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10.三日月の真相編
47三日月雷志 ⑤
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「――『今日、ウィンディに打ち明けた。九州に行くから、高校卒業と同時にパートナー契約を解約したいってこと。彼女はとても驚いていたけど、うなずいてくれた。理由を聞かれたので、結婚するからと正直に言った。東京から離れたいのは彼の希望で、それはきっと、壊してしまった元の居場所を思い出したくないからだってことは、さすがに言えなかったけど。本当は二十歳になるまで一緒にいるはずだったウィンディは、この後どうなっちゃうんだろう。大丈夫かな。風中家に迷惑かけちゃったかな……』」
読み終えた雷奈は、一同を見回した。
「家庭崩壊か何か知らんばってん、最初からサイコパスな親父に振り回されて九州に行くことになったのも問題っちゃけど……それより」
「ええ、問題は解約宣言の後、どうなったかよね。フー、契約を途中で打ち切られちゃうと、どうなるの? やっぱり、最初に契約を断られた場合みたいに、一家の恥として扱われてしまうの?」
まさに三人がフィライン・エデンと出会った当初に明かされた、二家におけるパートナー契約の重要性。もし、あの時、氷架璃が最後までアワを拒み続けていれば、彼は後ろ指をさされ続けることになると、そう聞かされたのだ。
雷志が契約の打ち切りを切り出したのも、いわば契約の継続の拒否。パートナーとして過ごすことを拒否されるという点で同様だ。
しかし、フーは首を振った。
「いいえ。家庭の事情とか、いろいろあるだろうからってことで、ある程度の時間を共に過ごしていれば、任期を縮めて契約の満了とするのは構わないの」
「フーの言う通りよ。私も少しドキドキしたけれど、何もなかったわ」
当の本人もそう言い添えたので、芽華実はほっと胸をなでおろした。
しかし、本当に何もなかったというのならば、わざわざ付箋が貼られているはずもない。
風中家との早期の別れ。これは、きっと何かの手掛かりなのだ。
そう考えながら、雷奈は次の付箋のページをめくった。指は、先ほどの出来事から約二か月後、翌年二月の某日に触れた。
「――『今日は卒業式だった。耀との学校生活、本当に楽しかったな。彼女がルームメイトでよかった。私が結婚すること、最後まで心配して、せめて男の名前くらい教えろって言ってたから、「三日月雅音」って伝えた。そういえば、耀もバブルとの契約を打ち切っちゃうから、四月からワープフープは閉じちゃうみたい。フィライン・エデンの他のみんなも、人間界に来られなくなっちゃうってことだ。ごめんね、みんな』」
読み上げ終えると、雷奈は耀に問うた。
「あの、なして耀さんも契約ば終わらせちゃったとですか……?」
『簡単な話だよ。雷志のいないフィライン・エデン生活が寂しかったんだ。バブルやウィンディと過ごしていても、もちろん楽しいが、それでもやっぱり、そばにあの子がいないことを想像すると、ね。こんな未熟さでバブルを振り回して申し訳なかったよ』
「いいさ、そんなの。私も同じ気持ちだったしね。……さて、風中家に続いて流清家もパートナーと別れることになった。選ばれし人間がいない以上、ワープフープは閉じる。これが何か重要なことなのかな?」
バブルに促された雷夢に、雷奈たちも注目する。彼女は視線の意味を受け取りながらも、一言だけ返した。
「……雷奈。次のとこ、読んでみるったい」
雷奈は、瞬き一つ分の時間だけ、その指示への反応を遅らせた。うなずき、ノートに向き直るも、戸惑う。さっきの雷夢は、まるで、何か重要な発言を避けたかのような態度だ。
