渡り廊下の恋

抹茶もち

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アニマルセラピー

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side:五十鈴結翔

「結翔」


プリンを食べ終わった僕が、まだ昼休憩の時間は半分くらいしか終わってないからって心の中で何故か言い訳して蓮先輩の隣で穏やかに流れる時間を堪能していると、胡座をかいて壁に寄りかかっていた蓮先輩に名前を呼ばれた。


「はい!」


思わずシャキッて背筋を伸ばして蓮先輩の方に体を向けると、無言で自分の胡座の部分をポンポンと叩いていた。


胡座・・・脚?んん?僕も胡座したらいいの?って首を傾げてたら、蓮先輩がチョイチョイって手招きし始めた。


・・・来いって事?でももう既に肩触れそうなほど近いのに?あ、横じゃなくて前に来いってことかな?


成程!って思った僕は1回立ち上がって蓮先輩の目の前に座り直した。なんで隣じゃなくて前なのかは謎だけど、蓮先輩のお顔が真正面から見れるのも良いなぁ。


でも今度はニコニコしてる僕を見て蓮先輩がキョトンってしちゃった。

あれ?違った?って僕もまたキョトンとしちゃって、2人してキョトン顔でしばらく見つめ合ってたんだけど、蓮先輩が何か納得したみたいに1度頷いた。


「結翔、違う。こっち」

「え?・・・へあぁ!?」


キョトンとしてる僕の腕を掴み引き寄せるように引っ張った蓮先輩は、バランスを崩して蓮先輩の方に倒れ込んだ僕をそのままスッポリと抱き込んでしまった。


蓮先輩の胸元に抱き込まれてるから視界は蓮先輩でいっぱいだし、密着した胸元からは甘いムスクの香りがしてなんだかクラクラする。

鼓動はドクドクと壊れちゃいそうな程音を立て、顔は沸騰したかのように熱い。

突然の事に頭は真っ白でカチリと固まる事しか出来ず、そのまま蓮先輩のされるがままになっていると、ぎゅうっと力強く抱き込まれていた腕が少しだけ緩み、片手で頭をゆるゆると優しく撫でられ始めた。



その優しい手つきが心地よく、次第にウットリとしはじめた僕は固まっていた体もゆっくりと解れ無意識に蓮先輩の胸元にそのままスリッと擦り寄った。


すると何故か蓮先輩の方がカチリと固まってしまって、ハッてした。


僕今何した!?


「ごっごめんなさいっ!なんだか心地よくなっちゃって・・・」


固まってても僕をしっかり抱き込んでいる蓮先輩をしょぼんとしたまま顔だけ上げてそのまま見上げようとしたら、いきなりぎゅうっと力強く頭ごと抱き込まれてポフリと蓮先輩の胸元に視線が戻ってしまった。


さっき一瞬だけ見えた蓮先輩のお顔、なんか赤かった気がするんだけど、気のせい・・・?


「さっきの、可愛かったし、嬉しかった、よ」



僕を抱き込んだまま、なんだか甘い声でそう囁く蓮先輩にまた一気に熱が上がったかのような感覚がする。

そのまま何も言えずに顔を赤くしている僕をまたゆっくりと撫で始めた蓮先輩。自分の顔が真っ赤っかになっちゃってるの分かってるからもう顔を上げることも出来なくてそのまま蓮先輩の胸元に顔を埋めた。


「あ、あの・・・なんで、ぎゅーを・・・?」


顔を見なければこの状態でも話せそうかも、って気付いた僕はゴクリと唾を飲み込みおずおずと問いかけると、ん~・・・って何だか蓮先輩が唸り始めた。


「えと・・・蓮先輩?」

「あ、うん、なんで・・・なんで、かぁ。我ながらよく分んねぇんだけどさぁ?アニマルセラピー的な?そんな感じ?結翔と居るとこう、構いたくなってさぁ・・・なんか触りたくなるんだよなぁ」

「アニマルセラピー・・・、ですか?僕の事構うだけでセラピー出来るんです?」


斜め上すぎる返答に思わず状況も忘れてキョトリとして蓮先輩を見上げると、僕を抱きしめていた両手が頬に移動してムニムニと揉まれ始めた。


「結翔は俺の癒しだよ。もぉずっと構ってたいくらい。あ~・・・思った通りいい頬っぺた・・・」


なるほどよくわからん!でも僕が蓮先輩を癒す事が出来るならそんなに嬉しい事なくない!?アニマルセラピーって事は僕、ペット枠なのかなぁ?蓮先輩のペット・・・あれ?役得なんじゃ?っていうか抱き込まれてた状態でお話しすると、蓮先輩の身体から声の振動っていうの?伝わってきて不思議な気持ちだなぁ。



自分はペット枠なんだって、ようやくなんでこんなに構ってもらえるのかが腑に落ちて少し余裕ができた僕は蓮先輩にされるがままになりながらそんなちょっとズレたことを考えていた。


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