渡り廊下の恋

抹茶もち

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え、嫌ですけども

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 そんなこんなでほぼ結翔を見るだけで終わった午前中。

 なんとか結翔の昼時間を確保できたけど、今日だけは蜜樹に邪魔される訳にはいかない。ぜっっってぇ2人っきりで過ごすんだ。

 だからいつも昼を過ごしている屋上じゃなくて誰も来ない空き教室に誘導する事にした。だって蜜樹、今日は絶対乱入してくる気がするんだよな。まぁそうじゃなくても念には念をってやつだ。


 結翔の細い腰に手を添えて空き教室まで連れて行くと、空き教室が物珍しかったのかキョロキョロ周りを見回す結翔に思わず顔が緩んでしまう。結翔は何してても本当に可愛い、なんて思いながらちゃんと鍵も閉めて・・・コレでおっけ。もう誰にも邪魔されない。


 キョロキョロしている結翔は可愛いからひとまずそのままにしておいて、適当なところに座って昼の準備を済ませる事にした。

 結翔から預かっていた弁当箱、今日は大きいのが1つ。

 俺、学校行事ですら弁当なんて作ってもらったこと無かったからさ、チビの頃は学校行事がある毎に家族で重箱の弁当を食べてるクラスメイト達を羨みながらも、なんとも思ってませんって顔をしながら持たされた仕出し弁当を1人で食ってたんだ。

 正直憧れだった重箱の弁当。俺の可愛い恋人が叶えてくれた、チビの頃の俺の願望。


 暖かくなった気持ちを噛み締めながら弁当箱を開けると、なんかすげぇ豪華だった。


 コレ・・・かまぼこだよな?どうなってんだ?すげぇ手が込んでる。アレだ、毎年正月に親が買ってきたんだろうおせちの中に入ってるやつ。コレ、プロじゃなくても作れるのか?俺の知ってる市販のかまぼこじゃねぇのかな?もう形ができてるやつ?

 なんて思いながらも準備が出来たから、未だキョロキョロと教室を見回し続けてる結翔に声をかけるとハッとした結翔が目をまん丸にして頷いたと思ったら俺の横まで駆け寄ってきた。


 俺、結翔が駆け寄って来てくれるの見るの、すげぇ好き。なんか毎回噛み締めちまう。


 そのまま隣に座った結翔に無意識でピタリとくっついて、開けた瞬間から目に入っていたかまぼこの話をすると結翔の父さんが作ったんだって教えてくれた。


 結翔の父さん、こんなの出来るなんてマジすげぇ。料理人じゃん、つか結翔の鼻歌とかすげぇ聴きてぇ、ぜってぇ可愛いやつじゃん、なんて色々思ったけど。

 何よりも結翔の父さんは本当に結翔の事を愛してるんだなって。すげぇ良い父さんじゃんね。なんか良いなぁ、きっと結翔の家族は結翔と一緒で温かいんだろうな。



 良い父さんだなって言ったらさ、結翔がちょっと気恥ずかしそうに、でもすげぇ嬉しそうに笑うからさ、結翔も家族の事すげぇ愛してんだなって・・・なんか俺の胸もまた温かくなった。結翔と結婚したら結翔ん家みたいに温かい家庭を作りてぇな。


 なんて俺が気が早い事考えてたらさ、結翔が『父さんみたいになんでも美味しく作れるようにもっと頑張りますねっ!』なんて健気な事言ってさ、『そしてあわよくば蓮先輩の胃袋をガッツリ掴んじゃうのだっ!』って、多分結翔は声に出してる自覚無かったんだろうけど、ボソボソそう言いながら気合い入れてて。





 ・・・あー、もう堪んねぇって、飯食い終わるまではって我慢してたキス、我慢できなくて何度もしてしまった。

 相変わらずキスだけでふにゃふにゃになる結翔が可愛くて堪んねぇ。いつもは純粋で色なんて全然感じないのに、こうやってキスをすると俺の理性試してんの?って聞きたくなるくらいトロンとしたエロい顏になる結翔。本当はもっといろんな所を触って、舐めて、トロトロに溶かしてまん丸の瞳から涙が溢れるくらいに鳴かせてぇ。


 ・・・・・・いつも俺の理性はギリギリだけど、結翔との初めての計画はちゃんと考えてるんだ。長期休暇で一緒に泊まりで旅行に行って、楽しく2人で観光なんかしてさ。そんで温泉旅館で大事に大事に抱くんだ。結翔にとってちゃんと幸せな思い出にしてもらえるように、すげぇ調べた。初体験、どんなシチュエーションがいいかなんて俺全然思い付かなかったから。



 と言うことで今日もちゃんと我慢。もう自分で言っちゃうけどさ、好きな奴のエロい顔見ながら我慢できる俺、まじ偉いと思う、なんて思いながら結翔を膝に乗せていつものように食べさせっこで飯を食った。

 食わせあいって、なんか良いよなぁ。俺、自分がこんなベタな事したがるなんて結翔と付き合って初めて知った。多分結翔とならベタの総なめ出来ると思う。むしろ嬉々としてやる自信があるね。




 まぁそれは置いといて。着々と無くなっていく弁当に比例して、俺は柄にもなく緊張してきてしまう。


 そう、デザートタイムだ。檸檬の蜂蜜漬け、結翔は喜んでくれるだろうかって。よく考えたら人生初めての料理を好きなやつに食わせるって結構ハードル高いな。結翔に喜んでもらいたいとか、結翔の体が心配だとか、そっちばっかりに意識が行ってたからずっと気付かなかった。今更胸がバクバクしてる。



 精一杯普段通りを装いながら結翔に保冷バックをそのまま渡したんだ。

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