11 / 24
どうやら僕は転生してしまったらしい
side:セオドア③
しおりを挟む
ノアの10歳の誕生日の日。
この日はとても素晴らしい日になるはずだった。
しかしその素晴らしい日になるはずだった日は、突然暗闇に突き落とされたような恐怖と不安に襲われる日になってしまったのだ。
突然ノアが高熱を出し倒れたのだ。
俺も父も大変狼狽えた。
「トマスを!今すぐトマスを呼ぶのだ!」
父は普段の温厚な姿からは想像ができないほど大きな鋭い声で執事に指示を出していた。
俺はノアの名を呼びながら手を握る事しかできず、何も出来ない自分を何度も責めた。
そのうちトマスが慌てて来てくれノアの診察をしてくれたのだが、ノアの魔力量が10歳の身体が耐えられる量ではなくなっていると言われた。
何故このように急激に魔力量が増えたのか不明だが、きっとこの国で一番魔力量が多いとされている王族以上にあるのではないかと。
そしてそれほどまでの魔力量を持つものは今までに数えるほどしか居らず、症例も殆ど無いのだそうだ。
ノアの生命力を信じるしかないと言われた時は、目の前が一瞬真っ暗になった。
しかし出来る限りのことはしてやりたいと思っていたのに、俺は跡取り故にもし魔力暴走が起こってしまった際に巻き込まれてしまうのは避けたいのだと、遅れて我が家に駆けつけた母と父に言われてしまったのだ。
母と父の言いたいことは分かるのだ。しかし俺の可愛い天使が苦しんでいるのに何もしてやれないなんて、と震える拳を握りしめた。
そんな俺に、サミュエルがそっと近寄って来て。
「セオドア様、ノア様はきっと大丈夫です。普段あんなにお元気なノア様の生命力が弱いわけがありません!私もノア様のお身体が良くなられるようしっかり看病いたしますので」
そう言ってくれたサミュエルの手も俺と同じように震えているのが分かって。俺が動けないのならきっと俺と同じ思いなのであろうサミュエルに託そう、と思った。
「サミュエル、すまない。ノアを頼む」
震える拳をそのままにサミュエルに頭を下げた。
本来ならば俺がサミュエルに頭を下げるなんて許されることではないのだ。しかしサミュエルは俺の気持ちを汲んでくれ、力強く頷いてくれたのだ。
「トマスも、頼む。ノアを助けてくれ」
「えぇ、最善を尽くさせてもらいますよ」
「ありがとう。頼んだよ・・・・・・」
そうしてサミュエルとトマスにノアを頼み、父と母と部屋を退室した。
母も暫くこちらに滞在するとの事だったので、父と母と別れ部屋に戻った。
それからの日々は明かりのない暗闇を歩いているようなものだった。屋敷の中も普段の明るさは無く、皆粛々と自分の業務を進めている。
俺はひたすら神に祈った。どうかノアを助けてくれと。
────その祈りが通じたのか、数日後、ノアの生命力が勝ったのだと報告が来た。
俺は安堵のあまりその場でへたり込み、暫くそのまま涙を溢し続けた。
これ程までに神に感謝した日は初めてだ。
この日はとても素晴らしい日になるはずだった。
しかしその素晴らしい日になるはずだった日は、突然暗闇に突き落とされたような恐怖と不安に襲われる日になってしまったのだ。
突然ノアが高熱を出し倒れたのだ。
俺も父も大変狼狽えた。
「トマスを!今すぐトマスを呼ぶのだ!」
父は普段の温厚な姿からは想像ができないほど大きな鋭い声で執事に指示を出していた。
俺はノアの名を呼びながら手を握る事しかできず、何も出来ない自分を何度も責めた。
そのうちトマスが慌てて来てくれノアの診察をしてくれたのだが、ノアの魔力量が10歳の身体が耐えられる量ではなくなっていると言われた。
何故このように急激に魔力量が増えたのか不明だが、きっとこの国で一番魔力量が多いとされている王族以上にあるのではないかと。
そしてそれほどまでの魔力量を持つものは今までに数えるほどしか居らず、症例も殆ど無いのだそうだ。
ノアの生命力を信じるしかないと言われた時は、目の前が一瞬真っ暗になった。
