フィライン・エデン Ⅲ

夜市彼乃

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11.七不思議編

52才媛サイエンス ⑤

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***

 どうやら、この怪談が解決するまでは、目的のおかしな校外ボランティア達は件の女子トイレに足しげく通うことになるようで。
 次の日、同じ面子で――と思いきや、恐怖体験を由実が独り占めするはずもなく、おすそわけとばかりに、今度は美由がフェス委員トイレ支部に異動になった。
「昨日、本当に『異次元モールス』起こったんでしょう……?」
「うん。……怪談好きなのに怖かと?」
「だから、噂を聞くのと実際に遭遇するのとは違うんだってばぁ」
 むーっと頬を膨らませた美由は、何やら指を折り始めた。
「何か楽しい話しよう! 今のところ、ネタのストックが六つほど……」
「何のネタだよ」
「例えば、メスシリンダーがあるならオスシリンダーがあってもいいよね、とか」
「……」
「キッチンの取手付き軽量カップ、ビーカーにすり替えてもわからない説とか!」
「布教っちゃか?」
「あとは……」
 と、美由が中指を折り込んだ時だ。
 コツコツ、ツー……。
 茶番は強制終了となった。一同は思わず息を呑んだ。美由以外は昨日も聞いた怪音だ。やはり、一番手前の鏡から聞こえてくる。
「本当に……」
 聞こえた、と口にしかけた美由に、しーっと制止がかけられた。
 せつなが、唇に人差し指を当てて、興味深いものを見つけた猫のような笑みを浮かべている。彼女もなかなか物怖じしない性格のようで、音を観察するように耳をそば立てていた。
 やがて、音がやんだ。雷奈達は一斉に奥に目をやった。正確には、美由以外は、窓に注目した。
 鏡から物が飛び出してくるなど、非科学的だ。
 昨日と同じ通りならば、この後は――。
「来た」
 予想通り、紙くずが床に落ちた。鏡からなどではなく、ちゃんと窓から飛び込んできた。美由が両手をあげて叫びそうになるのを、氷架璃がどうどうとなだめる。
「誰が投げ込んだっちゃかね……下はひさしが大きくて、よく見えんったい」
 ぴょこぴょこ飛び跳ねながら窓の外をのぞいて、雷奈が言う。
 ここは二階だ。下から投げ入れようと思えば届かない高さではない。
 しかし、すぐ下には大きめのひさしがある。それを避けて投げ入れようとするならば、少し離れたところから放物線を描かなければならず、より精密なコントロール力が必要だ。窓もそう大きなものではないのだ。
「あらー、やっぱり昨日と同じく、幽霊さんはストレスフルみたいね」
 床に接さなかった部分を選んでつまみ、丸められた紙を広げたせつなが笑う。
 氷架璃と芽華実がのぞきこむと、やはりそこには「死」だの「呪」だのブラックでダークな文字が書きなぐられていた。
「こ、これが幽霊からの……!」
「幽霊がペンを持てるわけないだろ。ったく、誰がこんなことを」
「でも、窓からこれを投げ込んできた人と、鏡から聞こえるモールス信号は別物よね? モールス信号はいったい誰の仕業なの……?」
「そうなんだよなー」
 モールス信号めいた音が聞こえて、止んだと思ったら書き殴られた紙が飛び込んでくる。この一連の流れが、異次元モールスという一つの怪談を構成しているようにみえる。
 しかし、紙を投げ込んだのがほぼ確実に人間だとすると、音とは分けて考えなければならない。階下から紙を投げ込む前兆として、二階のトイレの鏡から音が鳴るなど、不自然だ。
 つまり、音がやんだ直後に紙が飛び込んでくるという随伴性はありながら、別の要因で音が鳴っていると考えなければならないのだ。
「またコイル鳴きみたいに科学現象っちゃかね? 鏡の向こうに人がいるわけなんてないし」
 窓際から歩いてきた雷奈がそう言った時だ。
「あら」
 さも意外そうな声を発したのは、せつなだった。
「本当にそう思う?」
「え?」
 雷奈だけでなく、氷架璃や芽華実たちも耳を疑った。
 その言い方だと、まるで"いる"ようではないか。
 けれど、彼女らの解釈は誤解などではなく。
「明日、鏡の向こうの犯人を捕まえましょう」
 一人答えが分かったような得意顔で、せつなは言った。

