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10.三日月の真相編
50三日月を討つ日 ⑤
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***
霜月というのは元は十二月頃を指す語だったと聞くと、そこでようやく、なるほど霜も降りてこようと納得するが、今日に限っては、その名がしっくりくる冷気に包まれた十一月の上旬だった。
雲一つない晴天は、最大限の放射冷却で地上を冷やしてくるくせに、日差しの温かみは申し訳程度。風がないのがせめてもの救いだろう。寒い、というより、冷えている。そんな気候だ。
「……天気、いいな」
「……そうね」
どこまでも続いていく青空の果てを、彼女たちは、天界に切り取られたように静かな屋上から見つめていた。
昼休みの喧騒が、見えない壁の向こうの世界から、ぼんやりと聞こえてくる。
少し前まで、彼女たちもそこの住人だった、たわいもない「日常」から。
「……ニュースサイトに上がってたよ。種子島のあれ、異常気象だって」
「ええ、見たわ。突如発生した局所的な吹雪、って」
「……何もかも不明で終わったらしいけどな」
「……そうよね」
柵に預けた両腕にあごをのせて、ぽつぽつと言葉を交わしあう。青白くかすむマンションの頂点を見つめながら、あるいは稜線をなぞりながら。
修学旅行明けの学校は、どこか懐かしさを覚えるものだ。まして、一週間ぶりに見る屋上からの景色は、知らずに何かが変わってしまったかのようにさえ感じた。
「……リレーだけどさ」
「ええ」
「雷華が出るんだって」
「そっか。……足、速かったもんね」
一言一言の余韻さえもが残る。砂浜についた足跡のように、くっきりと。
途絶えた会話を埋めるのは、空気より重く周辺に留まる静寂だけだ。沈黙が時を止めたかのよう。
他に誰もいない屋上は、コンクリートの床から首元まで、ひんやりとした空気がどこへも行かずにたまっている。四日間欠席して級友たちを心配させた理由が、本当に風邪だったとしたら、こんなところへは来るべきではないだろう。けれど、そうでなくても、この場所はがらんどうの胸に冷気が痛い。
時は、本当に止まってしまったのではないだろうか。永遠の中で、声だけを交わしているのではないだろうか。そう思ってしまうほどずっと、二人を呼び戻す鐘は鳴らない。
数秒か数分かも判別できない虚無ののち、再び声が止まった空気を揺らした。
「……ねえ」
「ん」
「……昼休みって、こんなに長かったっけ」
ぽつねんと紡がれた問いに、ため息とも相槌ともつかぬ吐息が曖昧な返事だけをよこした。
皇学園中等部の時間割で過ごして三年プラスアルファ。初等部と異なるそれにも慣れ切って、時間の感覚はつかみきったはずなのに、昨日も、おとといも、ぽっかりと空虚な時間がある。
広げられた弁当が二つしかないからだろうか。あるいは、東京育ちの標準語しか聞こえないからだろうか。
とかく、いつも通りのはずの昼休みが、一人分だけ長くて、やはり一人分だけ肌寒かった。
***
見覚えのある天井、パステルカラーのカーテン、消毒液のにおい。
二人が各々の生還を認めたのは、記憶の最後を鮮烈に彩る死闘が嘘だったかのような静謐の中だった。
目覚めは、ほぼ同時刻。厳密には、先に意識を取り戻した氷架璃が深翔と話している声を聞いて、芽華実も目を開けたというところだ。
両者の希望により、隣同士の病床のカーテンの、隣接する部分を開けて作った相部屋にて、膝丈のワンピースタイプのナース服を着た深翔から、現在時刻は同日の夜七時を回った頃と告げられた二人は、血相を変えた。次の日が修学旅行の振り替え休日だったのは幸いだが、無断外泊をするわけにはいかない。大慌てでそれぞれの家に「今日は泊まり」と連絡を入れて、何とか事なきを得た。
