渡り廊下の恋

抹茶もち

文字の大きさ
上 下
18 / 110
アニマルセラピー

8

しおりを挟む
「あのね、今日お昼は別々だったじゃん?僕、先輩と一緒に食べてたんだけどね、明日からも一緒にお昼食べようって話になって。僕、明日からもその先輩と一緒にお昼が食べたいなって・・・」

4人で学校近くのカフェに入って注文をしたものが届いたタイミングで、早く言っちゃったほうがいいよねって一息ついてからそう言うと、匠以外がピシリと固まってしまった。


「・・・それは俺らが一緒じゃダメなのかな?」

匠にツンツンと突っつかれてハッとした陸が、まだ固まってる静の方をチラチラと見ながらそう言った瞬間、匠にスパーンッとはたかれイテッて捨てられた大型犬みたいな顔して匠に視線を向けた。


「普通に考えてダメでしょ!邪魔しないの!」


ほっぺをプックリと膨らませた匠にそう言われて、情けない顔しながらだってぇ~って言ってる陸。この2人本当に可愛いなぁ、なんて頬が緩んでしまう。


「僕ね、先輩に誘ってもらえてすっごく嬉しかったんだ。いつまで一緒に食べてもらえるか分かんないんだけど・・・。でも今日すっごく幸せだったから、先輩が許してくれる限りお昼だけでも一緒に居れたらなって・・・。みんなも一緒で良いかって聞いてないし・・・ごめんね」


それに・・・できれば今日みたいな穏やかで擽ったいような時間を、また蓮先輩と2人で過ごしたくて、とは恥ずかしくて言えないけど。


「ね!この通りゆいがすっごい幸せそうなんだもん。僕だってお昼一緒に食べれないのは寂しいけど・・・、でもお昼以外は一緒に居られるんだから。ゆいが幸せで居てくれるのが1番だよ」


「うーん、確かにそうなんだけどね・・・」



歯切れ悪くそう呟いた陸の後に、今まで固まったまま動かなかった静がポツリと呟いた。


「・・・・・・先輩って誰?」


ぐ・・・っ!やっぱり静に聞かれるかぁ。あわよくばこのまま名前は伏せようと思ってたのに、と思わず苦笑してしまう。


「あー・・・、田原先輩だよ」


僕が蓮先輩の名前を口に出した瞬間、静の眉がピクリと動いた。


「それって全校集会の時の人だよね?なんで今日一緒に食べる事になったの?」

「うん、そうだよ。なんでって・・・今日は蓮先輩が誘ってくれたから」

「あの先輩、良い噂聞かないしやめた方がいい。断って」

「ちょ・・・!静!」

「匠だって陸だってそう思うだろ?いつの間にそんな仲になったの?あんな顔だけの奴絶対にダメだ」



すっごく嫌そうな顔をして吐き出すようにそう言う静に、匠が思わずといった感じで止めてくれているのを見ながら思わず顔がスンッと真顔に戻ってしまう。


「蓮先輩の噂は僕だって知ってる。静は僕の事心配してくれてるんだよね?ありがとう。でも僕の知ってる蓮先輩は酷い人じゃないし、まして顔だけの人なんかじゃない。まだ少しの時間しか関わったこと無いけど・・・でも少し変わってるかもしれないけど、すごく優しい人で。僕は噂の中の蓮先輩じゃなくて、僕の知ってる蓮先輩を信じたいんだ。ダメって言われても今僕から蓮先輩と離れる事は無いよ。ごめんね」


最後にはへにゃりと眉を下げながらもそう言い切った結翔に、静はグッと何かを堪えるかのような顔をして黙り込んでしまう。陸はオロオロとしてしまい、匠は結翔を心配そうに伺っている。


「・・・・・・ごめんね、せっかく久しぶりの寄り道なのに空気悪くしちゃった。僕今日は帰るね?また明日」



シンと静まり返ってしまった空気に居た堪れなくなった僕は、頼んでいたカフェオレを一気に飲み干して鞄を持ち、へにゃりと眉を下げたまま席を後にした。



「え!?ゆい待って!僕も一緒に帰る!陸、あとよろしく!」

「わ、わかった!」


自分のぶんの会計を済ませて外に出た結翔を追いかけて慌てて匠が外に出た後、静は大きなため息をついてゴンっと机に頭を打ち付けたまま突っ伏した。


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:niia 様 ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。 先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。 そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。 しかし、その考えはある日突然……一変した。 『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』 自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。 『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』 挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。 周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。 可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。 自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!! ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!! ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

悠遠の誓い

angel
BL
幼馴染の正太朗と海瑠(かいる)は高校1年生。 超絶ハーフイケメンの海瑠は初めて出会った幼稚園の頃からずっと平凡な正太朗のことを愛し続けている。 ほのぼの日常から運命に巻き込まれていく二人のラブラブで時にシリアスな日々をお楽しみください。 前作「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」を先に読んでいただいたほうがわかりやすいかもしれません。(読まなくても問題なく読んでいただけると思います)

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

【完結】塩対応の同室騎士は言葉が足らない

ゆうきぼし/優輝星
BL
騎士団養成の寄宿学校に通うアルベルトは幼いころのトラウマで閉所恐怖症の発作を抱えていた。やっと広い二人部屋に移動になるが同室のサミュエルは塩対応だった。実はサミュエルは継承争いで義母から命を狙われていたのだ。サミュエルは無口で無表情だがアルベルトの優しさにふれ少しづつ二人に変化が訪れる。 元のあらすじは塩彼氏アンソロ(2022年8月)寄稿作品です。公開終了後、大幅改稿+書き下ろし。 無口俺様攻め×美形世話好き *マークがついた回には性的描写が含まれます。表紙はpome村さま 他サイトも転載してます。

sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。 周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。 初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。 (これが恋っていうものなのか?) 人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。 ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。 ※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

処理中です...