***

 その日は、一組の担任の目を盗んで、フェス準備は臨時休業となった。
 理由は言わずもがなだ。
 早くもお馴染みとなってしまった女子トイレでは、雷奈が腕組みをしてその時を待ち構え、氷架璃は指の関節を鳴らして意気込み、芽華実は少し眉を緊張させながらも、ピアノで培われた耳に神経を集中させていた。そして、そんな芽華実がいじらしいのか、彼女を横目ににやにやするせつなと、奥の窓際で指に髪を巻き付ける朝季。
 異次元モールスに直接関わるのは初めてのはずだが、対岸の火事であるかのように枝毛を探し始めた朝季に、雷奈はかえって不思議そうな目を向けた。
「あの二人と打って変わって、朝季は冷静っちゃね」
「だって、今回も怪奇現象でもなんでもなかったじゃない。それに、今から私が担う役割を考えたら、むしろワクワクするわ!」
 窓の外をちらちらしながら、口元の緩みを隠せない様子だ。もし彼女がこうでなければ、今頃一組のフェスの準備は暗礁に乗り上げていただろう。
 そして、誰に宛てるともない発信者は、今日も現れた。
「来たったいね」
「え、ええ」
「さて、捕り物の始まりね」
 コツコツ、ツー……コツ、コツ。
 ふと、雷奈はこの音を復号したらどのようなメッセージになるのかと考えた。調べたところ、同じ音でも、日本語かアルファベットかで異なる復号がなされるらしい。つまり、これがいわゆる和文モールスか欧文モールスかによって、答えが変わってくる。
 だが、音が鳴り止むとともに、雷奈の関心は跡形もなく消えた。
 そんなことは、考えても仕方ないのだ。
 だって、これはモールス信号ではないから。
 朝季が窓の外を覗き見た。長い髪が壁に触れないように手でかきあげながら。
 そして、
「やっほー」
 手を振り、何者かに挨拶をした。
「よっし、かかったか!」
「行くったい!」
 バネのごとく、雷奈と氷架璃がトイレを飛び出す。同時に、まるで双子のように息ぴったりな声が、「待てーっ!」と鳴り響いた。
 トイレを出て右手にすぐのところに階段があるのだが、ちょうどそこを通せんぼするようにして、対照的な才媛コンビが、一人の男子生徒を足止めしていた。
 ――彼が、本件の犯人のようだ。
 丸刈りの男子生徒は、小学生のように幼くもなく、高校生ほど大人びてもいない。おそらく、二年生だろう。男子は学年による体つきの違いが激しいので分かりやすい。
 黒い部活動バッグと、同じく黒色の、人の片腕ほどの細長いケースを見て、朝季がふふんと笑った。
「なるほど、野球部ね。どうりでそんな芸当ができるわけだわ」
「な、何のことだよ!」
「それ、投げ入れてたの、あんたでしょ?」
 朝季に指をさされ、男子生徒は反射的に右手を背中の後ろに隠した。すると、背後にいた人物が、その手に握られていたものをぱっと奪い取った。
「こんな証拠品を持っていてしらばっくれる?」
 さっと青ざめて振り向いた男子生徒は、目の前にいるのが私服の見知らぬ少女であることに、紙くずを取り返すのも忘れて息を呑んだ。