死の淵から間一髪で這い上がってきた彼女らの最初の懸念が、あまりにもかわいらしくて、深翔はくすりと口元に手を当てて笑った。
「二人とも、回復したようで何よりです。低体温症が進んでいて、どうしようかと思いましたが……」
心からの安堵のため息。しかし、そこには少なからず疲労が見て取れた。治療で体力を使ったのもあるだろうが、心労も大きいだろう。フィライン・エデンにとって、氷架璃と芽華実は丁重に扱うべき客なのだ。最優先で治療した、という深翔の言葉に、二人とも、ありがたみと同時に心苦しさを禁じえなかった。
「氷架璃さんのほうは、足のケガも術でおおかたよくなっていると思います。もう数日すれば、跡もなく治るでしょう。どこか痛いところとか、気になるところはありますか?」
「……芽華実は首絞められてて、私は確か、頭殴られたと思うんだけど……」
「そうだったのですか。一通り術で検分したところ、異常はなかったので……でも、気になるようでしたら、人間界の高度な検査技術で診てもらうことをお勧めします」
「……いや、そんなことより」
反射的に問いに答えていた氷架璃が、もっと重要なことだといわんばかりにベッドから身を起こした。とたん、くらっと視界が揺れて、額を押さえる。思ったより出血がひどかったか、体力が戻り切っていないのだろう。
横になるように勧める深翔を振り切って、何とか正常な視界を保つ。
自分の体が無事であることくらい、説明されなくても自分でわかるのだ。それよりももっと知りたいことがあった。
「深翔、他のみんなは……!」
溺水させられたルシルも、喉を突かれた上に鉄球の一撃を食らったコウも、きっと重症だ。霞冴も、素手による打撃とはいえ、ぐったりとしていた姿が目に焼き付いて離れない。まして、鎌鼬でひどい裂傷を負ったアワとフーは、普段鍛えてもいないのだ。そして、最後に目に入った、髪を乱して倒れこんだ雷奈――。
「……ここと普通病院とに分かれて療養していますが、みなさん回復に向かっているようです。……ただ……」
不意に、深翔は表情に影を落として言葉を濁した。ピンクの髪留めからはらりと落ちた前髪を、緩慢な動きで耳にかける。耳元に手をやったままの姿勢で黙り込んでしまった深翔に、二人がその先を追求しようとしたところだった。
「お待たせ、春瀬さん」
花が咲くようなソプラノ。聞く者全ての心を和ませる柔らかい声に、氷架璃と芽華実は肩をこわばらせた。
手の甲でそっとカーテンをめくり、相部屋に入ってきた、琥珀色の最高司令官。その表情も、しぐさも、平時と同じおっとりとしたもので、非常事態直後とは思えない落ち着きようだ。その余裕が、余計に二人に緊張を強いる。
来卜からの連絡を受けてきたという美雷は、深翔が用意した丸椅子に腰を下ろし、病床で上体だけ起こした二人に向かい合った。
「氷架璃ちゃんも芽華実ちゃんも、無事で本当によかったわ」
「……」
美雷の柔和な笑顔にも、二人とも頬から緊張が抜けず、一言も発せなかった。時空洞穴を前に、美雷の命令を無視したのは、希兵隊だけではない。せめて二人がルシルたちを止めていれば、立て直しの余地もあったかもしれないのに、止めるどころか、少しのためらいもなく同じ道をたどった。美雷が絶妙に組み上げた作戦を、一瞬の衝動で打ち壊したのは、二人も同じなのだ。
身を案じてくれる彼女の言葉を、素直に受け入れられない。いつも穏やかな美雷も、今回ばかりはさすがに厳しい言葉をぶつけてくるだろう。
美雷の口元の笑みが薄れる。二人は身構えた。叱られる覚悟はできている。厳しくも正論なら、謹んで受け止める。
そんな二人を前に、彼女はそっと目を閉じると、
