渡り廊下の恋

抹茶もち

文字の大きさ
上 下
78 / 110
え、嫌ですけども

7

しおりを挟む
 蓮先輩に連れられて入った空き教室は、机が全部後ろに下げられている状態になっていていて。

 ココって何に使っていた教室なんだろう?なんて思わず観察するように眺めてしまう。



 「結翔、こっちおいで。食べよ?」


 キョロキョロと忙しなく視線を移動させている僕を呼んだ蓮先輩はいつの間にか窓側に座っていて、持ってくれていたお弁当を広げてくれていた。



 いつの間に!?って慌てて頷いて蓮先輩の方に駆け寄って座ると、いつもみたいに隙間がないくらいピッタリとくっついてくれて。

 それがなんだか嬉しくて、えへへって頬が緩んじゃう。



 「それにしても今日の弁当すげぇな!いつも美味いけど今日はいつも以上に気合い入ってる気がする。かまぼこ、店のやつみてぇ」

 「あ、かまぼこは父さんが切ったんですよ。僕、運動苦手だから今まで体育祭の時ってすごく憂鬱だったんですけど、今回は匠ともたくさん練習したし、蓮先輩の格好良い所が見れるんだなぁって思ったらすごく楽しみになっちゃって。思わず鼻歌なんて歌っちゃってたんです。それでびっくりしてた父さんに体育祭が楽しみだって言ったらすっごく喜んで、張り切って切ってくれたんですよ」

 「そうなんだ。結翔の父さんってすげぇんだなぁ。それに結翔が楽しみだって言ってんのをそんな風に喜んでくれるって・・・結翔の父さんは本当に良い父さんなんだな」


 感心したみたいにかまぼこをいろんな角度から見ていた蓮先輩に父さんを褒められて、嬉しいような擽ったいような気持ちになっちゃった僕はヘラりと照れ笑いを浮かべてしまう。



 「えへへ・・・。父さんの事、そんなふうに褒めてもらえるの嬉しいです。ありがとうございます、蓮先輩っ!でも蓮先輩にうちの父さんを褒められるの、なんだか嬉しいし・・・擽ったいですね。それに僕の料理の師匠は父さんなので、僕も父さんみたいになんでも美味しく作れるようにもっと頑張りますねっ!」



 そしてあわよくば蓮先輩の胃袋をガッツリ掴んじゃうのだっ!


 ふんっ!って気合を入れ直した僕を何故か目を細めてジッと見つめる蓮先輩に気付いて、ん?って首を傾げるとそっと頬に手を添えられて。




 気付けば僕の唇に少し冷たい蓮先輩の唇が触れていた。




 「・・・んっ」



 何度か啄むようなキスを僕に落とした蓮先輩はちゅぷりとわざと音を立てて唇を離し、今度は僕の耳元に唇を寄せる。




 「・・・結翔の家族思いで頑張り屋な所、すげぇ好きだよ。でも俺、もうとっくに結翔に胃袋掴まれてんだよ?知らなかった?」

 「へ・・・っ?あっ、まっ、蓮せんぱ・・・んぅっ!」



 少し掠れた甘い声で囁かれ。



 え?僕、もしかして声に出してた!?っていうか蓮先輩に頑張り屋な所が好きって言われた!?あれ!?夢・・・じゃないよね!?



 なんて混乱している間に耳に何度もキスを落とされ、ちゅっ、ちゅっ、とリップ音が耳に響いて。



 「は・・・っ、あ、んぅっ!ん・・・んぁ・・・っ」



 ビクビクと体を震わせながら蓮先輩を止めようとしたんだけど、口からは意味のない甘ったるい声が出てしまうだけで。



 されるがままになっていたらふにゃりと体の力が抜けちゃって、蓮先輩の腕にギュッてしがみついた。




 「・・・可愛いな。もっとしたいけど後でゆっくり、かな。さすがに飯食わねぇとだし。せっかく結翔が頑張って作ってくれたんだしな。ほら、結翔には俺が食わせてあげる」




 腕にしがみついた僕の頭を優しく撫でてくれた蓮先輩に耳元から唇を離さずそう囁かれ。



 
 その甘いのに有無を言わせない声色にコクコクと頷くと、いつもデザートを食べる時みたいにヒョイっと蓮先輩の膝の上に乗せられてしまった。




 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

真柴さんちの野菜は美味い

晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。 そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。 オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。 ※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。 ※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。

ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗
BL
夏休み中に家族で田舎の祖母の家に帰省中、突如Ωになりヒートをおこした僕。 そして豹変したように僕に暴言を吐き、荒れ狂う祖母。 呆然とする父。 何も言わなくなった母。 そして、僕は今、田舎の小さな無人駅で一人立ち尽くしている。 こんな僕だけど、ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか。 初BL&オメガバース連載で、オメガバースは三ヶ月前に知った、超が付く初心者です。 そのため、ふんわり設定です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...