 その間に、せつなはにっこり笑うと、取り上げた紙くずを広げて眺めた。ふむふむ、と意味ありげにうなずく彼女に、男子は唇をわななかせる。
「な、何だよ!?」
「『死』が三つ、『呪』が四つ、『殺』も四つ。予想通りだなって」
 しわだらけの紙をぺらぺらと揺らすせつなに、男子生徒はますます「はあ!?」と声を荒らげる。が、その表情に浮かぶ焦りはどんどん濃くなっていた。
 そんな彼に、せつなは問う。
「あなた、異次元モールスって怪談、知ってる?」
「し、知るかよ!」
「噂には疎いほう? そこの女子トイレで、壁側からモールス信号みたいな音が聞こえた後、こんな不吉まみれの紙くずが現れる怪談よ。今、流行ってるんですって。その正体があなただったってわけ」
「モールス信号なんて、オレは知らないっつの!」
「ええ。でもここ最近、こんな紙を男子トイレの窓から、隣の女子トイレの窓に投げ入れていたのはあなたでしょう?」
 ぐ、と男子生徒が息をつめた。これに関しては、証拠が挙がっているので返す言葉がない。
「説明してあげる。この怪談においてモールス信号と呼ばれている、殴り書きの紙くずが投げ込まれる前に必ず先行する音。その正体は、この字を書く筆記音が響いたものよ。おそらく、壁を机代わりにペンを走らせたんでしょう。女子トイレの鏡側は男子トイレに隣接しているから。壁は素材によっては音が振動として伝わりやすいしね。紙越しに壁を叩く形になるペンの音が、女子トイレに聞こえてきたってわけ」
「は……はあ?」
 異次元モールスの存在も知らなかった男子生徒は、ぽかんとするばかりだ。
「相当強く殴り書きしていたのね。あんなにはっきりと音が聞こえるくらいだもの。おかげでそれぞれの音の長さと回数、昨日や一昨日の前例から、今日の殴り書きの内容が推測できたくらいよ」
 毎回紙面を埋めていたのは「死」「呪」「殺」の三文字。これらは画数も違えば、一画あたりの長さもまちまちだ。モールス信号に聞こえていたものが筆記音だと気づいていたせつなは、音のリズムや長さから、今日の殴り書きの内容を当ててみせたのだ。
「それを女子トイレの窓に投げ込んだってわけかぁ」
 朝季が腕を組んで呆れ声を出す。
「野球部だもん、めがけたところに投げるのは得意だよね。しかも、あそこは大きな庇があったから、万が一窓に入らなくても庇の上に落ちる。そしたらそのバットで引き寄せて回収すればいいわけだし」
「てっきり下から投げ込まれたと思ったっちゃけど、まさか隣の窓からとはね」
 雷奈の言葉に、氷架璃と芽華実も頷く。
「さて、何でこんなことしたかな? 怖がってる子達もいるんだけど?」
 せつなの手にある紙を指差しながら問い詰める朝季に、男子生徒は唇を引き結んで俯いた。内心、「怖がってるのと面白がってるの五分五分では……?」と思わないでもない氷架璃と芽華実だったが、もしかすると由実や美由の他には、本当に怖がっている生徒もいるのかもしれない。そんなことを考えながらの二人の視線さえ、男子生徒は糾弾のまなざしに感じているのか、彼は黙りこくったまま微動だにしなかった。
 埒が明かなくなった、その時だ。