「――希兵隊がついていながら危険な目に合わせたこと、最高責任者として心からお詫びするわ。本当にごめんなさい」
そう言って、頭を下げた。
二人は一瞬、ハトが豆鉄砲を食らったように美雷を見つめた。次いで、互いに顔を見合わせる。そして再度美雷に視線を戻し、まだ面を見せない彼女に慌てふためいた。
「み、美雷っ。そんな、やめてちょうだい」
「あんたみたいなヤツが簡単に頭下げんな! 上げろ、この頭! この頭だよ!」
必死になだめる芽華実。氷架璃など、ベッドから這い出て物理的に頭を上げさせようとしていた。いくら人間たちが守られるべき存在だとしても、相手は空前絶後の強敵で、それに無謀に向かっていったのは当人たちなのだ。
「命令無視したのは私たちなんだから! それで相殺だ、相殺!」
「そうよ、私たちがかけた迷惑のほうが大きいのは重々承知だけれど……美雷が頭を下げるくらいなら、おあいこにしましょ」
とどのつまり、無事だったのだから、謝られる筋合いなどない。それに、それ以上に、カーテンの外、他の病床には、きっと希兵隊の三人がいるはずだ。自分たちよりひどいケガの治療を受けているだろう彼女らに聞かせたくなかった。瀕死になるまで戦ってくれた彼女らに、少しでも落ち度があるなど考えたくなかったし、逆に感謝してもしきれないほどだ。
全力の説得に、やがて美雷は頭を上げると、居住まいを正して――いつも整った居住まいだが――氷架璃と芽華実に一部始終を尋ねた。
本当は、先に美雷に現状を尋ねたかったところだが、命令無視の負い目があった二人は、一度顔を見合わせた後、思い出す限りのことを話した。
凍てつく絶望に閉じ込められた雷奈を救い、安堵に包まれたのもつかの間、ガオンの猛攻に為す術もなく仲間たちが倒れていき、自分たちも戦い、そして気を失うまでの全てを。記憶に深く刻み込まれた衝撃や恐怖が、話の核心と周辺の比重をあべこべにしてかき乱す。時系列も整っていないかもしれない。話の論理性も歪んでいるかもしれない。
それでも、美雷は最後まで、一文一句逃すまいと傾聴していた。
覚えている限りを話した二人に、美雷は「ありがとう、疲れているところ、長く話させてしまってごめんなさい」と小さく頭を下げると、「次はそちらの番だ」オーラに小さく笑いながら答えた。
二人の説明とは対照的に、落ち着き払った美雷の回想は、鉋がけしたように無駄のない、なめらかなものだった。
氷架璃たちが時空洞穴に飛び込んだ後、メルからその報告を受けた美雷は、すぐさま情報管理局と学院に連絡を取り、対策を練ろうとしたこと。並行して、霊那と撫恋を神社に向かわせ、雷華たちに状況を伝えさせたこと。雷夢と雷帆は、その知らせを聞いたあたりでタイムアップとなり、空港に向かうべく光丘を後にしたという。
そして、電話会談の最中、時空震が――時空洞穴が、あろうことか希兵隊本部の真ん前で発生したこと。本部前へ急行した美雷が見たものこそが、縮みゆく時空洞穴と、そこから放り出されたのであろう、意識のない少年少女たちだったこと。
「……私たちが、時空洞穴で戻ってきたっていうのか?」
「ええ、七番隊の子たちはまさにその瞬間に立ち会っていたそうよ」
考えてみれば、希兵隊員が人間界へ行き、飛行機に乗って種子島にわたり、意識のない全員を連れて再度飛行機に乗って……というシナリオよりも現実的だ。空間を捻じ曲げて帰還、などというファンタジーのほうが現実的だなど、滑稽な話だが、先の正攻法では困難がありすぎる……というより、まず無理だ。
だが、時空洞穴によって帰されたとなると、最大の謎が残る。
腑に落ちない二人の様子に気づきながらも、美雷は当初二人が最も知りたがっていたことを口にした。
「アワ君とフーちゃんは飛壇中央病院。出血は大量だったけれど、体温が下がっていたのが逆に幸運に働いたということだったわ」
低体温症になると、代謝が遅くなり、そのせいで酸素が足りなくても体の組織が保存されることがある――代謝の冷蔵庫と呼ばれる現象に助けられたそうだ。
「……よかった、二人とも……」
「アワのヤツなんて、差し違えやら無駄死にやら……縁起でもないこと言いやがって」
けっ、と笑い飛ばす氷架璃も、安心のあまり声が震えそうになっていた。
美雷は薄く笑うと、続きを口にした。
「霞冴ちゃん、ルシルちゃん、コウ君は、お察しの通り、同じこの医務室で治療を受けているわ。みんな、それぞれ容体は異なるけれど、低体温は共通ね。でも、凍傷は何とかなったみたいだし、ひとまず命に別状はないから、安心してちょうだい」
自分たちや正統後継者の二人に輪をかけて激烈な戦いを見せ、そのぶん体力を消耗していたであろう三人。それでも無事だと聞いて、氷架璃と芽華実はほっと胸をなでおろした。いくら戦闘要員だといっても、同い年の少年少女だ。万が一のことがあってもおかしくはなかった。
そうして話の続きを待つ二人を見つめ返して、美雷は――続きなどないかのように、口を閉ざした。
その意味が、二人には一瞬わからなかった。
「……美雷?」
「……」
「……なんで……」
そこで話を区切る理由がわからなかった。この話はまだ途中のはずだ。
だってまだ、あともう一人――。
「……ということは、二人にもわからないのね」
その言葉の衝撃は、ガオンの暴行と同等か、それ以上だった。頭蓋骨が割れるほどの勢いで脳天を殴られたかのよう。
美雷は視線を落としてゆるゆると首を振った。
「時空洞穴の前に倒れていたのはあなたたちと希兵隊の三人、正統後継者の二人。それだけよ。……雷奈ちゃんの姿はなかったわ」
互いに顔を見合わせることも忘れ、二人は茫然と目を見開いたまま固まった。
以前も、氷架璃と芽華実だけ希兵隊の医務室に取り残されたことがあった。過去に飛び、ジンズウという名のチエアリと激闘を繰り広げた後だ。早々と回復したからと、一人のこのこ帰宅してしまったマイペースな少女。今回だって――そう思いたいのに、現実を見る目が前例に甘んじる頭を否定する。
帰ってしまったのなら、それを美雷が把握していないわけがない。何より、七番隊の猫たちは、時空洞穴から一同が放り出される一部始終を見届けたのだ。そこにいなかったということは、つまり。
「……探せないのか?」
「さすがに種子島に希兵隊を派遣するのは難しいわ。霞冴ちゃんが決行した北海道遠征だって、その後、二機関の反感を買ったでしょう? 何より、今回は行き先にガオンがいるかもしれない。……雷奈ちゃんの発見は、人間たちに任せるしかなさそうよ」
至極まっとうな意見だ。ワープフープの通わない種子島へは、行くだけでも一苦労なのだから。
だが、そもそもの問題として、雷奈があの場所で行方不明になっていることを、ほかの人間たちは知らない。知らないどころか、きっと訴えても信じてはくれないだろう。何しろ、雷奈はほんの少し前まで東京にいたのだ。飛行機もフェリーもなしに、遠く離れた種子島へ短時間で行く術など、人間界にはない。
つまり、捜索願すら出せないのだ。
ガオンは雷奈を傷つけないとしても、ガオンが生み出すクロやダークは雷奈を襲う。そうして、ガオンは間接的に雷奈を殺そうとしていた。
戦いの末に倒されたならいうまでもなく、仮に奇跡的に雷奈に軍配が上がったとしても、あの天候は過酷すぎる。体力を消耗した状態で、暴風雪の中にさらされ続ければ――。
二人の目の前に、うす暗い中で吹きすさぶ吹雪が映った。その中に一人ぽつんと立つ雷奈は、寂しげに笑うと、彼女らに背を向けて歩き出す。
先も見えない向こう側へ、先があるかもわからないほうへ。
ゆっくりと歩を進め、やがて白煙の中に消えていった。