しかし出来る限りのことはしてやりたいと思っていたのに、俺は跡取り故にもし魔力暴走が起こってしまった際に巻き込まれてしまうのは避けたいのだと、遅れて我が家に駆けつけた母と父に言われてしまったのだ。
母と父の言いたいことは分かるのだ。しかし俺の可愛い天使が苦しんでいるのに何もしてやれないなんて、と震える拳を握りしめた。
そんな俺に、サミュエルがそっと近寄って来て。
「セオドア様、ノア様はきっと大丈夫です。普段あんなにお元気なノア様の生命力が弱いわけがありません!私もノア様のお身体が良くなられるようしっかり看病いたしますので」
そう言ってくれたサミュエルの手も俺と同じように震えているのが分かって。俺が動けないのならきっと俺と同じ思いなのであろうサミュエルに託そう、と思った。
「サミュエル、すまない。ノアを頼む」
震える拳をそのままにサミュエルに頭を下げた。
本来ならば俺がサミュエルに頭を下げるなんて許されることではないのだ。しかしサミュエルは俺の気持ちを汲んでくれ、力強く頷いてくれたのだ。
「トマスも、頼む。ノアを助けてくれ」
「えぇ、最善を尽くさせてもらいますよ」
「ありがとう。頼んだよ・・・・・・」
そうしてサミュエルとトマスにノアを頼み、父と母と部屋を退室した。
母も暫くこちらに滞在するとの事だったので、父と母と別れ部屋に戻った。
それからの日々は明かりのない暗闇を歩いているようなものだった。屋敷の中も普段の明るさは無く、皆粛々と自分の業務を進めている。
俺はひたすら神に祈った。どうかノアを助けてくれと。
────その祈りが通じたのか、数日後、ノアの生命力が勝ったのだと報告が来た。
俺は安堵のあまりその場でへたり込み、暫くそのまま涙を溢し続けた。
これ程までに神に感謝した日は初めてだ。
192
お気に入りに追加
1,987
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
転生したら同性から性的な目で見られている俺の冒険紀行
蛍
BL
ある日突然トラックに跳ねられ死んだと思ったら知らない森の中にいた神崎満(かんざきみちる)。異世界への暮らしに心踊らされるも同性から言い寄られるばかりで・・・
主人公チートの総受けストリーです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
異世界では総受けになりました。
西胡瓜
BL
尾瀬佐太郎はある日、駅のホームから突き飛ばされ目が覚めるとそこは異世界だった。
しかも転移先は魔力がないと生きていけない世界。
魔力なしで転移してしまったサタローは、魔力を他人から貰うことでしか生きられない体となってしまう。
魔力を貰う方法……それは他人の体液を自身の体に注ぎ込んでもらうことだった。
クロノス王国魔法軍に保護され、サタローは様々な人物から魔力を貰うことでなんとか異世界を生き抜いていく。
※アホ設定なので広い心でお読みください
※コメディ要素多め
※総受けだけど最終的には固定カプになる予定
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
天涯孤独な僕が、異世界転生しちゃいました!?
TICHI
BL
片目の色が違う、生まれつきの「オッドアイ」で蔑まれ続けてきた彼方。
悪魔に呪われた子としてろくに育ててもらえず、病弱なため義務教育である学校でさえも通わせてはもらえなかった。
そんな中、6歳の誕生日に「家庭教師」という名のお世話係、涼太(りょうた)がやってくる。
涼太は他人に怯え続ける彼方を育て、幸せを謳歌できると信じていたもののーーー
限界に限界を迎えながら訪れた、18歳の誕生日。アルバイトからフラフラ帰宅していると...
え?異世界?僕、赤ちゃんに戻ってるんですけどーー!?
え、お兄ちゃん?誰!?ここは一体どこなの?
異世界に転生した一人の男による、はちゃめちゃライフがここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる