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え、嫌ですけども
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色々調べて檸檬の蜂蜜漬けに辿り着いた俺はとりあえず材料を買って作ってみたんだけど。
普段料理しねぇから包丁を使うことも無い俺が作れたのは、相当不恰好な分厚い輪切り檸檬だった。あの時はぶっつけ本番にしなくて良かったって本気で胸を撫で下ろしたくらい下手くそだったんだよなぁ。
それから何回も練習してなんとか見れないこともない出来栄えまで持ってこれたコイツを、今日結翔にデザートとして食べてもらう為に学校へ持っていくのだ。
・・・有象無象に食わせるんだったら何でも良いけど、結翔に食ってもらうと思うと正直緊張するな。
無駄に大きく息を吐いてから、何を買った時かは覚えてねぇけど何かしらの食べ物を買った時の保冷バックみたいなやつに、檸檬の蜂蜜漬けとでかい保冷剤を入れておく。
コレでよし、ってひとつ頷いてからそれを鞄に突っ込んで家を出た。
結翔も今日はジャージで登校すんのかな?結翔、いっつもハーフパンツ履いてるから歩くたびに可愛い膝小僧がチラチラ覗くのがたまんねぇんだよなぁ。
長ズボンは転びすぎて穴が開いちゃうから着ないんですっ!っていつぞや言っていた。可愛いかよ。でも結翔の膝小僧に傷が出来るよりジャージに穴が開くほうが俺は良いと思うんだけどなぁ。結翔って変な所で意外と頑固なんだよな。
結翔の可愛い膝小僧に思いを馳せていたらあっという間に結翔の家の前まで着いていたから、定位置となりつつあるいつもの場所で大人しく結翔が出てくるのを待つ。
やっぱり俺、人を待つのは嫌いだけど結翔を待つのだけは好きみたいなんだよな。俺が勝手に待っていても結翔なら嫌な顔をしない。いつも笑って嬉しそうに受け入れてくれるって信じられるからかも、なんてな。
そんなことを考えているといつものように元気よく玄関を出てきた結翔が俺の方に視線を向けてパッと笑顔になる。
あんなふうにいつも嬉しそうに駆け寄ってくれる結翔に、俺がいつも救われた気持ちになってるなんて結翔は考えた事もねぇんだろうな、なんて思いながら結翔に挨拶を返した。
そしてやっぱり今日も結翔はハーフパンツだった。くっそ可愛い。やっぱこんな可愛い結翔、誰にも見せたくねぇなぁ。でも閉じ込めとくわけにもいかねぇし・・・。誰にもちょっかいかけられねぇようにするのってどうしたら良いんだ?結翔の可愛い頬っぺたに俺の名前でも書いて俺のだって分かるようにしとけばいいのか?
・・・なんて結翔の可愛さにちょっと乱心したけど、結翔を思いっきり抱きしめて堪能させてもらったからちょっと落ち着いた。
よく考えたらそもそも俺のジャージ着せとくつもりだったわ。充分「俺の」感出るよな、うん。
それからいつものように他愛もない話をしながら結翔を教室まで送って、可愛い頭を撫でてから自分の教室に向かった。
・・・本当は同じ団なんだしこのまま一緒に居れたらいいのにってかなり後ろ髪引かれたけど我慢した。今日は普通の授業の時より長時間一緒に居れる筈だしな。
「あぁ~!やぁっときたっ!蓮、棒倒し出てぇ~!」
「は?何でだよ。嫌だし」
体育祭当日だからか、いつもよりうわついた空気の中教室に入ると、突然蜜樹がそう叫びながら突進してきて。
せっかく結翔の事考えて気分が良かったのに、と蜜樹をジトリと見るがアイツは全く気にせず話を続けてくる。蜜樹だもんなぁ。はぁ・・・。
「あのねぇ~、元々棒倒しに出るはずだった子が最後の練習で怪我しちゃったみたいでぇ、代打が必要みたいなんだよねぇ~。それなら代打は蓮がいいよねぇって!」
「はぁ?何で俺なんだよ。お前がやれば?ただでさえ3競技出るのに棒倒しまでやってらんねぇよ」