霜月というのは元は十二月頃を指す語だったと聞くと、そこでようやく、なるほど霜も降りてこようと納得するが、今日に限っては、その名がしっくりくる冷気に包まれた十一月の上旬だった。
雲一つない晴天は、最大限の放射冷却で地上を冷やしてくるくせに、日差しの温かみは申し訳程度。風がないのがせめてもの救いだろう。寒い、というより、冷えている。そんな気候だ。
「……天気、いいな」
「……そうね」
どこまでも続いていく青空の果てを、彼女たちは、天界に切り取られたように静かな屋上から見つめていた。
昼休みの喧騒が、見えない壁の向こうの世界から、ぼんやりと聞こえてくる。
少し前まで、彼女たちもそこの住人だった、たわいもない「日常」から。
「……ニュースサイトに上がってたよ。種子島のあれ、異常気象だって」
「ええ、見たわ。突如発生した局所的な吹雪、って」
「……何もかも不明で終わったらしいけどな」
「……そうよね」
柵に預けた両腕にあごをのせて、ぽつぽつと言葉を交わしあう。青白くかすむマンションの頂点を見つめながら、あるいは稜線をなぞりながら。
修学旅行明けの学校は、どこか懐かしさを覚えるものだ。まして、一週間ぶりに見る屋上からの景色は、知らずに何かが変わってしまったかのようにさえ感じた。
「……リレーだけどさ」
「ええ」
「雷華が出るんだって」
「そっか。……足、速かったもんね」
一言一言の余韻さえもが残る。砂浜についた足跡のように、くっきりと。
途絶えた会話を埋めるのは、空気より重く周辺に留まる静寂だけだ。沈黙が時を止めたかのよう。
他に誰もいない屋上は、コンクリートの床から首元まで、ひんやりとした空気がどこへも行かずにたまっている。四日間欠席して級友たちを心配させた理由が、本当に風邪だったとしたら、こんなところへは来るべきではないだろう。けれど、そうでなくても、この場所はがらんどうの胸に冷気が痛い。
時は、本当に止まってしまったのではないだろうか。永遠の中で、声だけを交わしているのではないだろうか。そう思ってしまうほどずっと、二人を呼び戻す鐘は鳴らない。
数秒か数分かも判別できない虚無ののち、再び声が止まった空気を揺らした。
「……ねえ」
「ん」
「……昼休みって、こんなに長かったっけ」
ぽつねんと紡がれた問いに、ため息とも相槌ともつかぬ吐息が曖昧な返事だけをよこした。
皇学園中等部の時間割で過ごして三年プラスアルファ。初等部と異なるそれにも慣れ切って、時間の感覚はつかみきったはずなのに、昨日も、おとといも、ぽっかりと空虚な時間がある。
広げられた弁当が二つしかないからだろうか。あるいは、東京育ちの標準語しか聞こえないからだろうか。
とかく、いつも通りのはずの昼休みが、一人分だけ長くて、やはり一人分だけ肌寒かった。
***
見覚えのある天井、パステルカラーのカーテン、消毒液のにおい。
二人が各々の生還を認めたのは、記憶の最後を鮮烈に彩る死闘が嘘だったかのような静謐の中だった。
目覚めは、ほぼ同時刻。厳密には、先に意識を取り戻した氷架璃が深翔と話している声を聞いて、芽華実も目を開けたというところだ。
両者の希望により、隣同士の病床のカーテンの、隣接する部分を開けて作った相部屋にて、膝丈のワンピースタイプのナース服を着た深翔から、現在時刻は同日の夜七時を回った頃と告げられた二人は、血相を変えた。次の日が修学旅行の振り替え休日だったのは幸いだが、無断外泊をするわけにはいかない。大慌てでそれぞれの家に「今日は泊まり」と連絡を入れて、何とか事なきを得た。
死の淵から間一髪で這い上がってきた彼女らの最初の懸念が、あまりにもかわいらしくて、深翔はくすりと口元に手を当てて笑った。
「二人とも、回復したようで何よりです。低体温症が進んでいて、どうしようかと思いましたが……」