気にはかかったが、雷奈は素直に最後の付箋のページを開いた。年度末に書かれたものだった。
「――『バブル、ウィンディ。今まで本当にありがとう。今、すごく寂しい気持ち。これから、もっと寂しくて悲しい気持ちになるかもしれない。でも、これが私の選んだ道。大切な人がいたにも関わらず、「もう二度と会えないから」って私を選んだ雅音さんも、寂しそうで、悲しそうだったから。できれば、明日からは明るい未来のことを考えよう。新しい場所での、新しい生活。そして、いつか再びワープフープが開いて、バブルとウィンディが迎えに来てくれた時、耀と一緒に次世代の二組と出会う日のことを』」
一つ目と二つ目の付箋のページで、まるで曇り空のように不安定な記述が続いていた日記。三つ目で、ついに降り出したかのごとく、明確な負の感情が五月雨のようにつづられていた。
悲しい。寂しい。
けれど、そんな雨煙のなかでも、輝く雨上がりに手を伸ばす、雷志の生き様。
おそらく、これがフィライン・エデンの猫と会った最後の日なのだろう。これを最後に、ワープフープは閉ざされたのだ。
それとは別に、雷奈は一つの記述に気をひかれていた。それまでの、残虐で暴力的な素性を持つ男という雅音のイメージが、ひとかけら崩れ、人として当然持ちうる弱い部分を当然のように持ち合わせている可能性が垣間見えたのだ。
「もう二度と会えない」――死別したのか。雷志は初恋だった一方で、ガオンは一度愛しい人を持つ経験をしたことがあったのか。その心の傷を癒してくれた雷志に惹かれたのだろうか。
つい、そんな感慨に包まれそうになるが、雷奈は首を振ってそれを振り払った。過去がどうであろうと、彼は雷志を殺したのだ。
これで二冊目である水色のノートも終わり。ここまででわかったのは、正統後継者と選ばれし人間が早期に離別したことと、それにより、ワープフープが閉じたことだ。
しかし、ワープフープが閉じた後のフィライン・エデンを、最後の薄緑の日記はどれだけ知っているのだろうか。書かれているとすれば、おそらくワープフープが閉じた後の人間界のこと。
「姉貴、最後のノートを。きっとそこに、私がフィライン・エデンに関わった理由が……ワープフープが閉じた後の母さんの何かが書かれとるっちゃろ」
「うん。ここに書かれとるのは、あんたがフィライン・エデンに関わることになった理由として実に有力な事実ったい」
静かにうなずくと、今度は雷夢が自らノートを手に取り、雷奈に歩み寄った。
「ただし」
手渡したノートの表紙を見て、雷奈の目が見開かれるのと、雷夢が一つだけ訂正するのとは同時だった。
「このノートは、フィライン・エデンと別れた後の日付ではなか。それより一年近く前――母さんが高校三年生になったばかりの頃のものったい」
予想を大きく裏切る雷夢の言葉と、表紙につづられた、さっきよりもさらに過去の日付。
驚きと疑念がないまぜになった雷奈の視線を見つめ返し、雷夢は口を開いた。
「雷奈。ここに何が書かれとっても、雷奈は雷奈ったい。私も、雷帆も、雷華も……私たちは、私たちったい」
きっぱりとした、強い口調。まるで命綱を結ぶかのような声色。
おそらく、平凡な女の子として生きるはずだった雷奈が異世界に巻き込まれることになった、決定的な何かが書かれているのだ。
雷奈は一度、静かに目を閉じた。
それは、高校三年生になっても、健在に選ばれし人間という肩書を背負った、雷志の立場に随伴した出来事なのか。あるいは、彼女が意図してこの運命を仕向けたのか。それを知った時、世界を、人生を見る目が変わってしまう覚悟はあるか、自分に問う。
答えはすぐに出た。
何だってよかった。アワとフーに出会い、フィライン・エデンの皆に出会い、痛い思いもつらい経験もしたが、それでも楽しんでいる自分がいたのだ。起こるべくして起こった事象だったとしても、母の意図だったとしても、それで人生を捻じ曲げられたなどと母を恨んだりはしない。