「ん~・・・、別に俺が出ても良いんだけどぉ~?でもでもぉ、去年はあーんなにやる気が無かった蓮が3競技も出るって事はぁ、ゆいくんに良い所見せたいんでしょお?棒倒しなんて花形競技に出なくて良いのぉ?ゆいくんに格好良いってもおぉっと惚れ直してもらえるかもしれないのにぃ?」
ニンマリと悪い顔をしながら笑う蜜樹に思わずグッと口籠もる。確かに結翔、あぁいうのキラッキラした瞳で見てくれそうなんだよなぁ。出たら絶対喜んで可愛い顔してくれるだろうし。
「ま、出ないなら俺が出るから良いよぉ~?ゆいくんに俺の事見ててねって言っておいたらぁ、最初は興味なかったとしても良い子だからきっとちゃあんと応援してくれるしぃ~、俺の活躍見てちょっとでも俺に興味持ってくれたら儲けもんだしぃ?」
「・・・俺が出る」
「え?なんてぇ?」
・・・・・・クッソニヤニヤしやがって。結翔がコイツに興味持つとかマジで無理ありえねぇ結翔は俺のだし。
「だから!俺が出るっつたんだよ」
「いぇ~いっ!そぉこなくっちゃあ!聞いた?ねぇみんな聞いたぁ?俺凄くなぁい?お礼は渡り廊下のパックのミルクティーで良いよぉ~!」
・・・・・・なんか結翔をダシに良いように乗せられた感満載だよなぁ。まぁいいや、結翔がコイツの毒牙にかかりそうになるくらいなら何だってやってやるさ。
クラス中から聞こえてくる控えめな「ありがとうございます・・・!」をバックにそう思いつつも思わずはぁ、と大きくため息を吐いてしまった。
とりあえず蜜樹、いつか覚えてろよ。
普段料理しねぇから包丁を使うことも無い俺が作れたのは、相当不恰好な分厚い輪切り檸檬だった。あの時はぶっつけ本番にしなくて良かったって本気で胸を撫で下ろしたくらい下手くそだったんだよなぁ。
それから何回も練習してなんとか見れないこともない出来栄えまで持ってこれたコイツを、今日結翔にデザートとして食べてもらう為に学校へ持っていくのだ。
・・・有象無象に食わせるんだったら何でも良いけど、結翔に食ってもらうと思うと正直緊張するな。
無駄に大きく息を吐いてから、何を買った時かは覚えてねぇけど何かしらの食べ物を買った時の保冷バックみたいなやつに、檸檬の蜂蜜漬けとでかい保冷剤を入れておく。
コレでよし、ってひとつ頷いてからそれを鞄に突っ込んで家を出た。
結翔も今日はジャージで登校すんのかな?結翔、いっつもハーフパンツ履いてるから歩くたびに可愛い膝小僧がチラチラ覗くのがたまんねぇんだよなぁ。
長ズボンは転びすぎて穴が開いちゃうから着ないんですっ!っていつぞや言っていた。可愛いかよ。でも結翔の膝小僧に傷が出来るよりジャージに穴が開くほうが俺は良いと思うんだけどなぁ。結翔って変な所で意外と頑固なんだよな。
結翔の可愛い膝小僧に思いを馳せていたらあっという間に結翔の家の前まで着いていたから、定位置となりつつあるいつもの場所で大人しく結翔が出てくるのを待つ。
やっぱり俺、人を待つのは嫌いだけど結翔を待つのだけは好きみたいなんだよな。俺が勝手に待っていても結翔なら嫌な顔をしない。いつも笑って嬉しそうに受け入れてくれるって信じられるからかも、なんてな。
そんなことを考えているといつものように元気よく玄関を出てきた結翔が俺の方に視線を向けてパッと笑顔になる。
あんなふうにいつも嬉しそうに駆け寄ってくれる結翔に、俺がいつも救われた気持ちになってるなんて結翔は考えた事もねぇんだろうな、なんて思いながら結翔に挨拶を返した。
そしてやっぱり今日も結翔はハーフパンツだった。くっそ可愛い。やっぱこんな可愛い結翔、誰にも見せたくねぇなぁ。でも閉じ込めとくわけにもいかねぇし・・・。誰にもちょっかいかけられねぇようにするのってどうしたら良いんだ?結翔の可愛い頬っぺたに俺の名前でも書いて俺のだって分かるようにしとけばいいのか?
