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どうやら僕は転生してしまったらしい

side:セオドア③

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ノアの10歳の誕生日の日。
この日はとても素晴らしい日になるはずだった。

しかしその素晴らしい日になるはずだった日は、突然暗闇に突き落とされたような恐怖と不安に襲われる日になってしまったのだ。


突然ノアが高熱を出し倒れたのだ。


俺も父も大変狼狽えた。

「トマスを!今すぐトマスを呼ぶのだ!」

父は普段の温厚な姿からは想像ができないほど大きな鋭い声で執事に指示を出していた。

俺はノアの名を呼びながら手を握る事しかできず、何も出来ない自分を何度も責めた。

そのうちトマスが慌てて来てくれノアの診察をしてくれたのだが、ノアの魔力量が10歳の身体が耐えられる量ではなくなっていると言われた。

何故このように急激に魔力量が増えたのか不明だが、きっとこの国で一番魔力量が多いとされている王族以上にあるのではないかと。

そしてそれほどまでの魔力量を持つものは今までに数えるほどしか居らず、症例も殆ど無いのだそうだ。

ノアの生命力を信じるしかないと言われた時は、目の前が一瞬真っ暗になった。

しかし出来る限りのことはしてやりたいと思っていたのに、俺は跡取り故にもし魔力暴走が起こってしまった際に巻き込まれてしまうのは避けたいのだと、遅れて我が家に駆けつけた母と父に言われてしまったのだ。

母と父の言いたいことは分かるのだ。しかし俺の可愛い天使が苦しんでいるのに何もしてやれないなんて、と震える拳を握りしめた。

そんな俺に、サミュエルがそっと近寄って来て。

「セオドア様、ノア様はきっと大丈夫です。普段あんなにお元気なノア様の生命力が弱いわけがありません!私もノア様のお身体が良くなられるようしっかり看病いたしますので」

そう言ってくれたサミュエルの手も俺と同じように震えているのが分かって。俺が動けないのならきっと俺と同じ思いなのであろうサミュエルに託そう、と思った。

「サミュエル、すまない。ノアを頼む」

震える拳をそのままにサミュエルに頭を下げた。
本来ならば俺がサミュエルに頭を下げるなんて許されることではないのだ。しかしサミュエルは俺の気持ちを汲んでくれ、力強く頷いてくれたのだ。

「トマスも、頼む。ノアを助けてくれ」
「えぇ、最善を尽くさせてもらいますよ」
「ありがとう。頼んだよ・・・・・・」

そうしてサミュエルとトマスにノアを頼み、父と母と部屋を退室した。
母も暫くこちらに滞在するとの事だったので、父と母と別れ部屋に戻った。

それからの日々は明かりのない暗闇を歩いているようなものだった。屋敷の中も普段の明るさは無く、皆粛々と自分の業務を進めている。

俺はひたすら神に祈った。どうかノアを助けてくれと。




────その祈りが通じたのか、数日後、ノアの生命力が勝ったのだと報告が来た。

俺は安堵のあまりその場でへたり込み、暫くそのまま涙を溢し続けた。



これ程までに神に感謝した日は初めてだ。


 
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