渡り廊下の恋

抹茶もち

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アニマルセラピー

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───ちゅ


リップ音を響かせて少しだけ離れた唇。

今にもまた触れてしまいそうな至近距離で瞳に熱を湛えた蓮先輩が少し掠れた声で囁いた。



「ほんとにすげぇ嬉しいよ」


時間が止まるって、こういう事なんだろう。

頭が真っ白になって何も考えられない。



そうしてポカンと固まっていると、蓮先輩の長い指がそっと顎に添えられ僕の唇が薄く開くように顎をクイっと下に押された。


されるがままになっている僕を目を細めながら見ていた蓮先輩は、その少しだけ開いた僕の唇を食むようにちゅぷ、と再度唇を重ね合わせた。


───ちゅ、ちゅぷ・・・っ


何度も何度も角度を変えるように重ねあわされる唇に、なんだかゾクゾクとした快感が背中を走る。


初めての感覚に少し震えながら、見開いたままだった瞳をギュッと閉じて蓮先輩の胸元のシャツを縋るように握りしめた。

すると合わさった唇がフッと笑った様な気配がして、そのまま腰をグイッと引かれて抱き込まれ蓮先輩に寄りかかるような体勢にさせられた後、後頭部を優しく撫でられる。


その優しい大きな手に撫でられながらキスをしているうちに震えは収まり快感だけがゆるゆると溜まっていく。




───どれくらいの時間が経ったのだろう。実際は数分の出来事だった筈なのに体感ではもう数時間翻弄されているのではないかと思ってしまうくらい、息が乱れてきている。


ハフハフと息を乱しながら必死で降ってくるキスの雨を受けていると、ちゅぷり、と音を立てて唇がゆっくりと離れていった。



もう重ねられる気配のない様子に、ぎゅっと閉じたままだった瞳をゆっくりと上げると少し離れた蓮先輩の熱を湛えた瞳に捕らえられる。


「・・・ご馳走様」


ペロリ、と唇を舐めてそう言う蓮の色香を至近距離で浴びてしまい、顔を熟れた林檎のように真っ赤にした結翔の頭は大混乱を極めていた。




蓮先輩がものっすごくえっちぃ・・・!!





色気が大爆発していらっしゃるぅ!それにご尊顔が凄く近いしまつ毛長いし肌綺麗すぎるんだけど・・・!毛穴なんてないんじゃないの!?っていうか僕の唇に蓮先輩の唇が触れ・・・?これは所謂ちゅーというやつ、だよね・・・?僕、蓮先輩にちゅーされたの!?ファーストキスが好きな人となんて夢じゃないよね・・・?え、いいの?僕が蓮先輩とちゅーなんてしちゃって良かったの・・・!?


止まっていた思考が戻ってくると、嬉しいやら恥ずかしいやらで視線がウロウロと彷徨ってしまう。



・・・・・・でもあんなに何度も何度も、食べられちゃいそうなちゅーされちゃうなんて。正直すっごく気持ちよかった。ちゅーって、あんなに気持ちいいんだ。知らなかったぁ。いや、蓮先輩とだからあんなに気持ちよかったのかな?



思わずさっきまでの快感を思い出して、まだ潤んでいる瞳で蓮先輩の唇をほぅ・・・っと見つめてしまう。




───ちゅッ



「そんな顔してるとやめてやれなくなっちまうだろ。続きは今度、な?」



再度触れるだけのキスを落とした蓮先輩にクスリと笑ってそう言われ、続きは今度・・・!?続きって何!?と思いながらも、また蓮先輩に触れてもらえるのなら、と必死でコクコクと首を縦に振った。



「ん、いい子。ほら、弁当食べよう。口開けて?」



くしゃくしゃと頭を撫でた蓮先輩はそのまま僕を自分の膝に横向きに乗せて、あーんをしてくれようとする。



「れ、蓮先輩、僕自分で食べれます、よ?」

「ん、知ってる。ほら、口開けて」



いい笑顔で口元にプチトマトをツンツンとくっつけてくる。



くそぅ。蓮先輩が可愛い!!




キスの衝撃が凄かったからか、膝の上に乗せられても違和感が無くなってしまった結翔はなんの疑問も浮かぶ事なく大人しく膝に乗せられたまま、少し頬を染めて甲斐甲斐しく運ばれるお弁当の中身をもぐもぐと食べ続ける。


そしてお返しとばかりに自分が咀嚼している間に蓮にもあーんをしてご飯を食べさせあった。





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