「竹田……?」
 階段のほうから現れた別の男子生徒の声に、彼は振り向いた。
「三島……」
「お前、こんな時間に何やって……って、え、誰!? どこの制服!? ってか私服!?」
 雷奈たちを、次いでせつなたちを見て、案の定の反応を見せたのは、丸刈り頭に黒い部活動バッグ、そして黒い細長いケースを背負った少年。竹田と呼ばれた異次元モールスの犯人よりも細い眉が気弱そうな印象だが、二人の共通点は一目瞭然だ。三島と呼ばれた彼も、野球部だ。
 混乱する三島に、朝季が進み出た。
「君も野球部?」
「え、あ、はい」
「顧問の先生は誰?」
 その一言に、竹田がびくっと肩を震わせた。目を見開き、唇をわななかせる。雷奈たちも、同級生から聞いたことがある。部活動の顧問というのは、部活動内外問わず、部員の生徒にはえらく厳しいのだそうだ。担任よりも顧問のほうが怖いのは、公私共通の意識らしい。朝季もそれをわかっているからこその、殺し文句なのだろう。
 三島は、朝季と竹田の間でしばらく視線を右往左往させた。そして、「あ、あの!」と切り出す。
「その、こいつ、サボってるわけじゃないんです。レギュラー外されて落ち込んでて、確かに練習には行ってないけど、家で素振りとかしてるのは知ってるし……!」
 必死の様子で弁解する三島の言は、今の状況では的外れだったが、要は、竹田が部活動をサボっているのを指摘されたのだと勘違いしたらしい。
 竹田が迷いがちに何か言おうとしたが、それより先に、彼の肩をつかんだ三島が朝季への弁解を続ける。
「今は部に顔を出しにくいだけで、真面目なやつなんです! 親に心配かけまいと、学校にもこうやって道具を持って行って、帰りに公園でバット振ってるのも、俺、知ってるんで! 本当、いいやつなんで、顧問には……!」
 まくしたてた三島は、竹田には声量を落として、「バッカお前、先生には家が大変で休んでることにしてるんだろ? こんな時間に学校にいたら不自然だろうが!」と肩をゆすった。
 おそらく、三島は知らないのだろう。ここしばらく、竹田がこの場所で何をしていたのか。彼のかばいたての言葉は、日々いたずらに勤しむ人間に向けるものではない。
 されるがままに揺さぶられていた竹田の目に、みるみる涙が浮かんだ。
「え? おい、竹田? 何泣いてんだ!?」
「……三島……ごめん、その……」
「な、泣くなって! あの、すんません、俺らはこれで失礼するんで! 顧問には内緒で! お願いします!」
 校舎内にはまだ人がいないわけではない。あまり長居しすぎて他の生徒にも竹田の姿を目撃されるとまずいと思ったのだろう、三島は彼の背中に手をまわして、そそくさとその場を去っていった。階段を下りていく最中、「なあ、よかったら今日は部活……」という優しい声がフェードアウトしていく。
 立ちすくんだままその光景を見送っていた雷奈たちの後ろで、せつなが肩をすくめて、手にしていたままの紙切れをくしゃっと丸めた。
 きっと最後の一通となった呪いの手紙は、フリースローで放り投げられ、そばにあったくずかごの肥やしとなった。