・・・なんて結翔の可愛さにちょっと乱心したけど、結翔を思いっきり抱きしめて堪能させてもらったからちょっと落ち着いた。
よく考えたらそもそも俺のジャージ着せとくつもりだったわ。充分「俺の」感出るよな、うん。
それからいつものように他愛もない話をしながら結翔を教室まで送って、可愛い頭を撫でてから自分の教室に向かった。
・・・本当は同じ団なんだしこのまま一緒に居れたらいいのにってかなり後ろ髪引かれたけど我慢した。今日は普通の授業の時より長時間一緒に居れる筈だしな。
「あぁ~!やぁっときたっ!蓮、棒倒し出てぇ~!」
「は?何でだよ。嫌だし」
体育祭当日だからか、いつもよりうわついた空気の中教室に入ると、突然蜜樹がそう叫びながら突進してきて。
せっかく結翔の事考えて気分が良かったのに、と蜜樹をジトリと見るがアイツは全く気にせず話を続けてくる。蜜樹だもんなぁ。はぁ・・・。
「あのねぇ~、元々棒倒しに出るはずだった子が最後の練習で怪我しちゃったみたいでぇ、代打が必要みたいなんだよねぇ~。それなら代打は蓮がいいよねぇって!」
「はぁ?何で俺なんだよ。お前がやれば?ただでさえ3競技出るのに棒倒しまでやってらんねぇよ」
「ん~・・・、別に俺が出ても良いんだけどぉ~?でもでもぉ、去年はあーんなにやる気が無かった蓮が3競技も出るって事はぁ、ゆいくんに良い所見せたいんでしょお?棒倒しなんて花形競技に出なくて良いのぉ?ゆいくんに格好良いってもおぉっと惚れ直してもらえるかもしれないのにぃ?」
ニンマリと悪い顔をしながら笑う蜜樹に思わずグッと口籠もる。確かに結翔、あぁいうのキラッキラした瞳で見てくれそうなんだよなぁ。出たら絶対喜んで可愛い顔してくれるだろうし。
「ま、出ないなら俺が出るから良いよぉ~?ゆいくんに俺の事見ててねって言っておいたらぁ、最初は興味なかったとしても良い子だからきっとちゃあんと応援してくれるしぃ~、俺の活躍見てちょっとでも俺に興味持ってくれたら儲けもんだしぃ?」
「・・・俺が出る」
「え?なんてぇ?」
・・・・・・クッソニヤニヤしやがって。結翔がコイツに興味持つとかマジで無理ありえねぇ結翔は俺のだし。
「だから!俺が出るっつたんだよ」
「いぇ~いっ!そぉこなくっちゃあ!聞いた?ねぇみんな聞いたぁ?俺凄くなぁい?お礼は渡り廊下のパックのミルクティーで良いよぉ~!」
・・・・・・なんか結翔をダシに良いように乗せられた感満載だよなぁ。まぁいいや、結翔がコイツの毒牙にかかりそうになるくらいなら何だってやってやるさ。
クラス中から聞こえてくる控えめな「ありがとうございます・・・!」をバックにそう思いつつも思わずはぁ、と大きくため息を吐いてしまった。
とりあえず蜜樹、いつか覚えてろよ。
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