雷奈はまぶたを開くと、最後の一冊に付された、たった一つの付箋に指を伸ばした。
――その日は、雷志にとって特別な日だったのだろう。一行目を読んだ瞬間から、そう思えた。
これまで読んできた日記のどれとも、おそらくまだ見ていないほかのページとも違うであろう特別な空気が、代り映えしない整った字を乗せた、ただの再生紙から漂っていた。
運命の日が、その時、その場所に読み手を連れ去るように、明らかになる。
「――『前のクラスの友達とカラオケに行った帰り、もうあたりは暗くなっていた。歩道橋を渡っていて、ちょうど高架下をくぐる一番暗いところを通ろうとした時だった。暗闇に溶け込むみたいに、その人はいた。たぶん、二十代くらいだと思う。髪は黒くて、肌は白くて、背の高い男の人。歩道橋の上から、下の道路をびゅんびゅん走る車をぼんやり眺めてた。その姿を見たとき、私の中に、ある予感が芽生えた。思わず歩み寄ろうとした、ちょうどその時、彼は柵を握って、前のめりになった。激しい車の流れの中に身を投げるようにして。私は慌てて駆け足になった。必死で手を伸ばして、危ないところで服をつかんで引っぱって、何とか間に合った。彼は驚いたように私を見た。私も、見ず知らずの男の人の服をいきなり掴んじゃったわけだから、ちょっとだけ焦った。でも』」
そこで、雷奈の朗読は途切れた。
いぶかしく思った氷架璃たちが顔を覗き込む前で、最終行を視界に捉えた雷奈は、まばたき一つできなかった。
「……姉、貴」
覚悟は砕かれ、姉が結んだ命綱もあっけなくちぎれた。
姉を振り返り、声を震わせる。
「これ……どういう、ことね」
雷夢は、雷奈にノートを手渡した時と同じ、立ったままの姿勢で、唇を引き結んでいた。
隣に座る雷華が、眉をひそめて、雷奈の前に置いてある、テーブルの上の日記を引き寄せた。代わって読み上げたその日記は、こう続いていた。
――でも、彼の目を見て、予感は確信に変わった。
――だから、私は言った。
――他に通る人もいない、二人きりの歩道橋の上で、こう言った。
――ああ、やっぱり、あなた、
――フィライン・エデンの猫なのね。
読み終えた雷奈は、一同を見回した。
「家庭崩壊か何か知らんばってん、最初からサイコパスな親父に振り回されて九州に行くことになったのも問題っちゃけど……それより」
「ええ、問題は解約宣言の後、どうなったかよね。フー、契約を途中で打ち切られちゃうと、どうなるの? やっぱり、最初に契約を断られた場合みたいに、一家の恥として扱われてしまうの?」
まさに三人がフィライン・エデンと出会った当初に明かされた、二家におけるパートナー契約の重要性。もし、あの時、氷架璃が最後までアワを拒み続けていれば、彼は後ろ指をさされ続けることになると、そう聞かされたのだ。
雷志が契約の打ち切りを切り出したのも、いわば契約の継続の拒否。パートナーとして過ごすことを拒否されるという点で同様だ。
しかし、フーは首を振った。
「いいえ。家庭の事情とか、いろいろあるだろうからってことで、ある程度の時間を共に過ごしていれば、任期を縮めて契約の満了とするのは構わないの」
「フーの言う通りよ。私も少しドキドキしたけれど、何もなかったわ」
当の本人もそう言い添えたので、芽華実はほっと胸をなでおろした。
しかし、本当に何もなかったというのならば、わざわざ付箋が貼られているはずもない。
風中家との早期の別れ。これは、きっと何かの手掛かりなのだ。
そう考えながら、雷奈は次の付箋のページをめくった。指は、先ほどの出来事から約二か月後、翌年二月の某日に触れた。