心からの安堵のため息。しかし、そこには少なからず疲労が見て取れた。治療で体力を使ったのもあるだろうが、心労も大きいだろう。フィライン・エデンにとって、氷架璃と芽華実は丁重に扱うべき客なのだ。最優先で治療した、という深翔の言葉に、二人とも、ありがたみと同時に心苦しさを禁じえなかった。
「氷架璃さんのほうは、足のケガも術でおおかたよくなっていると思います。もう数日すれば、跡もなく治るでしょう。どこか痛いところとか、気になるところはありますか?」
「……芽華実は首絞められてて、私は確か、頭殴られたと思うんだけど……」
「そうだったのですか。一通り術で検分したところ、異常はなかったので……でも、気になるようでしたら、人間界の高度な検査技術で診てもらうことをお勧めします」
「……いや、そんなことより」
反射的に問いに答えていた氷架璃が、もっと重要なことだといわんばかりにベッドから身を起こした。とたん、くらっと視界が揺れて、額を押さえる。思ったより出血がひどかったか、体力が戻り切っていないのだろう。
横になるように勧める深翔を振り切って、何とか正常な視界を保つ。
自分の体が無事であることくらい、説明されなくても自分でわかるのだ。それよりももっと知りたいことがあった。
「深翔、他のみんなは……!」
溺水させられたルシルも、喉を突かれた上に鉄球の一撃を食らったコウも、きっと重症だ。霞冴も、素手による打撃とはいえ、ぐったりとしていた姿が目に焼き付いて離れない。まして、鎌鼬でひどい裂傷を負ったアワとフーは、普段鍛えてもいないのだ。そして、最後に目に入った、髪を乱して倒れこんだ雷奈――。
「……ここと普通病院とに分かれて療養していますが、みなさん回復に向かっているようです。……ただ……」
不意に、深翔は表情に影を落として言葉を濁した。ピンクの髪留めからはらりと落ちた前髪を、緩慢な動きで耳にかける。耳元に手をやったままの姿勢で黙り込んでしまった深翔に、二人がその先を追求しようとしたところだった。
「お待たせ、春瀬さん」
花が咲くようなソプラノ。聞く者全ての心を和ませる柔らかい声に、氷架璃と芽華実は肩をこわばらせた。
手の甲でそっとカーテンをめくり、相部屋に入ってきた、琥珀色の最高司令官。その表情も、しぐさも、平時と同じおっとりとしたもので、非常事態直後とは思えない落ち着きようだ。その余裕が、余計に二人に緊張を強いる。
来卜からの連絡を受けてきたという美雷は、深翔が用意した丸椅子に腰を下ろし、病床で上体だけ起こした二人に向かい合った。
「氷架璃ちゃんも芽華実ちゃんも、無事で本当によかったわ」
「……」
美雷の柔和な笑顔にも、二人とも頬から緊張が抜けず、一言も発せなかった。時空洞穴を前に、美雷の命令を無視したのは、希兵隊だけではない。せめて二人がルシルたちを止めていれば、立て直しの余地もあったかもしれないのに、止めるどころか、少しのためらいもなく同じ道をたどった。美雷が絶妙に組み上げた作戦を、一瞬の衝動で打ち壊したのは、二人も同じなのだ。
身を案じてくれる彼女の言葉を、素直に受け入れられない。いつも穏やかな美雷も、今回ばかりはさすがに厳しい言葉をぶつけてくるだろう。
美雷の口元の笑みが薄れる。二人は身構えた。叱られる覚悟はできている。厳しくも正論なら、謹んで受け止める。
そんな二人を前に、彼女はそっと目を閉じると、
「――希兵隊がついていながら危険な目に合わせたこと、最高責任者として心からお詫びするわ。本当にごめんなさい」
そう言って、頭を下げた。
二人は一瞬、ハトが豆鉄砲を食らったように美雷を見つめた。次いで、互いに顔を見合わせる。そして再度美雷に視線を戻し、まだ面を見せない彼女に慌てふためいた。
