渡り廊下の恋

抹茶もち

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アニマルセラピー

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赤のネクタイしてたから1年生だって事は分かってる。でも名前聞いてないから探すにもなかなか難しくて。

俺の知り合いはどうしても俺と同類というか・・・豆柴ちゃんとは絶対友達じゃないだろうし、そんな奴らに探させたら絶対怖がられるだろ?

そんなのは絶対だめじゃん。だからとりあえず渡り廊下行ったら会えねぇかなって行ってみたりしたんだけどやっぱ会えなかった。

蜜樹に豆柴ちゃん居なくて残念だなぁ!って爆笑しながら背中叩かれて、ど突いてやろうかと思った。割と本気で。


どうすっかなぁって思ってた時に体育祭の全校集会があって、これだ!って。


同じ団だったら可愛がってもおかしく無いよな?同じ団だったらいいなぁ。

違う団だったら・・・、まぁどうにでもなるか。


内心ソワソワしながら講堂に行ったんだけどまだ1年生は来てなくて。仕方ないから暇つぶしに蜜樹と話してたらまだ初々しい1年生がやっと講堂に入ってきた。豆柴ちゃん、何組なんだろうかと視線を彷徨かせてると蜜樹がニヤニヤしながら何か言いたそうにこっちをずっと見てくる。ココ数日間こいつはずっとこんな感じ。

「蜜樹うるせぇ」

「えぇ~?俺ちゃん何も言ってないじゃん?」

「もう顔がうるせぇんだよなぁ」

「うっそだぁ!俺がイケメンなのは俺が1番知ってるもーん!」


思わずため息出ちまうよなぁ。

まぁこいつのそういう正直なところというか裏表ない感じ、気に入ってはいるんだけど。


って今は蜜樹より豆柴ちゃんだ。いつの間にか黒団の所にも1年生が集まってきていたから何気なく見回すと、豆柴ちゃんがなんか絡まれてた。蜜樹と馬鹿話してたから豆柴ちゃんが講堂に入って来たのに気付けなかった。不覚。


小動物みたいに慌てている豆柴ちゃんを視界に収めた瞬間、あの柔らかそうな頬っぺたを触ってるアイツの手を無性に剥がしたくなって思わず豆柴ちゃんのところに行ってソイツの手、無理矢理剥がした。

俺が動き出した瞬間、蜜樹がめちゃくちゃに驚いてた気がするけど、そんな事は些細な事だ。とにかくアイツの手を剥がさないとって。


俺が剥がした手の持ち主の瞳には俺に対して敵意篭もってた気がした。不機嫌なのも隠そうとしないし。コイツ絶対豆柴ちゃんの事好きじゃん。

いや豆柴ちゃん俺のだし、ってなんでか思った俺はコイツが豆柴ちゃんにチョッカイ出してんのが凄く嫌で、豆柴ちゃんがコイツの事友達だって庇うのもちょっとモヤったけど、豆柴ちゃんを困らせたい訳じゃないからアイツのことはもう居ないものとする事にした。


俺の視界、豆柴ちゃんでいっぱいにしちゃえば気になんねぇよなって思って顔覗き込んだら、まん丸な目をパチパチさせて自己紹介してくれた。少し高めの声も可愛いし、途中噛んじゃったの、ちょっと恥ずかしそうにしてるのも可愛くて、アイツのせいで下がってた機嫌も急上昇。豆柴ちゃん、結翔っていうのか。

名前知れて満足だったのもあってまた笑いが溢れた。なんでか結翔と居ると普段無表情か不機嫌しか感情が無いって言われる俺が笑顔になれる。結翔ってすげぇのかも。

その可愛い声で名前呼んでくんねぇかなって名前言ったら、田原先輩って言われた。そのへんの有象無象と同じ呼び方は嫌だな、ともう1回名前を呟いてみた。そしたらおずおずって感じで名前呼んでくれて、その呼び方も可愛くて頬が緩んだ。


もう1回呼んでくんねぇかなって言おうと思った瞬間、蜜樹が結翔に絡み始めた。噂の豆柴ちゃんとか言い出すし、何よりあいつ、結翔の肩抱きやがった。俺も蜜樹も人との距離感バグってるってよく言われるけど、蜜樹が結翔の肩抱くとかマジで無い。馴れ馴れしい。結翔困ってるし。