「――『今日は卒業式だった。耀との学校生活、本当に楽しかったな。彼女がルームメイトでよかった。私が結婚すること、最後まで心配して、せめて男の名前くらい教えろって言ってたから、「三日月雅音」って伝えた。そういえば、耀もバブルとの契約を打ち切っちゃうから、四月からワープフープは閉じちゃうみたい。フィライン・エデンの他のみんなも、人間界に来られなくなっちゃうってことだ。ごめんね、みんな』」
読み上げ終えると、雷奈は耀に問うた。
「あの、なして耀さんも契約ば終わらせちゃったとですか……?」
『簡単な話だよ。雷志のいないフィライン・エデン生活が寂しかったんだ。バブルやウィンディと過ごしていても、もちろん楽しいが、それでもやっぱり、そばにあの子がいないことを想像すると、ね。こんな未熟さでバブルを振り回して申し訳なかったよ』
「いいさ、そんなの。私も同じ気持ちだったしね。……さて、風中家に続いて流清家もパートナーと別れることになった。選ばれし人間がいない以上、ワープフープは閉じる。これが何か重要なことなのかな?」
バブルに促された雷夢に、雷奈たちも注目する。彼女は視線の意味を受け取りながらも、一言だけ返した。
「……雷奈。次のとこ、読んでみるったい」
雷奈は、瞬き一つ分の時間だけ、その指示への反応を遅らせた。うなずき、ノートに向き直るも、戸惑う。さっきの雷夢は、まるで、何か重要な発言を避けたかのような態度だ。
気にはかかったが、雷奈は素直に最後の付箋のページを開いた。年度末に書かれたものだった。
「――『バブル、ウィンディ。今まで本当にありがとう。今、すごく寂しい気持ち。これから、もっと寂しくて悲しい気持ちになるかもしれない。でも、これが私の選んだ道。大切な人がいたにも関わらず、「もう二度と会えないから」って私を選んだ雅音さんも、寂しそうで、悲しそうだったから。できれば、明日からは明るい未来のことを考えよう。新しい場所での、新しい生活。そして、いつか再びワープフープが開いて、バブルとウィンディが迎えに来てくれた時、耀と一緒に次世代の二組と出会う日のことを』」
一つ目と二つ目の付箋のページで、まるで曇り空のように不安定な記述が続いていた日記。三つ目で、ついに降り出したかのごとく、明確な負の感情が五月雨のようにつづられていた。
悲しい。寂しい。
けれど、そんな雨煙のなかでも、輝く雨上がりに手を伸ばす、雷志の生き様。
おそらく、これがフィライン・エデンの猫と会った最後の日なのだろう。これを最後に、ワープフープは閉ざされたのだ。
それとは別に、雷奈は一つの記述に気をひかれていた。それまでの、残虐で暴力的な素性を持つ男という雅音のイメージが、ひとかけら崩れ、人として当然持ちうる弱い部分を当然のように持ち合わせている可能性が垣間見えたのだ。
「もう二度と会えない」――死別したのか。雷志は初恋だった一方で、ガオンは一度愛しい人を持つ経験をしたことがあったのか。その心の傷を癒してくれた雷志に惹かれたのだろうか。
つい、そんな感慨に包まれそうになるが、雷奈は首を振ってそれを振り払った。過去がどうであろうと、彼は雷志を殺したのだ。
これで二冊目である水色のノートも終わり。ここまででわかったのは、正統後継者と選ばれし人間が早期に離別したことと、それにより、ワープフープが閉じたことだ。
しかし、ワープフープが閉じた後のフィライン・エデンを、最後の薄緑の日記はどれだけ知っているのだろうか。書かれているとすれば、おそらくワープフープが閉じた後の人間界のこと。
「姉貴、最後のノートを。きっとそこに、私がフィライン・エデンに関わった理由が……ワープフープが閉じた後の母さんの何かが書かれとるっちゃろ」
「うん。ここに書かれとるのは、あんたがフィライン・エデンに関わることになった理由として実に有力な事実ったい」