「み、美雷っ。そんな、やめてちょうだい」
「あんたみたいなヤツが簡単に頭下げんな! 上げろ、この頭! この頭だよ!」
必死になだめる芽華実。氷架璃など、ベッドから這い出て物理的に頭を上げさせようとしていた。いくら人間たちが守られるべき存在だとしても、相手は空前絶後の強敵で、それに無謀に向かっていったのは当人たちなのだ。
「命令無視したのは私たちなんだから! それで相殺だ、相殺!」
「そうよ、私たちがかけた迷惑のほうが大きいのは重々承知だけれど……美雷が頭を下げるくらいなら、おあいこにしましょ」
とどのつまり、無事だったのだから、謝られる筋合いなどない。それに、それ以上に、カーテンの外、他の病床には、きっと希兵隊の三人がいるはずだ。自分たちよりひどいケガの治療を受けているだろう彼女らに聞かせたくなかった。瀕死になるまで戦ってくれた彼女らに、少しでも落ち度があるなど考えたくなかったし、逆に感謝してもしきれないほどだ。
全力の説得に、やがて美雷は頭を上げると、居住まいを正して――いつも整った居住まいだが――氷架璃と芽華実に一部始終を尋ねた。
本当は、先に美雷に現状を尋ねたかったところだが、命令無視の負い目があった二人は、一度顔を見合わせた後、思い出す限りのことを話した。
凍てつく絶望に閉じ込められた雷奈を救い、安堵に包まれたのもつかの間、ガオンの猛攻に為す術もなく仲間たちが倒れていき、自分たちも戦い、そして気を失うまでの全てを。記憶に深く刻み込まれた衝撃や恐怖が、話の核心と周辺の比重をあべこべにしてかき乱す。時系列も整っていないかもしれない。話の論理性も歪んでいるかもしれない。
それでも、美雷は最後まで、一文一句逃すまいと傾聴していた。
覚えている限りを話した二人に、美雷は「ありがとう、疲れているところ、長く話させてしまってごめんなさい」と小さく頭を下げると、「次はそちらの番だ」オーラに小さく笑いながら答えた。
二人の説明とは対照的に、落ち着き払った美雷の回想は、鉋がけしたように無駄のない、なめらかなものだった。
氷架璃たちが時空洞穴に飛び込んだ後、メルからその報告を受けた美雷は、すぐさま情報管理局と学院に連絡を取り、対策を練ろうとしたこと。並行して、霊那と撫恋を神社に向かわせ、雷華たちに状況を伝えさせたこと。雷夢と雷帆は、その知らせを聞いたあたりでタイムアップとなり、空港に向かうべく光丘を後にしたという。
そして、電話会談の最中、時空震が――時空洞穴が、あろうことか希兵隊本部の真ん前で発生したこと。本部前へ急行した美雷が見たものこそが、縮みゆく時空洞穴と、そこから放り出されたのであろう、意識のない少年少女たちだったこと。
「……私たちが、時空洞穴で戻ってきたっていうのか?」
「ええ、七番隊の子たちはまさにその瞬間に立ち会っていたそうよ」
考えてみれば、希兵隊員が人間界へ行き、飛行機に乗って種子島にわたり、意識のない全員を連れて再度飛行機に乗って……というシナリオよりも現実的だ。空間を捻じ曲げて帰還、などというファンタジーのほうが現実的だなど、滑稽な話だが、先の正攻法では困難がありすぎる……というより、まず無理だ。
だが、時空洞穴によって帰されたとなると、最大の謎が残る。
腑に落ちない二人の様子に気づきながらも、美雷は当初二人が最も知りたがっていたことを口にした。
「アワ君とフーちゃんは飛壇中央病院。出血は大量だったけれど、体温が下がっていたのが逆に幸運に働いたということだったわ」
低体温症になると、代謝が遅くなり、そのせいで酸素が足りなくても体の組織が保存されることがある――代謝の冷蔵庫と呼ばれる現象に助けられたそうだ。
「……よかった、二人とも……」
「アワのヤツなんて、差し違えやら無駄死にやら……縁起でもないこと言いやがって」
