郎が大切にしている物が入っている。しばらくは寂しくするだろうが、駒やめんこがあれば心が慰められるかもしれない。
「そのようなものは不用。身ひとつでお迎えしろと言われておる」
にべもなく侍は言った。
「ここでの出来事も朔太郎さまにとっては不用のものだ。早く忘れていただかねばならぬ。思い出すようなものは持っていけぬ」
ひどい言葉にのぶは息を呑む。晃之進がなにかを堪えるように息を吐いた。
こんな小さな子にあまりにも酷だと思うけれど、それが父親の指示ならば逆らうことはできなかった。
でもせめて、と思いのぶは急いで風呂敷の包みを解く。中から蒲鉾板の位牌を出して朔太郎に握らせた。
「これをお持ちいただくことをお許しくださいませ」
侍が眉を寄せて朔太郎の手元を見た。
「なんだ、それは」
「お母上さまのご位牌の代わりです。朔太郎さまはこれをお母上さまと思いお持ちになられておりました」
「朔太郎さまの御母堂の位牌は国元にある」
「そ、それはそうですが、それではあまりにも遠すぎます。まだお小さいのですからこうやってお母上さまを近くに感じている必要がございましょう。どうか……どうか」
いくら尊い身の上でも、のぶやここで慣れ親しんだ人たちから突然切り離される朔太郎が不憫だった。
「お殿さまも、お母上さまのことを忘れろとはおっしゃらないでしょう」
流れる涙をそのままに、のぶは訴える。侍がぐっと詰まった。
——その時。
カタンと、裏口の戸が鳴った。
晃之進が刀の柄を握った次の瞬間、黒い影が田楽屋に入ってきた。
「のぶ、下がれ!」
晃之進の低い声を聞いたと同時に身体が動く。朔太郎を抱いて、晃之進の後ろの壁に張り付いた。
「なにやつ」
侍も柄を握って鋭く問う。
相手は三人だった。
皆刀を刺していて布で顔を覆っている。
「その小僧を渡してもらおう」
真ん中の覆面が低い声で言う。
「お前……榊原か?」
その声に侍は反応した。相手は答えなかったが、確信があるようだ。
「このようなことをしてなになる? おぬしらの処分は覆らん」
悔しそうに問いかける。
相手は三人、こちらは二人、しかも後ろに女と子供だ。こちらが分が悪い。
榊原と呼ばれた真ん中の侍が笑った。
「さぁなぁ、だが、おれたちの恨みは晴らせるだろう」
そう言って、のぶと晃之進を見た。
「お前たちにゃ恨みはない。用があるのは、そのぼうずだ。大人しく渡せば、お前たちには手出しはせぬ」
「い、嫌です‼︎」
朔太郎を抱きしめて震える声でのぶは叫んだ。朔太郎を差し出して、自分だけ助かるなんて絶対に嫌だった。
「どこのどなたさまかは知らねえが、この子はうちの大事な子にございます。お引き取りください」
晃之進も低い声できっぱりと言う。
「……仕方ない」
榊原が言うと、それを合図に全員が抜刀しする。薄暗い中に刃が白く冷たく光った。
キンキンと鐘がぶつかる音と、「ぐあ」といううめき声。朔太郎の頭を抱きのぶは覆い被さる。
しばらくして目を開くと榊原以外のふたりは床にうずくまっている。晃之進の刀に跳ね返され、峰打ちを食らったのだ。
「おぬし……何者だ」
榊原が訝しむように問いかけた。
藩士の刀を、やすやすとかわす晃之進が只者ではないと踏んだのだろう。
晃之進が答えた。
「北町奉行所、隠密廻同心安居倉之助が手先、安居晃之進にござる」
「はっ! 不浄役人の手先か。お主の管轄は町方だろう。でしゃばるな」
「ここにいるは、某の妻と息子。うろんなやつらから守るのに、侍も町方もごらざらん。……ここで引かぬなら、次は切り捨てる」
そう言って柄をかちゃりと回す。
後ろのふたりが「ひっ」と言って、這うように逃げ出した。榊原が振り返り「くそっ」と吐き捨ててから出ていった。
のぶはホッと息を吐いた。
「今の者どもは」
晃之進が初老の侍に問いかける。厳しい声音になっているのは、朔太郎を心配してのことだろう。藩内部の者ならば屋敷へ連れていっても安全は確保できない。
初老の侍が苦々しげに答えた。
「つい最近、我が藩にて不正が発覚し処分された者どもだ。恨みを募らせてこのような行為に出たのかと。屋敷へ行けば、朔太郎さまはわしが命に代えてもお守りする」
「ならば行こう」
そう決断を下すが、朔太郎はさきほどの恐怖から抜けられず、ひしっとのぶにくっついたままだ。
「のぶ、お前も来い」
その言葉に頷いて、のぶは蒲鉾板を握りしめる朔太郎を抱えたまま立ち上がる。裏口から、四人は冷たい夜の町へ出た。
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