***

「……憂さ晴らし、だったのかな」
 校舎を後にして歩きながら、雷奈がぽつりと言った。
「そんな感じだよなー……」
「いたずらにしては悪質だけれど、きっと気持ちのやり場がなくなるほど追い詰められていたのね……」
 少し苦い後味の残る事件解決後の余韻を引きずり、グラウンドへ出る。
「それにしても、せつなって頭よかね。ノック音と漢字の画数を一致させるなんて」
「聞き逃さない耳のよさもさることながら、な。芽華実や雷奈と同じく、耳はいいほうか」
「頭の良さは謙遜させてもらうけれど、耳はいいほうよ。芽華実と雷奈もなのね」
「私、小学生の時にピアノを習っていたの。今でも時々弾くんだけど、そのおかげだと思うわ」
「そうなのね。雷奈もピアノを?」
「私は……」
 雷奈は考えた。自分もピアノをやっている、と嘘をつくのは憚られる。雷奈のピアノの腕といったら、猫を踏んじゃえるかどうかの瀬戸際だ。しかし、まさか父が人間離れした聴力をもつ猫だなどと言えば、地雷を踏んじゃうことになるので。
「お、親が耳よかったけん、遺伝かも? そ、それより、せつなは謙遜することないくらい頭よかよ! 進学校っちゃか?」
 と、嘘ではない返しを口にして、早々に話題を切り替えることにした。
「いや、皇じゃないとすると、他に一番近い私立は三駅先だろ? 着替えてくる余裕あるか?」
「わからんよ、私服の学校だったら」
「そっか、あるわよね、私服OKの私立校」
 氷架璃と芽華実が乗ってきてくれたのは、地雷回避のサポートだろう。そう思いながら、雷奈はだんだん、いつも私服でやってくるせつなの所属校がどこか、本気で気になってきた。
「ね、せつなは学校、どこっちゃか?」
「私は……」
 彼女がまさにその答えを口にしようとした時だ。
「雷奈ちゃーん!」
「次は第三の怪だよーっ!」
 後ろから二人に盛大に肩を組まれ、雷奈は前のめりにバランスを崩しかけた。後ろから、「こら、危ない!」と保護者・朝季の声が追ってくる。
 体勢も不自由な中、雷奈は右肩をホールドする由実を振り返る。
「第三の怪?」
「そう、真夜中フェアリーテイル!」
 声を弾ませて、いつもの通り美由とともにその概要を語る。
「光丘に古くから生息していた妖精達!」
「けれど、都市開発でいつか姿を消してしまった!」
「それが何者かに召喚され、現代によみがえった!」
「そしてひとけのない夜、光を発しながら仲間達と校庭を飛び回る!」
 ロマンたっぷりの解説が終わると、呆れを含んだ沈黙が通り過ぎた。
 雷奈が素朴な疑問をぶつける。
「……妖精って『生息』っていうと?」
 芽華実が尋ねる。
「……何者かって誰なの?」
 氷架璃が疑う。
「ってか、蛍じゃねーの?」
 せつなが笑う。
「フェアリーテイルって、御伽話って意味よ。語源的にも妖精のことじゃないわよ」
「せつなちゃんがそっちについちゃった!」
 いやー、と子供のような声を上げながら、雷奈を離れて、今度はせつなにくっつく二人。鬱陶しがるでもなく、せつなは両腕をつかまれたまま笑う。
「あなたたち、雷奈たちを夜間労働させる気?」
「そうよ、家の人だって心配するだろうし」
 朝季もせつなの肩をもつ。だが、好奇心旺盛な二人は譲らない。
「ボーナスつけるからー」
「アメあげるからー」
「チョコあげるからー」
「キャラメルあげるからー」
「これは断れなくなってきたったいね」
「あんたの夜間手当、安いなオイ」
 たやすくなびく雷奈の頭にチョップを入れて、氷架璃が妥当な反論を口にする。
「そもそも、夜の学校に忍び込んじゃまずいだろ。しかも他校生だし」
「入らなくっても大丈夫だよー」
 由実の明るい声に、美由もうなずく。
「目撃情報はグラウンドや体育館裏でもあるから。それなら外から見えるから、フェンスの外にいても正体を見破れるはずだよ!」
「おおう……」
 学校へ入れないことを口実に辞退しようとしていたが、そうは問屋が卸さないようで。
「妖精たちが夜の間に、せっかく準備した実験道具を隠しちゃったらどうするの!」
「そんな心配ないってわかるまでは、フェス準備もはかどらないよぅ!」
「あたしたち、ボイコットするんだから!」
「ストライキもするんだから!」
「うわー……それは困る」
 何やら言っていることが破綻してきたような感もあるが、どんな論理過程であれ、由実と美由が作業から離れてしまうと困るのは朝季だ。正直、二人の願望はそこまで重視する必要はなさそうに見えるのだが、このような形で朝季が被害を受けるのはいたたまれない。
「わかったったい、外からでよければ見てくるけん。ばってん、私たちは明日も学校あるし、今日は宿題あるけん、明日の晩でいい?」
「もっちろん!」
「やったーっ!」
「この子たちは全くもう……」
 額に手を当ててうなだれる朝季を励ますように、二人から解放されたせつなが肩をぽんぽんと叩いた。氷架璃と芽華実も苦笑しながら、割り切って、それぞれの家族に何と説明して出ていこうか話し合う。
 その間、連続ハイタッチを繰り広げる由実と美由に、雷奈がちゃっかりアメとチョコとキャラメルの希望メーカーを伝えていたことは、二人には内緒……にしようとしたがすぐバレた。
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