静かにうなずくと、今度は雷夢が自らノートを手に取り、雷奈に歩み寄った。
「ただし」
手渡したノートの表紙を見て、雷奈の目が見開かれるのと、雷夢が一つだけ訂正するのとは同時だった。
「このノートは、フィライン・エデンと別れた後の日付ではなか。それより一年近く前――母さんが高校三年生になったばかりの頃のものったい」
予想を大きく裏切る雷夢の言葉と、表紙につづられた、さっきよりもさらに過去の日付。
驚きと疑念がないまぜになった雷奈の視線を見つめ返し、雷夢は口を開いた。
「雷奈。ここに何が書かれとっても、雷奈は雷奈ったい。私も、雷帆も、雷華も……私たちは、私たちったい」
きっぱりとした、強い口調。まるで命綱を結ぶかのような声色。
おそらく、平凡な女の子として生きるはずだった雷奈が異世界に巻き込まれることになった、決定的な何かが書かれているのだ。
雷奈は一度、静かに目を閉じた。
それは、高校三年生になっても、健在に選ばれし人間という肩書を背負った、雷志の立場に随伴した出来事なのか。あるいは、彼女が意図してこの運命を仕向けたのか。それを知った時、世界を、人生を見る目が変わってしまう覚悟はあるか、自分に問う。
答えはすぐに出た。
何だってよかった。アワとフーに出会い、フィライン・エデンの皆に出会い、痛い思いもつらい経験もしたが、それでも楽しんでいる自分がいたのだ。起こるべくして起こった事象だったとしても、母の意図だったとしても、それで人生を捻じ曲げられたなどと母を恨んだりはしない。
雷奈はまぶたを開くと、最後の一冊に付された、たった一つの付箋に指を伸ばした。
――その日は、雷志にとって特別な日だったのだろう。一行目を読んだ瞬間から、そう思えた。
これまで読んできた日記のどれとも、おそらくまだ見ていないほかのページとも違うであろう特別な空気が、代り映えしない整った字を乗せた、ただの再生紙から漂っていた。
運命の日が、その時、その場所に読み手を連れ去るように、明らかになる。
「――『前のクラスの友達とカラオケに行った帰り、もうあたりは暗くなっていた。歩道橋を渡っていて、ちょうど高架下をくぐる一番暗いところを通ろうとした時だった。暗闇に溶け込むみたいに、その人はいた。たぶん、二十代くらいだと思う。髪は黒くて、肌は白くて、背の高い男の人。歩道橋の上から、下の道路をびゅんびゅん走る車をぼんやり眺めてた。その姿を見たとき、私の中に、ある予感が芽生えた。思わず歩み寄ろうとした、ちょうどその時、彼は柵を握って、前のめりになった。激しい車の流れの中に身を投げるようにして。私は慌てて駆け足になった。必死で手を伸ばして、危ないところで服をつかんで引っぱって、何とか間に合った。彼は驚いたように私を見た。私も、見ず知らずの男の人の服をいきなり掴んじゃったわけだから、ちょっとだけ焦った。でも』」
そこで、雷奈の朗読は途切れた。
いぶかしく思った氷架璃たちが顔を覗き込む前で、最終行を視界に捉えた雷奈は、まばたき一つできなかった。
「……姉、貴」
覚悟は砕かれ、姉が結んだ命綱もあっけなくちぎれた。
姉を振り返り、声を震わせる。
「これ……どういう、ことね」
雷夢は、雷奈にノートを手渡した時と同じ、立ったままの姿勢で、唇を引き結んでいた。
隣に座る雷華が、眉をひそめて、雷奈の前に置いてある、テーブルの上の日記を引き寄せた。代わって読み上げたその日記は、こう続いていた。
――でも、彼の目を見て、予感は確信に変わった。
――だから、私は言った。
――他に通る人もいない、二人きりの歩道橋の上で、こう言った。
――ああ、やっぱり、あなた、
――フィライン・エデンの猫なのね。
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