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僕、将来お嫁さんになるらしいです!

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「母様には旦那さんが二人居るの?なんで?」

とりあえず確認してみないとって思ってそう聞くと、父様はどこか納得したように一つ頷いて。

「ノアは本当に何もかも忘れてしまっていたんだね。アンディには夫が六人いるんだよ」

夫が六人……!?何それぇって衝撃にぽかーんとお口を開けてしまう僕。

「なんで、という説明をするにはこの世界の歴史から説明しなければならないな……」

そう語った父様は、更にとてつもない衝撃を僕にもたらすのであった。

♢♢♢

昔々、この世界には男性の他に女性という性別の人間が存在していた。
女性が存在していた頃は女性しか子を授かる事は出来なかったのだ。
しかしいつの頃からか次第に女性の出生率がどんどん減少し、人類は減少の一途を辿り、女性の争奪戦が始まる。
女性は複数の男性に囲われ、子を産むことに人生を捧げなければいけなくなったのだ。

そんな中、女性の現状を憂いたその時代の大神官は神に祈り続けていた。
これ以上心を壊してしまう女性が増えないように。どうか哀れな人類をお助け下さい、と。

ある日大神官がいつもの様に祈っていた時、世界各地にある教会全てに光り輝く光の柱が立ったのだ。
切に祈り続ける大神官に心打たれた神が神託を下したと考えられている。

神託の内容は今後産まれてくる黒髪黒目の赤子は性別問わず手順を正しく踏めば子を授かることが出来る、というこの世界にとっての朗報だった。

そして神託には続きがある。

子を孕むことが出来る黒髪黒目を虐げる事は許されない。心も体も健やかに居ることが子を孕める条件の一つだ。無理矢理子を孕ませようとするような人間はその後一切、決して誰との子であってもその手に抱くことが出来ないと思え。
そして今、無理矢理囲われ体を差し出すことしかできなかった女性たちの保護を徹底しろ、と。


その神託に世界各国が震撼した。神託を受けた神官たちは、神の名のもとに囚われていた女性を保護し、養生と共に好いた相手との幸せな結婚を手助けした。

そしてこの神託を重く見た各国の王たちは、いかなる場合も黒髪黒目の心身を損なう事は許されない等、新たに法を作り黒髪黒目を心身ともに守らなければと尽力したのだった。

♢♢♢

「神託が下った当初は黒髪黒目がたくさん産まれたらしいんだけど、一定数増えた頃から出生率が緩やかになってしまってね。減少しているわけではないけれど、圧倒的に黒髪黒目の数の方が少ないんだよ。だから今では一妻多夫が当たり前なんだ。もちろん妻に望んでもらえる男しか夫にはしてもらえないけどね」

アンディは世間一般からしたら夫の数が少ない方なんだよ、と続けた父様。

あまりに僕の常識からかけ離れていてとっても驚いたけど、よく考えたら僕、確かに女性の姿を見た事ないんだよね。
僕が覚えている『日本の記憶』には、使用人は『メイドさん』っていうふわふわな可愛いワンピースを着てお仕事している人がいたけど、僕のお家にはピシッとした男性の使用人さんしか居ないし。

って言う事は僕、正真正銘母様のお腹から生まれたって事なんだ。なんだか不思議だなぁ。

それにしても母様、六人も夫が居て大変じゃないのかな?だってあっちいったりこっちいったりしないといけないんでしょう?

六人でも少ない方って……、この世界の普通って、すんごい。どれくらいの夫の人数が平均なんだろう?ちょっと気になる。

なんて驚き過ぎて逆に冷静になったのかそんなことを考えてたんだけど。


「でもいつかノアを嫁に出さないといけないと思うと父様は寂しくてたまらないよ……。ノアは結婚してもずーっと父様と一緒に暮らしてもいいんだからね!ちょっと癪だけど百歩譲って夫がノアに会いにこの家に通えばいいんだ……」

なんて僕をぎゅうーって抱きしめてブツブツと言い始めた父様。


「……え!?僕、お嫁さんになるの!?」


記憶をなくしてたくさんびっくりした事があったけど、今回のが一番驚いた。驚き過ぎて思わずおっきな声出しちゃったくらい。

「ん?ノアは髪も瞳も綺麗な漆黒だし、何よりもとても可愛いじゃないか!親の贔屓目ではなく、ノアはとてもモテるだろうしノアの心が動きさえすればたくさん夫が出来ると思うよ」

でもノアを最高に幸せにしてくれるやつじゃないと父様の大事な宝物であるノアとの結婚は認めないからね!なんて言いながら目をウルウルしている父様。

ちょっと泣くのは早いんじゃないかなとか、やっぱり親の贔屓目はあるのでは?とか思う事はあったんだろうけど、それよりも。


そういえば僕、黒髪黒目だったんだ!って遅ればせながら気付いちゃったのだ。


僕、大人になったら男の人のお嫁さんになるらしいです。



……神様、なんで女性を増やさずにそんな設定作ったの!?



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