渡り廊下の恋

抹茶もち

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アニマルセラピー

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「今日はお前だけなの?」

腕の中で真っ赤になっている結翔をそのままに、蓮は周囲をキョロッと見回して匠へ問いかけた。


「あ、はい、今日は僕とゆいだけです」


「ふーん・・・。アイツは居ないんだ」


未だ目を丸くしている匠の答えに満足そうにフッと笑った蓮はポツリとそう呟いてご機嫌な様子で続ける。


「ねぇ、このまま結翔引き取っていい?」

「・・・ッ!そりゃあもう!ぜひ!どうぞ!」

「さんきゅ。じゃ、結翔いくよ。家どっち?」


結翔が喜びそうな状況に満面の笑みを浮かべてそう言った匠にニヤリと笑ってお礼を言った蓮は、腕の中に抱き込んでいた結翔の顔を覗き込んだ。

その大事なものを見るような優しい表情に匠はまた鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまう。



「へ?あ、えっと、あっち、です・・・!」

急に蓮の顔が視界いっぱいに広がって驚いた結翔は思わず素直に答え、それに機嫌良さそうに笑った蓮は結翔の手を取って結翔が示した方向へ歩き始めた。


「えぇ・・・!?あ、匠!ごめん、また明日ね!」


蓮先輩に手を引かれながらも慌てて匠に手を振った結翔に手を振り返した匠は先程起こった出来事を反芻した。




“アイツ”はきっと静の事だろうと当たりを付けてニンマリと笑う。


───なんだ、本当に脈アリっぽいじゃん。っていうか思ったより田原先輩の方がゆいの事好きなんじゃないのかな。



そう考えながら2人と逆方向へ足を向ける。


なんだか2人を見てたら僕も陸に会いたくなって来ちゃった。今日は会うつもりなかったけど・・・連絡してみちゃおっかな?



家への道を進みながらそんなふうに思った匠は携帯に見慣れたナンバーを表示させて電話を鳴らした。




✱✱✱



「あの・・・蓮先輩も駅前に用事があったんですか?」


なんだかやけにご機嫌な様子で僕の手を引く蓮先輩に思わずそう問いかけると、蓮先輩がこてりと首を傾げた。


「なんで?俺は結翔が駅前居るって連絡くれたから今日はバイト無いし送って帰ろうと思って来ただけ。バイト先この辺だからバイト先で時間潰して待ってた」

「へ!?そうなんですか!?」


わざわざ僕の為に駅前まで来てくれたんだと知って目がまん丸になる。


「あぁ。・・・・・・それに誰と一緒なのか気になったし」

「え?」


なんで?と思わずキョトリとしていると、少し罰の悪そうな顔になった蓮先輩が足を止めた。


「・・・ごめん、迷惑だったか?」


そのしょぼんとした様子に、そんな場合じゃ無いのに思わず胸がキュンとする。


「まさか・・・!次蓮先輩に会えるのは明日のお昼だって思ってたから会えて嬉しいくらいなのに。それに僕が蓮先輩を迷惑だって思うなんてぜーったいにあり得ませんっ!」

「本当に?」

「本当ですっ!」

「嫌じゃなかった?」

「1ミリも嫌じゃ無いですっ!」

「じゃあまた迎えに来ていい?」

「もちろんで・・・え?」


勢いのままコクリと頷いてから、あれ?と首を傾げる。



「っしゃ。じゃあ次からも迎えに行くから」


蓮先輩を見上げると、いたずらっ子のような顔をして笑っていた。あれれ?


「蓮先輩?あれ?なんでそんな事に?」


「ん~?俺が結翔を迎えに行きたいんだもん。それより結翔、明日の弁当のメイン何?」


だもんって言った!蓮先輩が!だもんって!!


蓮先輩が可愛いよぉ!なんて結翔が動揺している間に、サラリと話がすり替えられる。

結翔は意図的に話が逸らされた事に気付かず、蓮の思惑通り明日のお弁当の方へ思考がズレた。


「えぇ?えっと・・・カボチャのコロッケにする予定ですよ」

「まじか。くっそ楽しみだな。今すぐ明日の昼になんねぇかなぁ」


そう言って本当に嬉しそうに笑う蓮先輩に、僕も嬉しくなっちゃって満面の笑みで蓮先輩を見上げた。


「僕も楽しみですっ!」



くしゃりと僕の頭を撫でた蓮先輩は、じゃあ行こうかとまた僕の手を取って歩き始めた。


先程とは違いサラリと指を絡められて。





壊れちゃいそうな程ドキドキと高鳴る鼓動を感じながらも、蓮先輩が周囲を気にせず手を繋いだまま僕の横を歩いてくれている事が嬉しくて顔を赤らめながらも僕から手を離すことはしなかった。




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