けっ、と笑い飛ばす氷架璃も、安心のあまり声が震えそうになっていた。
美雷は薄く笑うと、続きを口にした。
「霞冴ちゃん、ルシルちゃん、コウ君は、お察しの通り、同じこの医務室で治療を受けているわ。みんな、それぞれ容体は異なるけれど、低体温は共通ね。でも、凍傷は何とかなったみたいだし、ひとまず命に別状はないから、安心してちょうだい」
自分たちや正統後継者の二人に輪をかけて激烈な戦いを見せ、そのぶん体力を消耗していたであろう三人。それでも無事だと聞いて、氷架璃と芽華実はほっと胸をなでおろした。いくら戦闘要員だといっても、同い年の少年少女だ。万が一のことがあってもおかしくはなかった。
そうして話の続きを待つ二人を見つめ返して、美雷は――続きなどないかのように、口を閉ざした。
その意味が、二人には一瞬わからなかった。
「……美雷?」
「……」
「……なんで……」
そこで話を区切る理由がわからなかった。この話はまだ途中のはずだ。
だってまだ、あともう一人――。
「……ということは、二人にもわからないのね」
その言葉の衝撃は、ガオンの暴行と同等か、それ以上だった。頭蓋骨が割れるほどの勢いで脳天を殴られたかのよう。
美雷は視線を落としてゆるゆると首を振った。
「時空洞穴の前に倒れていたのはあなたたちと希兵隊の三人、正統後継者の二人。それだけよ。……雷奈ちゃんの姿はなかったわ」
互いに顔を見合わせることも忘れ、二人は茫然と目を見開いたまま固まった。
以前も、氷架璃と芽華実だけ希兵隊の医務室に取り残されたことがあった。過去に飛び、ジンズウという名のチエアリと激闘を繰り広げた後だ。早々と回復したからと、一人のこのこ帰宅してしまったマイペースな少女。今回だって――そう思いたいのに、現実を見る目が前例に甘んじる頭を否定する。
帰ってしまったのなら、それを美雷が把握していないわけがない。何より、七番隊の猫たちは、時空洞穴から一同が放り出される一部始終を見届けたのだ。そこにいなかったということは、つまり。
「……探せないのか?」
「さすがに種子島に希兵隊を派遣するのは難しいわ。霞冴ちゃんが決行した北海道遠征だって、その後、二機関の反感を買ったでしょう? 何より、今回は行き先にガオンがいるかもしれない。……雷奈ちゃんの発見は、人間たちに任せるしかなさそうよ」
至極まっとうな意見だ。ワープフープの通わない種子島へは、行くだけでも一苦労なのだから。
だが、そもそもの問題として、雷奈があの場所で行方不明になっていることを、ほかの人間たちは知らない。知らないどころか、きっと訴えても信じてはくれないだろう。何しろ、雷奈はほんの少し前まで東京にいたのだ。飛行機もフェリーもなしに、遠く離れた種子島へ短時間で行く術など、人間界にはない。
つまり、捜索願すら出せないのだ。
ガオンは雷奈を傷つけないとしても、ガオンが生み出すクロやダークは雷奈を襲う。そうして、ガオンは間接的に雷奈を殺そうとしていた。
戦いの末に倒されたならいうまでもなく、仮に奇跡的に雷奈に軍配が上がったとしても、あの天候は過酷すぎる。体力を消耗した状態で、暴風雪の中にさらされ続ければ――。
二人の目の前に、うす暗い中で吹きすさぶ吹雪が映った。その中に一人ぽつんと立つ雷奈は、寂しげに笑うと、彼女らに背を向けて歩き出す。
先も見えない向こう側へ、先があるかもわからないほうへ。
ゆっくりと歩を進め、やがて白煙の中に消えていった。
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※小説家になろうさんで投稿始めました
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