なんかイライラして首根っこ掴んで引き離した。コイツ、めちゃくちゃ面白がってるな。

イライラしたまま蜜樹と言い合いしてたら団長に拳骨落とされちまった。蜜樹のせいで結翔に格好悪い所見られた。最悪だ。


その日は名前が知れたのに満足して、家に帰ってから連絡先聞くの忘れてた事思い出して撃沈した。せっかく仲良くなって構い倒せそうなのに俺何やってんだ・・・。

思い立ったら即行動って事で翌日放課後、蜜樹を撒いて結翔の連絡先を聞きに教室まで特攻した。

結翔の慌てっぷりが隣の柴犬が俺を見つけて走り寄ってくる時とそっくりで、笑いが込み上げる。本当に結翔って可愛い奴だよなぁ。

ふわふわでサラサラな結翔の髪の毛を思う存分撫で回してから、今日のミッション、連絡先の交換をする為に携帯借りたんだけどさ、何も疑う事なくあっさり渡してくれた上にロックもかかってないとかかなり不用心。心配になって無事に交換を済ませた携帯を返す時に注意したらさ、なぜかまん丸な目が零れ落ちそうな程驚いて頬っぺた抓りはじめて。

結翔の行動って予測不可能な所あるよなって、また笑った。

でもあの柔らかそうな頬っぺたを抓るのはいただけない。痛くならないように気をつけながら結翔の手を取ると、夢かと思って、とか可愛い事言うからさ、思わずそのままその小さい手、握っちゃった。

そしたら結翔、ものすごく真っ赤っかになってさ、その慣れてなさそうな反応がまたすげぇ可愛くて。

そのまま撫で回したくなったけど、バイトの時間迫ってきてたから名残惜しいけど1度だけ頭を撫でてからバイトに向かった。



もっとゆっくり話してぇなって思った俺、名案思い付いたんだよね。昼飯一緒に食えばよくないか?蜜樹は最近できたお気に入りの子と一緒に飯食ってるみたいだし、俺だってお気に入りの子と飯食ったっていいよな?

バイトの休憩時間に誘ったら柴犬のスタンプで了解って返ってきてさ、なんかほっこりしたよね。



翌日、朝から割とソワソワしながら過ごしてたけど、やっぱり癒しが足りなくて昼まで我慢できねぇなって思って渡り廊下に来てみた。
また教室に特攻したら結翔が慌てちゃいそうだからなぁ。

まぁ会えるわけもなく自販機でとりあえず飲み物買って戻ろうとしたんだけどさ、そういえば結翔のクラスの教室この上だったなって思って上向いたら本物の結翔がこっち見てたんだよ。びっくりじゃん?以心伝心か?

でも俺と目があった瞬間驚いたのか思いっきりデコッパチを窓枠にぶつけちゃっててさ。心配だったけどさ、それより俺と目があっただけでそんな反応してくれんのが正直嬉しくて笑っちまった。

こっちから見えてんだからあっちからも見えてるよなって、口パクで冷やせよって言ったら、なぜかデコッパチじゃなくて胸らへん押さえながら必死で頷いてる結翔がまた可愛くて顔が緩む。


俺、こんなふうに擽ったいような、暖かいような気持ちになった事無くて正直コレが何なのか分かんねぇけど、結翔ともっと一緒に居たいって事だけは確かなんだよな。

我ながら自分の感情が意味不明なんだけど、まぁそのうち分かるかって。


やっと昼を迎えて、面倒な事言い出しそうな蜜樹を先に送り出した後俺もちょっと出るって他のツレに言って屋上に向かった。

蜜樹を送り出してからだったからちょっと遅くなったなって思って早足で屋上に向かうと、結翔がなぜか屋上の扉の前で深呼吸してて。何やってんだ?って思ったけど可愛かったからそのまま見守ってると、なんだか気合を入れて屋上に足を踏み入れてた。

なんだか微笑ましい気持ちになって続いて屋上に入って一緒に飯を食べてたんだけどさ、結翔の弁当めちゃくちゃ美味そうで驚いた。なんだか話の流れで結翔の弁当毎日食える事になってすげぇ嬉しくて。

俺に食べてもらうのがご褒美だ、なんて言う結翔になんだか冷え切ってた心の柔らかい部分がジンって暖められた気がした。


こういうの、アニマルセラピーっていうのか?


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